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[番外編]EJ「東京ゾンビ」ティーチイン

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11月24日、渋谷東芝エンタテイメント試写室にて、「東京ゾンビ」のEJ(進化する日本映画)試写会、ティーチインが催された。

ご出席(敬称略)
佐藤佐吉監督
花くまゆうさく(原作)
相田冬二(司会:映画ライター)

<上映後のティーチインより>

相田: 聞くところによりますと、佐藤監督は「東京ゾンビ」を映画化するに当たって、直接花くまさんにコンタクトをとっておられて、進めていたっていうふうなことなんですか?

佐藤: いや、そもそも花くまさんとの出会いが、高円寺の接骨院だったんで、特にねコンタクト取ったというか、そっから何となく

相田: 顔見知り?

佐吉: 顔見知りなんです。

花くま: 丁度映画の話が来るちょっと前くらいに知り合うようになって、実は今プロデューサーが来て、映画にしたいって言ってるんですって佐藤さんに振ったんです。

佐藤: そのときは、それだったら、僕は花くまさんのすごいファンだったんで、脚本家としては推薦しといてくださいって言ってね、そこから始まってるんです。 その接骨院が全国的に有名とかでは全くなくて、本当に

花くま: 偶然ですよね。

佐藤: 偶然、高円寺の片隅の接骨院。

相田: なぜそこで出会ってしまったんですかね?

花くま: けっこうね、何かいるんですよね。泉谷しげるの娘さんとかね。

相田: シブイ。 じゃあ、それでやり取りするように?

佐藤: やり取りというか

花くま: あまり接骨院ではそういう出来るような雰囲気ではないんです。

佐藤: たまたまこうやって待合室で会ったら、あぁ!どうもっていうだけの、それだけの関係だったんです。

花くま: あんまりそういうことしゃべってて、先生に何か言われるのが嫌だから、そういう話はあまりしなかったですけど。

相田: 先生に怒られる?

花くま: 普通の患者どうしの会話しかあまりしなかった。

佐藤: その病院ではその先生が主役なんで、その先生が色んなこと自分がするというか

花くま: 知らないんだけれど、知ったかぶって言うから

佐藤: エンターティナー

相田: (笑)状況自体が漫画みたいな感じですよ。 でも、そういう映画化のお話が進行してたってのを聞いて、逆に運命みたいなのを感じませんでした?佐藤さん。

佐藤: 運命というか、最初は花くまさんのすごいファンでしたけど、ただやっぱり「東京ゾンビ」だけは手を付けちゃいけないものだとは思ってたんで。 だから映画化しようという発想もなかったし、そんな中でそれが映画化されようとしていると聞いたときに、他の方がやられてしまうのは嫌だなぁっていうのがあったんで、お願いします!と言ったところが、本当にそのプロデューサーが、前向きにやります!って話になって来て、そのときに、じゃあ脚本まず書かなきゃいけない、そのときはまだ監督しようとまだ思ってなくて。 でもこれは本当に脚本化出来た段階ですごいな!と思って。 それでもう他の監督にやらせることは、心情的にもう有り得ないし、他の人がわからないようなしょーもないギャグを一杯書いてたんで、それは多分僕しか演出出来ない、難しいだろうなっていうのもあるうちに、主演の二人が、途中段階でどうも参加していただけそうだっていうことが明確になり始めると、より本当にこれはもう映画化されてしまう、逃げれないなというか、やるしかない!というような流れにはなったんです。

相田: 浅野さんもね、哀川さんも佐藤さんが参加されている作品と縁があるじゃないですか、「殺し屋1」だったり「牛頭」であったりとか。 何かやっぱりそういう流れから、キャスティングってイメージというか、そうなったらいいなみたいなみたいなのがあって?

佐藤: いや、それはでもさすがにハゲとアフロになってくれと言うのはすごい勇気のいることです。

相田: そうですよね。

佐藤: 最初にそのプロデューサーと話したときにも、じゃあキャスティング誰にしましょうか?となったときに、プロデューサーの方からまず最初に、アフロ役を実は浅野さんにやって欲しいと思ってるっていう。 あぁ、すごいこと言う人だなと。 じゃあもう調子に乗って、ハゲは哀川翔くらいじゃないとだめですねって。 じゃその二人を理想形にしましょうって言ったところが、佐吉さんは二人と仕事したことありますよね?個人的に話しを振ってもらえませんかって

相田: 無理難題を(笑)

佐藤: それは振れるけど、それで縁が切れてしまうかもしれないくらいの話。 それでも一応振ってみたら、思いの他反応が悪くなかったということで。 そこから始まったと。

相田: 花くまさんにお聞きしたいんですけど、漫画の映画化って、特に実写化っていうのはなかなかね難しいし、この作品は難しかったんだけど、奇跡的に成功してると僕なんかは思うんですけども、最初に映画化っていうお話が来たとき、どうだったんですかね?原作者としては、アリなの?っていうところはなかったんですか?

花くま: まぁ半信半疑ですけどね。 何かすごいお金集めなきゃいけないじゃないですか、そういう普通の企業の上の人に、この作品でどうやってお金出してくれんのかなって、ねぇ。

相田: 売りはどこなんだ?っていうとこですかね、企画として、お金出す人にとってっていうか。

佐藤: でもやっぱり主演の二人が決まらなかったとしたら、多分お金出なかったと思うんですよね。 キャスティングとかいうの大きいですよね。

相田: 脚本にまずした段階で、愛着が湧いたってことですよね? 脚本にするってことがものすごく難しかったと思うんですけれども、原作をちゃんと匂いというか空気感を残しつつ、ああいう映画ならではの荒唐無稽な境地にたどり着かせるためにご苦労された点というのは?

佐藤: 今までも割と漫画原作の仕事というのは多かったんですけれど、基本はやっぱり漫画をまんま映画化するっていうのが僕の考え方で、ただそれの足りない部分だけ、足りないというか、映画として結末とかラストどうするんだとか、色んな人が見られる作品なのかどうかっていう部分だけ肉付けさせてもらうことなんですけれど、ただ今回に関しては全くその要素を拒絶する原作というか、だから変に手を加えると全く花くまさんの世界ではなくなってしまうというか、そういう部分では脚本の段階ですっごく悩んでたんですけど、途中でお二人が参加していただけるということになって来たときに、二人が出ていただいて、タイトルが「東京ゾンビ」なら、みんな見に来てくれるのではないかと。 逆に、見に来ていただいて、あとは劇場で花くまさんの世界というのを堪能していただいて。 細かく言うと、これ前半と後半に別れてますよね、後半というのは花くまさんの原作では本当にバトルの連続で、そこに格闘技論がどんどん展開されて行くというような、それは本当に好きな人なら楽しめるんでしょうけど、普通に見に来た人がそのまま楽しめるっていうにはどうしたら良いかな?と思ったときに、よく映画の定番として女を出せ!という、よく言われるんですけど僕等も、どうしようかな?って思ってて、結局ミツオは子犬を助けてゾンビに噛まれるという、子犬..こいぬ..そのとき本当に駄洒落的に「小ギャル」って思いついたんです。 小ギャルを助けて噛まれる、助けたらミツオはいなくなって、残った小ギャルとフジオが後半何か良いドラマを展開してくれるんじゃないかという。 そう思いついたら、意外と自分自身、女との出会いというか、自分の大人になりきれない部分というのをそこに何か反映できるんじゃないかっていうことで、後半も何とか書き上げた。

相田: それであの大胆な二部構成が。
あの構成についてはどうだったんですか?原作者としては。

花くま: いやまぁ巧いこと佐藤さんやったなと思いましたけどね。 原作通りやってたら、女の人は雌ブタとおばさんだけなんで、何か良いなぁと思いました。

相田: すごい月並みな質問なんですけど、そもそも柔術とゾンビの組み合わせというのはどういうところから?

花くま: ただ単に僕の好物を全部入れただけですね。

相田: 好きなものを?

花くま: 漫画描いたときはもうそういう心境でしたね。 今回は自分のためだけにやろうっていう。 自分のためだけに描くけど、一応エンタテイメントとしてはやるけど、他の仕事とはもう別で、今回だけはもう自分のアレをばーっと出そうと思って描いてたんですよね。

相田: 僕今日はどうしても一個だけ聞きたいことがあって、今思い出してもちょっと笑ってしまいそうなんですけど、噛まれるじゃないですか哀川さんが、噛まれて、運転席に戻って来て、浅野さんがすごいキョロキョロ見ますよね、ああいう浅野さんを僕はちょっと見たことがなかったし、ものすごい状況ですよね、あの間ってどういう演出をすれはああいう状況が訪れるのかってのをすごい知りたいんですけれど。

佐藤: いや単純に、そんな複雑なことは言ってなくて、実はあの車のシーンてのは、あれ実はセットなんです。

相田: えぇっ!

佐藤: 背景は全部CGなんです。

相田: あぁ!全然わからないですね。

佐藤: 要するにそうなるとセットは別に運転してなくても車は進んでいくわけで、やっぱり演技しててもつい忘れがちになるんじゃないかなっていうのはあったんで、浅野さんに、これは運転してますから、前は絶対気になるし、ミツオのことも気になる、噛まれたってことはどうなるかってことも気になる、この3ポイント制になってて

相田: こう(↑)、こう(←)、こう(↓)と

佐藤: これを大体2、3回繰り返してくださいと言ったら、はぁ、わかりましたっていうことで、ああいう演技になりました。

相田: はぁ、それはやっぱりもうセットだから良かったんですね、間違いなくね。

佐藤: ちょっと動けと言ったって無理ですよね。

相田: 先日ちょっと浅野さんにお会いする機会があって、すごいですねって言ったら、いや、最近やっとああいうことが出来るようになって来たっておっしゃってて、昔はとても出来なかったと、だから映画をやり続けてるとああいうことも出来るようになるから嬉しいとおっしゃってて、それもすごく感動したんですけど。

質問
ニギニギって何ですか?
花くま: 漫画のときは人間発電所で、人間が動くと電気が出るんじゃないかっていう中学生的な発想でやってたんですよ。 あまり科学的根拠はないです。

佐藤: 理想は花くまさんの漫画のまま出せたら良かったんですけど、あまりに説明不可能というか。 申し訳程度にこう握って電気を出してるってことで、ニギニギと言ってる。 せめてニギニギと言っているとこだけは踏襲させてもらって。

花くま: 漫画のテクニック的に、擬音を冷静な書体で「ニギニギ」って出すのは、僕はよく使うんで、そういうのは好きで、言葉が好きで使ってたんです。

相田: ニギニギが。

司会: 実は花くまさんの擬音って厄介で、その擬音が意外と重要だったりするんです、毎回。 極端に言えば映画の中でも擬音を足そうかなと思ったくらい。 案外それで大事なことをね説明してる。

花くま: 割と。 漫画の話になりますけど、擬音はけっこう僕大切にしてて、色々計算してやってんですけど、たまに編集者が余計なことして、丸文字っぽい字で擬音とか出されると、それ出て来たのを見て頭に来るんです。

相田: そのまんまでやれと。

花くま: あれは冷静な書体で擬音を出すからこそ僕の中での計算があるのに、そんなね何か余計な丸文字っぽい字とかねおどろおどろしい書体とかにねしてもらうとちょっと嫌だなぁ。

佐藤: 擬音への挑戦ですね。ミツオが飛び降りるときもピューとありますけど、花くまさんも「ピュー」と書かれてるんですよね。 ああいうのもいかにイメージに近いピューを出すかみたいな。

相田: 確かにピューって感じで落ちて行きますよね。 あれもだからけっこう、はっ!として気が抜けるみたいな感じですよね。 けっこうそういう擬音感覚みたいなものが織り込まれているんですよね。

質問
J.ロメロのゾンビへの思い入れは?
花くま: 「ゾンビ」は小学校のとき公開したんですよね。 それですごい好きで、あのゾンビの設定が小学生の心をがっちり掴む内容で、その影響がずっと続いて、心の中に残ってたんですよね。いつかゾンビやりたいなぁと思ってて、それで、あれで出したんですけど。 スーパーマーケットに立て篭もったりするのは小学生の夢なんで、デパートを自分の好き勝手にするっていう、あの設定がもう小学生的にすごく好きで、それからずっと好きですね。 ゾンビがゆっくり動いて、ここを撃たれれば死ぬっていうそのルールもすごい好きなんです。 ゆっくりだからこそすごく良いんですよね。 上手く行けば逃げられるし。 だからリメイクされた、走るのはダメなんです。

相田: 速い?

花くま: あれはただのスポーツになっちゃう。 ゆっくりだからこそ哀愁もあるし、色々深くなってるんですよね。 だからそのことを映画化の話が来たときに言わなかったんですけど、ゾンビは走らしちゃダメですって契約に加えれば良かったなぁと。 ま、それは大丈夫だったんですけど。

相田: 監督はやっぱり日本でゾンビ映画を撮るっていうのは、風土が風土だけに難しい部分もあるじゃないですか、その辺はどうだったんですか?日本でゾンビ映画を撮るっていう。

佐藤: いや、僕はあまり深く考えなかったです。 だからよくホラーファンの監督の方でもゾンビファンの方も非常に多くて。 でも好きだけに手を付けれなかったんじゃないですか。 僕の場合は別に嫌いじゃないんだけれど、そこまでじゃないというか、言い方おかしいんだけど、あぁ、じゃゾンビ出したら面白いねというくらいの感じだったんで、普通にロメロのゾンビを出そうと思ったのと。 あと花くまさんのエッセイとか読んでると、花くまさんがもう絶対これは普通のゆっくり歩くゾンビが好きだなというのが、話し合ってはいなかったけど、薄々感じてたんで、プロデューサーが空飛ばしましょうよとわけのわからないことを言ってたんですけど、これはやっぱり普通にゾンビで。

花くま: ありましたね。 プロデューサーが何か一回フライングゾンビ良いですねとか言い出して、えぇっ!?とか。

相田: プロデューサーちょっと変な人なんですか?

佐藤: いや、変ですよ、きっと。 変だし、元々母体がこれCG会社が製作してる映画なんですけど、そこのプロデューサーなんですよね。 実写映画は今回初めてで、だからこそ浅野忠信にやらせたいみたいな無茶なこと言う人なんです。

相田: だからこそ(笑)

佐藤: 今回で多分色んな常識を仕入れて、これからは多分まともになる。

相田: じゃ、そのプロデューサーとしても、かなり冒険をしたいと。

佐藤: うーん、冒険をしたいというか、元々がちょっと普通とズレてる感覚の持ち主だろうなという気がします。 そもそもそうでないとね、花くまさんの漫画を映画化したいという発想をしないので。

花くま: でもすごいですけどね、こうやって映画出来ちゃうんだから、お金を持って来るんだから。

佐藤: 結果的にね。 そういう意味では僕自身も無茶言う人としかあまり仕事したくないなという気持ちもあるんで、あまり常識を、勉強したことは忘れて、新たな無茶を挑戦したいなとは思います。

質問
劇中のアニメに花くまさんの画を使おうとは思わなかったのですか?
佐藤: 花くまさんの画に関しては、途中別のシーンで本当はやろうかなと思ってたシーンがあって。それは最後ミツオが登場したときに説明しますよね、その辺をもしかしたら花くまさんに4コマ漫画でやってもらおうかなぁと思ったんで。 ただあそこのアニメというのは実はそのまたプロデューサーが全然別のルートで、イギリスのユニット9という3、4人でやってるチームなんですけど、すごい面白いアニメがあるって話聞いて、ぜひそこは使えたら使いたいという話で。 最初はそのオープニングタイトルで何かそれっぽいのをやって見せるって話があったんですけど、あんまりそんなかっこいいこともしたくなかったんで、じゃあ何かな?って思ったときに、後半の話の橋渡しで、後半明らかに世界観がビジュアルとして見えないなっていうのがだんだんわかって来たんで、だったらそのユニット9の話があったんで、丁度良いからその部分をああいう形で説明を一気にアニメで見せようということになったんで。 そういう意味では花くまさんとはちょっと思ってなかった、たまたまそうなった。

相田: 挿入のタイミングとかが良いですよね、アニメの。

質問
もりだくさんな内容の中で、特に押し出したかったものは?
花くま: 簡単に言うと、中学生気質を、みんなにまた戻ってもらいたいなってのがあって、中学生のときの自分がすごい好きなんですよ、僕はね個人的に。 そのときのあれはずっと残ってるし、そういう気持ちで見ると何かぐっと来る内容になるなっていう感じには作ってあると思うんですけど。

相田: 中学生のときの感情?

花くま: 中学生感覚で見ると、すごいぐっと来ると思うんですよね。 冷静な大人の感覚で見ると、何かバカバカしいって言う人が、その一言で済ましちゃう人がいるかもしれないけど、何かそれをね、中学生のときのあれを持ってたら、ぐっと来るんじゃないかなとは思いますね。

佐藤: 僕も当然そういう部分はありますし、特にここ!っていうところはそんなに、まぁ全部思い入れはあるんですけど、やっぱりその主人公二人のキャラクターというか。 やっぱり僕自身の子供の頃に影響してて、ちっちゃい頃に僕は大阪の工場が一杯ある所で育ってて、そこのオヤジたちが、もう非常に下らないことで、仕事と関係ないことですごい楽しいことをずっとしゃべってて、あぁ!大人になってもこんないい加減にも生きて行けるってのが何か薄々わかったというか、親が言ってるちゃんとした大人とは全然違う大人だって一杯いるんだなってので、ちょっと楽になれてた部分もあったんですけど。 やっぱり今普通に生きてて、やっぱりそういう大人もいるんでしょうけど、あまり見えないというか、見えないし、また親はよりちゃんとした大人になれという世の中でやっているから、そうじゃなくても、僕自身がやっぱりそうだし、で主演の浅野さんと哀川さんも結局そういう中学生気質を持ったまま大人になれてる人だという気がするんですよね。 そういう人を見て、ちょっと肩の力抜けたらいいんじゃないかなぁっていう気持ちで作ったんです。

相田: 中学生気質というと、ここに出て来るあの二人というか、とんでもないことが起こってるんだけど、あまり動じないじゃないですか、ってか全然動じないですよね。 何か、ゾンビが出て来た!さぁ戦おう。 あ!数が多い、じゃ逃げよう。割とこう即断即決っていうところが、異常な状況なんだけど、彼等だけがすごく冷静に動いてるって構造になってると思うんですけど、これは原作の味でもあると思うんですけど、原作の何か世界観みたいな気がするんですけど、その動じなさっていうのは、なぜあそこまで動じないんだろう?ってすごい思うんですけど。

佐藤: 多分そういう情報として知らな過ぎると思うんですね。 知らな過ぎるというか、たまたまそうだというか、余計なことを判断する材料が多分ない気がするんですね。 だから、実はこれのノベライズというか、第一稿の脚本を書いたときに、最初フジオがミツオに対して、俺個性的になりたいんだと言う、なれるかな?みたいなときに、お前は絶対個性的になんてなれないし、なる必要はない、要するに普通が一番だって言うんですね。 結局は世の中って個性的にならなきゃいけないみたいなところがあったりしますね?そんなことすら余計だというか、多分自分が信じてる、器のちっこい話かもしれないですけど、まぁ別に普通に楽しく生きて行ければいいと。 だからゾンビが出てどうしたらいいんだ、ああしたらいいんだってことではなく、危ない!と思ったら逃げるというか、余計なこと考えてるとグズグズして、結局ね命を失ってしまうし。 そういうのは中学生っていうのは案外そういう年代だったんではないでしょうかね、子供っていうのは。 だから特に何か計算したというわけではなくて、本当にそういう余計な情報を持たない人は、単純にそう動くしかないという。

花くま: シンプル。

佐藤: シンプル。

質問
原作者は撮影現場に行きましたか?
花くま: 柔術の技使うシーンは大体80%くらいは現場に来てました。 一応何か心配というか。 僕最初にプロデューサーが映画化するって来たときに出した条件が、柔術のシーンはじゃ僕が見ますっていう、それだけだったんです。 そこを任しちゃうと、ちょっと全然プロレスチックになっちゃうと全然意味合いが違って来ちゃうんで、その柔術やるとこだけはちょっと監視しますって感じで、それで見てたんですけどね。 出来上がったのを見て、病院のシーンは僕行ってないんで、いれば良かったなと思って。 もうちょっとね、最初の奥エリをもっと奥まで突っ込んだ方が良かったなと。

佐藤: 花くまさんもうね、一人何役もお願いで。 原作もそうだし、柔術指導もそうですし、出演者として、当然ゴリはみんなわかってると思いますけど、途中の公園のゾンビも花くまさんですし

相田: おぉ!

佐藤: あのパンチパーマの

花くま: あれも条件的には、僕の条件はかっちりしたパンチパーマを作ってくださいって

相田: 色々条件はあったんですね!?

花くま: そのパンチパーマと柔術シーンを見れるってこと。 僕はパンチパーマをやりたいって言って、それだけです。

佐藤: そのこと助監督は、花くまさんがカツラを、パンチパーマを用意してくれっていう、ただ者じゃないですねみたいなことを。 でその柔術シーンの指導で、大体本当花くまさん、半分近く現場に多分いてくれたと思うんです、あれだけ連載抱えてるにも関わらず。 それはもう別腹らしかったんですけど。

相田: 別腹って(笑)

花くま: まぁ楽しいですからね。

佐藤: 途中でその、冒頭で翔さんが鼻毛抜いて、白髪だっていう、あれも実は花くまさんなんですよ。 あのシーンも撮影終わって、お疲れ様でした!って言ったら、翔さんもう帰ってしまって、おい!指のアップ撮ってないぞってことになって、じゃあもういいから、一番指のきれいな人でやろうってことになって、じゃみんなせーので指見せろって見せたら、花くまさんが一番指がきれいだったんですね。

相田: すごいスタンドインですねぇ。

佐藤: 三役、四役。

花くま: 真剣にやりましたよ。 あれ何回もね、2、3回撮りましたよね。

相田: けっこう印象的なショットですよね。 かなり寄り寄りで。

花くま: もっと動かして!みたいな

佐藤: そのことがね、何か伏線になるかというと、全くあれだけで完結してる、不思議なシーン。

相田: 柔術のシーンに関しては、花くまさんからかなり指導はあったんですか?その現場で、ここはこうした方がとか

佐藤: いや、指導という以前に、二人がこういう試合というか、技をやって行くというのは、花くまさんともう一人の方がプロモーションビデオを作っていただいて、花くまさんがハゲカツラを被って、もう一方がアフロ被ったりして

相田: やって見せる

佐藤: で、それをお二人が見て勉強する。

相田: もう完全にスタッフ?

佐藤: で現場に来ても、さらにそれをちゃんとやってもらえるように指導する。 そこはお任せっ切りですよ。

相田: じゃ、ああいう組み方とか、お二人の組み方とか

佐藤: もう全部花くまさんですよね。

花くま: もう現場では柔術着着て入ってるし。 最後の二人の試合も、本当はもっとすごい高度な試合を僕は作ってたんですけど、それビデオ見せたら、さすがに出来ないって言われて

相田: それ相当やってる人のアレですよね、きっと。

佐藤: 注文だけしたら、花くまさんに、とにかく最後3分間くらい延々と試合を見せたいと思ってるんで、技考えてくださいって言ったら、本当に花くまさんすごいのを考えて来てくれたんですよ。 で翔さんにそれ見せたら、見終わってから、「本当にこれ俺がやるのか?」って話になって、いや、これは参考ですって。 いやもう本当にそれをやるって言ったら、もう俺はやめるっていうくらいの雰囲気があったんで。 で花くまさんに、1分くらいにしてください!ってもう一回考え直してもらったんです。

相田: 短くって言ったんですか。

佐藤: それでも相当難しかったです。

花くま: まぁあれだけね、映画の中で寝技やったのは、世界中であの二人だけだと思う。 すごいと思いますよ。

相田: じゃ、けっこう歴史に残る寝技っていうことで。
哀川さんが、あれはどこなんですかね?どこか小学校かステージか何か、体育館のステージなんですかね?歌を歌って、自分の身の上を告白するシーンがありますけど、あの歌ってすごいすばらしい。 歌になり切らず、でもセリフからは浮遊している感じで、おかしくて本当に素敵なシーンだと思うんですけど、あれは基本的にはお任せみたいな感じ?

佐藤: そうですね、一応歌詞は歌詞通りに歌ってくれてるんですけど、翔さんに、このメロディーは考えてないんで、自分でお願いしますということを、割と事前から言ってて、だからずっと家で色んなことを試してたみたいですね。 ただもう本番になるとやっぱり色んなことがぶっ飛んでしまうんで、多分本人が思ってるメロディーとは違ってるかなぁって気がするんです。 妙に何か、長渕剛が好きなんだなみたいな

相田: あ!やっぱりね、そうですよね。

佐藤: ただやっぱり、1カットにするっていうのは、撮影の直前で僕が決めたんですよ。 本当はカット割ってたんですけど、やっぱり一気に見せようかなと思って。 二人も驚きながらも、やります!って言っていただいて。 だから結局ねNG出したらもう終わりなんで、色んなことが吹っ飛んだと思うんです、頭の中から。 それだけに、よりここにあるフジオとミツオが表現出来たというか。 実はこの1カットはほとんど細工してないんですけど、一箇所だけ細工してる部分があって、翔さんが歌いだした瞬間に、♪俺は実は癌なんだっていう所をですね、その前に実は♪俺は実は痔なんだって言ってるんですよ。 なぜかって言うと、翔さんが最初シナリオを一読したときに「癌」を「痔」と読み間違えて、本人は延々痔だ痔だ痔だと思って、一回僕の前でリハーサルしてくれたときに、 (佐藤:)え!何が痔なんですか? (哀川:)だって痔だろ?って言うから、 (佐藤:)いや癌ですよ、 (哀川:)あぁそうなのって訂正はしてくれたんだけど、やっぱりその痔が本番に出てしまった。 今のを歌ったとき一番びびったのは多分浅野さんだと思うんです。 浅野さんも、これはもう消してますけど、 (浅野:)え!じ痔なの?

相田: リアクションとして。

佐藤: で翔さん、(哀川:)いや、間違った、ごめん、癌。 でその部分だけちょっとね、本当は残そうと思ったんだけど、一度は残したんだけど、さすがにプロデューサーも、非常にビミョーなやり取りになってしまうんで

相田: そうですよね、ギャグになっちゃいますよね。

佐藤: ギャグになっちゃうんで。 でもね、あったらあったでそれなりに何か本当っぽい感じはしたんですけど。 一応そこ抜いたら、丁度良いためらいの部分になってる感じがして、癌だと。 それだけそのシーンは思い出深いシーンでしたけど。

相田: あれ最初から1カットの予定じゃなくて、1カットにするって、すごい決断ですよね。 1カットならではの叙情があったりして、いつ終わるかわからないじゃないですか、見てる客としては。 だからすごく良いんですよね。 いつまでも終わらないで欲しいな。

佐藤: それがね、あのシーンの言ってることなんで

相田: あの編集っていうか、あの短いスパンっていうのは、もう最初から脚本から想定されてたんですか?すぐ、実は..っていう

佐藤: それはもう、そうですね

相田: 引っ張らない、決してあのムードで

佐藤: ただ僕は驚いたのは、その病院のシーンがあって、朝のシーンになったときに、前のその良い雰囲気だったっていう音楽がそのまま流れてますよね、その解釈に僕は逆に苦しみますよね。 音楽の方がそこまでそれでひっつけてるっていうか、それはどう受け止めれば良いのか、感動したまま受け止めれば良いのか、ものすごい皮肉として受け止めれば良いのかっていう。

相田: 救いと言えば、救いなんですが、でも本人は、ねぇ。 未だに知らないわけですよね。

佐藤: 未だに知らない。

相田: 未だに死んだ気でいるんですよね。

佐藤: 死んだ気でいるし、未だにゾンビのまま。

質問
柔術の魅力とは?
花くま: 面白さは、簡単に言うと、やらないとわかんないんですけどね。 好みもあると思うんですよね、立ち技が好きな人、寝技が好きな人。 僕は寝技で下になってる人が、下から上の人を決めるっていうね、そこがすごいしびれるんですよ、僕的に。 それですごい好きなんですけど、そういう良さがある。 一見ね、上にいる人が有利に見えるんだけど、そこを下からパッと決めるのがすごいかっこいいなぁっていう。 僕が中学生のときに柔術があったら、絶対やってた、そのときから。

佐藤: 花くまさんが30代以上のアマチュアでは、柔術敵なしですよ。 道場に通って。 アクシス?

花くま: AXIS。

司会: 本日はありがとうございました。


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更新:2005.12.03(土)
Kaori