TA030822

EJ「座頭市」ティーチイン

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東京&大阪での「座頭市」完成披露も記憶に新しい、灼熱の8月22日、半蔵門TFMホールにて、「weeklyぴあ」主催EJティーチイン試写会が催された。

ご出席(敬称略)
森昌行 プロデューサー
ガダルカナル・タカ (新吉)
浅野忠信 (服部源之助)
伊藤さとり (司会:映画パーソナリティー)

浅野さんのいでたち
  • うなじで束ねた髪、髭
  • 袖口にレース使いのブルーのシャツ
  • 茶地に虹色のピンストライプのパンツ
  • 極彩色のベルト
  • 黒のpinholeスニーカー
カンヌのフォトセッション再現!


伊藤 早速皆さんからご挨拶をいただきたいと思います。まずはやはり北野武監督作品と言えば、名物は森プロデューサーではないでしょうか。よろしくお願い致します。

本当にご多数のご来場ありがとうございました。見終わったばかりというので、あまり水を差すようなことを言っちゃいけないんで(笑)逆に、あの聞かれたことは素直にお答えすればいいのかな?というくらいの気持ちでいますんですが、ちょっと恐い感じもしますね。あの最初にといいますか、なぜこの映画を撮ることになったかという経緯だけ、ちょっと簡単に。たぶんそういう質問も出るのかな?と思ったんで、最初にちょっと説明だけさせていただきます。あのたけしさん自身が、まぁもちろんこれからインタビューとかでも出て来ることにもなるんですが、浅草時代と言いますか、ツービートのデビューもっと前ですね、その浅草時代に、色々恩人として、あの斎藤智恵子さんていう方がいらっしゃいまして、この方からですね、何とかビートたけし主演の『座頭市』、まぁそういう映画に出て欲しい、ですから最初は実は出演依頼だったんですね。この方は、斎藤さんって方は実は勝新太郎さん、亡くなられた勝さんのかつての親しい方でもありまして、そのこともあって、恐らく今年、勝さん七回忌みたいなこともありましたんで、そういうことも含めて、何とか自分が大好きな芸人、浅草の芸人の中でも代表的なビートたけしという、これはたけしさんも色々お世話になったということもあるんですけど、何とか役者ビートたけしの『座頭市』を見たいんだというようなお話しがあって。ただご存知の方はご存知だと思うんですけど、やっぱり勝さんと座頭市ってのは、あまりにもちょっと、近いという以上にほとんどイコールというようなこともありまして、最初は実はお断りしたんですね、ちょっとそれは無理でしょう、いくら何でも座頭市を勝新太郎の代わりにやるという、その勝さんの代わりはいない、ですからお断りしたんですけど、その後熱心なお話しをいただいたのが丁度2年半前くらいなんです。それで、そういう話の中でですね、ただあの座頭市という設定と『座頭市』というタイトルは、まぁ原作として歴史あるものですから、これはこれでいいんだが、自由に中身変えちゃっていいから、その設定はもう座頭市だけれどもということだけ、監督をやるんならどうだろう?と、つまりその座頭市の持ってる世界観ていうのを、勝さんの代わりにということじゃ実現出来ないんだけれども、演出まで含めた世界観を変えてもいいから、『座頭市』をやっぱりそれでも撮って欲しいんだという話に変わりましてね、で北野武監督作品としての『座頭市』を、じゃ今度は作るんであれば、当然私共の、あの北野組等々を含めた製作体制が、本当にそれで許していただけるんであれば、言ってしまえば、製作のイニシアチブみたいなこと全部やらしていただけるんであれば、確かに北野武監督作品としての、ビートたけし主演の『座頭市』というのはあるのかなと、いうようなことがありまして、それが丁度『Dolls』に入る前にですね、何やかんやあってですね、でまぁ、そっから『Dolls』終わって、『Dolls』が、ですからまだ1年経ってないですね?公開から

司会 そうですね、本当に短いですよね。

ええ、で、3月クランクイン、3月30日にクランクインですからね、もうほとんど突貫工事みたいに、それで出来たのがまだ一月経ってません。えっと、監督が最終的にOKってのが7月の末で、いわゆる我々が最終的な技術的なチェックを終えて、これで完成!と言ったのが、本当に8月の1日、2日くらいの話ですからね、まだ一月経っていない中で、まぁ皆さんにご覧いただいたということです。ちょっと長くなりましたけど、たぶんそんな話も出るかな?と思ってご案内いたしました。本当に今日は、何かたくさん来ていただいてありがとうございました。

伊藤 はい、どうもありがとうございました。北野監督とはずっとご一緒ですので、北野監督への質問事項は森プロデューサーが受けるというふうになっております。 さぁ続きまして、では役者陣のお二人にですねご挨拶をいただきたいと思います。ガダルカナル・タカさんです、よろしくお願いいたします。

タカ どうも!こんにちは。えー社長が長々とお話してしまって申し訳ありません。今回、湾岸署の青島役で出させていただいた私ですけども...(伊藤に)程良い所で適当に突っ込んでくださいね。

伊藤 (笑)いやぁ、どうしようかしらと思っちゃいましたよ。

タカ ハイ、今回の私の役所はですね、えー王監督の顔を便器に見立てて、通信販売で売って叱られるという役柄...あの正直言いまして、映画のこと私に聞いても何もわかりませんので。えぇ、私はただ監督にやれ!って言われてやっただけでですね、全体的にもですね、ほとんど私の所だけ別撮りと思っていただいていいかもわかんない。えぇ、あの色んな方との絡みもなく、えぇ淡々とお笑いシーンだけ撮ったということで。えぇまぁその部分もし楽しんでいただけたなら有り難いなと思いますけども、先程楽屋にいましたらですね、こちらの音声は流れて来るんですけれども、リアクションが全くなくてですね、ウケてねぇんじゃないか!?という心配はありましたけれども、えぇ。そんなわけで、あの答えられそうなことは答えますけども、出来たらこのお二人に話を振っていただけたら有り難いなと思います。どうもよろしくお願いします。

伊藤 はい、タカさんよろしくお願いします。皆さん、タカさんにいっぱい質問してあげてください。よろしくお願いします。 さぁ続きまして、浅野忠信さんです。よろしくお願いします。

浅野 (低い声で)えー、今日は本当に皆さん集まっていただいてありがとうございます。あの本当に、えっとですね、多少ですけど試写会とかをやって、いろんな人の意見を聞かしてもらったら、すごく反応が良くて、僕自身も見たときにすごく良い作品だなぁと思ったので、何かこう、皆さんも良いと思っていらっしゃったら、あのたくさんの人に、何かこう、良かったよ!と言ってもらえたら嬉しいなと思います。ありがとうございます。

伊藤 はい、よろしくお願いいたします。

タカ 少しは挨拶でボケろ!って、あれほど教えたじゃないか!?

浅野 ずーっとタカさんの後とかにしゃべらされるのが、俺恐いんですよ(笑)

タカ 何でもいいから、軽く一つボケてから話に入らないと。

浅野 スイマセン(笑)

タカ 客、ちゃんと掴まないとダメだからね。

浅野 わかりました(笑)

伊藤 何か浅野さんは師匠なんですか?タカさんが。

浅野 もう勝手に師匠と、ハイ(笑)

タカ 色々と悪いこと教えてるんですけどね。

浅野 ハイ(笑)

全員に質問(伊藤)
完成した映画を初めてスクリーンで見たときの感想は?
あ、この映画を見たときですか?私がこの映画見たときってのもねぇ。初めてっていっても、何ですかね?あの、まぁ完成して良かったなっていう(笑)。ていうのが、だって、ねぇ、脚本から何から、ロケハンから何から、1カット目から何から、もうずーっと、こう見ちゃってる人間ていうのは、だから何か、逆に皆さんがうらやましいです。こういう感動じゃないですね。やっぱり映画っていうのは他人の物見るもんでしょうね(笑)

伊藤 何となく子供みたいな感じですかね?自分にとって。

いや、何でしょうね?あ、出来ちゃった!何とかしなきゃ、みたいな感じですかね(笑)

タカ それって、ヤバいんですかね?(笑)そういうとき私に相談していただければ。

あぁ、そう?(笑)

タカ 良いお医者さんも知ってますし。

伊藤 そんなタカさんに聞いてみましょう。

タカ ハイハイ。

伊藤 スクリーンでこの『座頭市』をご覧になったときの感想を。

タカ いや、あの本当にね、全体の流れを把握しておらず、しかも、まぁ今までもそうですけれども、バラエティ以外はどんな台本をもらっても、自分の台詞の所しか読まないっていう癖がありますんで、もう本当に、北野組の場合にはそれも読まないんです。

伊藤 !?

タカ 当日行って、全部変わっちゃいますから。ですから、あの本当にずっと現場にいて、自分が撮ったシーンは、監督と一緒に仕事してて、北野組の皆さんと一緒に楽しいなぁ!っていう感じしか残ってなくて、客観的にこの画がどう映るかなぁ?っていうイメージまで出来てなくて、それがトータルで繋がってみて、やっぱりちょっと驚きましたね。あ、こんなにすごい映画になってるんだ!俺のシーンはカットした方が良いんじゃないかな?っていうくらい(笑)えぇ。いやスピード感、緊張感、えぇとにかくどれをとってもその小気味の良い、でやっぱり無闇矢鱈と斬ってるようでいて、見た後、爽快感がちょっと残る気がするじゃないですか?ねぇ

伊藤 そうですね。

タカ ええ、本当に久し振りに、こういう良い作品に出演させていただいて、非常に有り難いと思っております。

伊藤 ありがとうございました。 それでは、次はやっぱり浅野さんです。あの先程ね、良い作品だというふうにおっしゃってましたけども、もうちょっと別に、もう少し具体的に、こう見たときの感想を。

浅野 最初は、あの自分で、まぁ以前からたけしさんの作品にご一緒したいなと思っていたんで、そういう思い入れのある作品だったんで、もうあんまり、こう何ですかね、落ち着いて見ていられなかったんですけど、まぁ出来上がって、自分を見て、まぁ自分で言うのも変なんですけども、カッコ良く映してもらえてたんで(笑)

タカ カッコ良いよねぇ?

浅野 イヤ本当に有り難いですね(笑)。いやぁ、だからもう嬉しくて嬉しくて(笑)。で、映画としても本当に面白くて、本当に僕はタカさんが出ておられるとことかすっごい好きで。本当に、あの知らなかったんです、どういう感じで他の方が映ってんのかっていうのは。最後のタップのシーンとかも全然知らなくって、面白いなと思いましたね。ハイ。

伊藤 そうですか。ねぇ今、周りの方々も浅野さんカッコイイ!って拍手してましたけどね。

浅野さんに質問(♂)
武士に対してのイメージ、演じる上で心がけたことなど
浅野 そうですね、あんまりこう武士とか侍っていう括りで考えてはみなかったですけど、今回の人に関しては、まぁ悪い言い方すれば、自分勝手というか、で自分の決めた道に対して突っ走っているような人だと思うんで、それにこう、都合良く奥さんの薬代を稼ぐといって、自分の納得行かない剣の道みたいなことを極めようとしてる方かなと思って。それでまぁ侍とかそういう人っていうのは、もしかしたら自分の決めた道に対して前向きに生きてる人かなぁと思いましたけど。ですから今回は本当に殺陣を練習することによって、そういう生まれて来る気持ちを今回の役に当てはめてという感じですかね。

森Pに質問(♀)
人斬りのシーンへの思い入れは?
本当にこれ、監督の代わりに言っちゃって良いのかな?とは思うんで、多少値引きしていただければと思うんですけれど、あの基本的に殺陣のことですよね?で、今回の殺陣っていうのは全部、監督自身が付けました。普通ね殺陣師っていう専門の方がいらっしゃって、丁度あの日本舞踊みたいに、振付けみたいにこうやって行くんですけど、北野監督の場合、今回それが嫌だというので、全部自分でやったんですけども、基本になっているのは、あの監督自身の言葉をそのまま言いますとね、あの浅草の時代、浅草の時代っていうのは、皆さんどこまでわかってるか、ツービートよりもっと前の、いわゆるたけしさん自身がまだ全く売れない頃に舞台で芸をしてた頃、その頃教えてもらったそのコントがあるんですね。コントって、要するに侍コントみたいな、あの丁度タカさんが、3人相手に、お前らに稽古つけてやるという、そういうシーンがありましてね、ボコボコボコって、こう外れて行って頭を打つという。実はあれは前提としてちゃんとした殺陣の、要するにかっこいい、浅野さんがやってらっしゃってるような殺陣があって、あれを一つ崩したお笑い風にすると、こういうボケになるという一つのまぁ典型的な形ではあります。ですから、あそこに象徴されるように、北野監督自身がああいうことを身に付けてた時代があってですね、そのときにこう、ああいう形を全部憶えてた。なおかつ、それにスピード感を加えたのが今回の殺陣の形なんですけどもね。で北野さんが、北野さんて言い方変だな(笑)、監督がすごく気を付けてたのが、あの銃ですとね、すごく離れて、今まで北野監督の映画って、銃で撃つことが多かったんですけども、距離感ってあまり気にしなくていいんですね。逆に言えば、離れてもても撃てる。ところが、刃物っていうのは、やっぱり離れてて相手が斬られたリアクションしてもしょうがないってとこがありまして、結局この距離で、あの長さの刀で、それから浅野さんが持ってるあの刀の長さのあの距離の中で斬り合わないといけないのね。しかも目をつぶってるんですね、座頭市って。だからこう見えない中で、一種呼吸だけでこうやんなきゃいけないような、非常にある意味で危険を伴う名人芸なんですけれども、だから何ていうのかな?あれがどっから来たか?っていうと、今言った、元々は実はお笑いで学んでいた一つの要素からあれがあって。後はやっぱりあのご存知のように、たけしさんボクシングが好きだったり、野球が好きだったり。だからあの座頭市の、ほとんどあれ刀無視、見ないであれをもう1回見る機会があったら見て欲しいんですけども、ほとんどボクシングです、形としては。

伊藤 はぁ、そうかぁ(納得)

で浅野さんがやってらっしゃったあの形っていうのも、だから今言った、ものすごい基本的な動作に、つまりね、あれあの、何ていうのかな?あのすごくかっこいいんだけど、あれちょっとボケると、全部お笑いになって行くんですよ。

伊藤 ふぅん。

そのヒントみたいなことが、あの新吉扮する、稽古つけてやるといった、あのシーンに象徴されて、頭にコンと当たっちゃったりね、というようなことで考えてる。だから本当に面白いのは、あの一見真反対に見えることなんですが、あのシリアスでシャープな殺陣というのは、実はお笑いの要素でもあったり。だからそういう意味じゃ、北野監督がビートたけしとしてやってる素養が全部そこに盛り込まれてるかなということですよね、はい。

浅野さんに質問(♀)
時代劇ということで苦労したことや、舞台裏のエピソードなど
浅野 そうですね、あの襷がけ、こうくるくるっと回すシーンがあったじゃないですか、あれは一応まぁ練習してまして、あの家とかで自分で練習するときに、こうちょんまげの高さを忘れてまして、こう、ここ(袂)がちょっと長いじゃないですか、着物って、そういう所があるのが全然頭に入れてなくって、フツーに練習してて、あ、結構デキるな\(^o^)と思ってたんですけども、現場に入って、あ、現場ではないですけど、稽古のときにやっぱり頭を結ってもらって、着物着て稽古したときに、ガッと当たったりして、それは計算外だったんで、あぁなるほどぉ!ってのはありましたね。それでまぁ、そうですね、撮影中に何か面白いことあったかなぁ?

タカ 探さなきゃないの?

浅野 (笑)いや、本当に

タカ 意外と楽しくない現場だった?

浅野 (笑)いやいやいやいや

タカ ゴメンネ。

浅野 あの、本当に僕は、僕のシーンは本当にそういう、どちらかというと笑いのない(笑)シーンが多かったんで、真面目に撮影を(笑)やってるというか、あんま皆さん真面目じゃないみたいですけど(笑)

タカ 広島で1回ちょろっとすれ違ったくらいだもんね。

浅野 そうですね。ハイ(笑)。

伊藤 そうなんですか?

浅野 そうなんですよ(笑)。

伊藤 まぁ!

浅野 えぇ。ですからまぁ、そうですね、どちらかというと、そういう話とかは。あとまぁ大変だったのは、最後、座頭市と用心棒が決闘するときに、僕はいつもこうやって刀抜くけど、逆手で持って抜いてると思うんですけど、あれはもう、撮影当日までこっち(逆手)で練習してて、で監督がその当日に、こっち(順手)にしちゃおうかって言われて、えぇっ!と思って、それでもう焦って、こっちで抜く練習を現場でひたすらやりましたからね。それはちょっとびっくりしました。

伊藤 えぇっ!そのこっち(逆手)からこっち(順手)に変えたこだわりっていうのは何だったんですか?監督の。

浅野 あの、座頭市がやっぱりこう(順手で)抜いてるじゃないですか、それでまぁ用心棒がそういうのをまぁ頭の中でずっとイメージしてたりしてて、こうやって(順手で)抜いてやった方が斬れるなっていう考えのもとに、ハイ。

伊藤 ハァ、なるほどねぇ。

浅野 ハイ、そうなんですよ。

伊藤 (観客に)また見るといいですよ。

タカさんに質問(♀)
ここが一番笑えるぞ!というシーンは?
タカ あ、これはですね、意外と思われるかもしれませんけども、実はですね、私の色んな部分をコントにするってのは監督から聞いてました。浅野君がカッコ良くやるから、それを崩してお前の所はコントにしようと。でお笑いの部分っていうのは私が担当するのかなと思って現地へ行ったところですね、ほとんど褌一丁にですね槍を持った男が、家の前を『わーっ!』って言いながら、あの走り回ってるんですよ。その画のリハーサルを見た瞬間に、あまりのおかしさにですね、いや、これは食われちゃったなと、絶対これは持って行かれたなと思ったんですけども、意外や意外、これまた出来上がったものを見てみたらですね、やっぱり何て言うんでしょうかね、私の方が一日の長と申しますか、技術を持っていたと言って良いんじゃないでしょうかね。食われることもなく。意外と向こうの方がちょっと浮いてしまったかなという感があって、ややほっとしているとこなんですけどもね。正直あのシーン、最初に見たときには、やたらおかしくて。ヤツがですね、今回台詞が長くて噛んじゃいましたって言うから、お前『わーっ!』しか言ってないだろ!?と。『わーっ!』が一呼吸で言えずに長いんですねって。確かに、あの『わーっ!』長いんですよね。今回は長台詞だからって悩んでましたけど。まぁあの、他にも色々微妙に面白いシーンはあったと思うんですけども、あのシーンが私の中で一番笑えたシーンで、あとはこの、サイコロを持って、適当に遊んでろよって言われて、完全にボケてたところが、あとで見たらなかなかシュールな面白い画になってたかなと。

伊藤 ねぇ、すごく良かったですよ。面白かったですよ、うん。

タカ えぇ、その辺はちょっと楽しかったなぁという感じですね。

森Pに質問(♂)
過去のルールを無視して、エンタテイメントに徹した点は?
そうですね、あの何かあんまりそれを意識し過ぎちゃうと変なもんなんですけどね。あの何ていうか、まぁ座頭市そのものが、一番大きな実は縛りであったわけですね。で考えてみれば、何ていうのかな?あの監督もよく取材等で答えてますけど、あのいわゆる時代劇って、つまり時代劇のリアリティって言葉って、端から矛盾しちゃうところってあるじゃないですか、つまりその、おそらくカツラを被ることも全部含めてなんですけども、現代劇だと何か、もちろんビルが本物であったりってことはあるけれども、基本的には全部作り物であるっていうのが時代劇の一つの形だとすればね、あの一番何か、その全部作り物でも結局成立しちゃうって中で、実は今回座頭市という枠組みだけが決まり事みたいな。だからさっき殺陣の話も出たんですけども、例えば『スターウォーズ』だって、あれだけその円盤が飛んだりするんであれば、何もあそこでチャンバラしなくたっていい(笑)わけですよね。ダースベーダー相手にね。でもチャンバラしちゃうみたいな、こう。まぁそれが娯楽だといえば、つまりその、もちろん今回エンタテイメントってことを意識せざるをえなかったというのは、その座頭市という素材があったからなんですけど。だから何か北野映画ファンから見て、そのどう思われてるかってのが、実は今回、我々すごく心配事でもあったんですけども。でも一つの映画の作品として見れば、あのそういう、何か決め事が一番、こう何か破れた上で、破っても良いというか、一番映えた形が出来たっていう。もうそれは、だから座頭市がもう、ご存知のっつうか、あの頭で登場した時点でもう全部OKになっちゃうっていうような。すると確かにおっしゃる通り、何かチャレンジしちゃったのかな?っていう感じは一番あったかもしれないですね。で、むしろだから前作の『Dolls』みたいな作品ていうのが、一見その文楽だとか、一つの現代劇になるような、ああいうものを置こうとすると、逆に言うとすごい堅苦しくて、なかなかその理解されないみたいな理屈が出て来るんだけど、今回の『座頭市』は理屈を持ち込む余地がないような、つまりもうあの金髪で現れたらOKじゃないかっていうようなところが、全部OKになるっていう意味が多いと思うんです。だから結果としてチャレンジ出来てたのかなとは思います。ただ何かそれを必要以上に意識して、今回やってはいないですよね。だから結果としてのチャレンジっていう意味では一番、ひょっとすると北野作品の中では、何ていうかこう色んなものを破壊したかなって気はしますけどもね、はい。

森Pに質問(♀)
座頭市もタップに参加することは考えなかったのか?
踊る座頭市ですか?やっぱりまずいっていうか、やっぱりあの座頭市が踊るっていう話はなかったですね。もちろんビートたけしさん本人はタップ大好きですし、今回お願いしたストライプスっていう、オフロードタップで踊ってらっしゃる3人っていうのは、もう一人ですね、パーカッションでいらっしゃるんですけども、あの中のhide-bohさんっていう方、これ今実際にたけしさんのタップの師匠ですから、タップを教えていただいてるんですけどもね。でタップを入れるっていう話は元々あったんですけれど、座頭市があれを踊ってしまうというのは、やっぱり何か別、っていうのはね、あのマズイんじゃないかな?っていうのは、やっぱりあの最終的に何ていうか、あの大工さんだったり、お百姓さんであったりというのが、最終的にその解き放たれた感じで、こう何かええじゃないか!と同じような感じでこう踊って行くっていう。そこに座頭市入れてしまうっていうのは、やっぱり血の匂いしちゃうんですよね。そんなに開放的に喜んでいいのか?って。つまりあの人は、何ていうのかな?あの人を殺すことを快感としてるわけじゃないでしょうけれども、やっぱりキレちゃえば何かやってしまう恐ろしさを持った人ですよね。で決して座頭市も、さっきの浪人の服部の話じゃないですけども、ともすれば、世の為人の為にやってる感じじゃないですよね、あのたけしさんの座頭市って。もう一種何かターミネーターみたいなとこありますでしょ?登場して、こう

伊藤 そうですよね。

で、これは監督もよくインタビューで言ってますけど、何も賭場であれやったからといって、皆殺しにすることはないと(笑)。色々考えると、けっこう無茶なんですよ。で、あの人が通りかかんなきゃ街は平和だったって、監督自身がそう言ってるくらいですからね。

伊藤 あぁ!確かにそうですよね。正義の味方じゃないですよね。

だからあんな関わり損な人はいないわけで、ついついあの人を引き止めちゃったために、何かあのとんでもないことが起きて行くわけですよね。やっぱり、片やそのお笑いパートじゃないけれども、最後は新吉とかああいう人達が一緒になって踊るっていう意味じゃ、皆さん何となくそのほっとしたり、楽しいっていうイメージがあるんですけども、あそこにさっきこう、さんざん殺った...だから最後転んじゃえば、あれはいいと思うんですけど、『やっぱり見えねぇもんは見えねぇんだよ』ってとこで、やっぱりどこかまた離れて行く、その寂しさとか孤独っていうのがないとですね、あそこに参加しちゃうともう社会復帰、逆に出来ないんじゃないかという(笑)、たぶんそんな感じですね。だから踊る座頭市はやっぱまずいなっていうことですよね。

伊藤 そうですか。
ちなみに、踊る新吉さん

タカ ハイ!

伊藤 はい、あそこの撮影現場で一緒にタップ踊ってましたけれども、あのときの何かこうエピソードとか、演出とかどんな感じだったんですか?

タカ いや、あの正直言って、監督が今回時代劇でタップやるって言ったときに、またァ!何考えてんだろう?この人はって、流石に思ったんですけどもね。えぇそれは30年、40年前のねぇ、橋幸夫さんが街道筋で通りかかったところをねぇ、花笠を持った女の人達がついて来る、踊りながらっていう時代劇であれば、それもアリかな?って思ったんですけども、いくら何でも『座頭市』でタップはと思ったんですけども、監督がやる!って言うんならしょうがないですからね、えぇ。で、あのキャストの方、ほんの何人か、大楠さんとかですね、あとはたけし軍団のそのさっき言った若い人達とかでやったんですけども、僕とか枝豆はたけしさんと一緒にストライプスの先生方に習っているんで、まぁこんなこと言っちゃなんですけども、簡単にこなしてしまった?(笑)ということでございまして、まぁ周りの人はついて来れなくて可哀相かな?と思いながらもね、えぇ。でも実際にあの御殿場の神社で、あのシーン撮ったんですけども、スクリーンで見るもう何倍もの迫力があって、えぇ、これは本当にこう自分でやってて鳥肌立つくらいすごいシーンだったんですよ。

伊藤 ふぅん。

でも、タカさん呼吸困難に陥ってませんでした?

タカ そうですね(笑)

伊藤 どうしたんですか?

タカ いや、すいません、年齢的にちょっとみんなについて行けなくてね(笑)、えぇ。酸素が足りなくなってしまったんですね。

伊藤 何だァ(笑)

タカ えぇ。あの実際に空気の振動伝わって来る、あの空間の中で、あの照明で、あのセットで、あの衣裳で、ライブで見ると強烈なんですよね。それをどういうふうに映像化してまとめるのかな?っていう心配はあったんけども、流石に、もう皆さんねご覧になっていただいて、あのシーンは十分楽しめると思うんですけども、北野監督はやっぱり、編集を含めて、カットも素晴らしいなと思いましたね、えぇ。

タカさんに質問(♀)
タカさんから見て、北野監督がお笑いにこだわったシーンは?
タカ えーっと、私から見て、で言わせていただくと、あの石の灯篭を切ってしまうという、一瞬ですがえっ!?っていう瞬間があったんじゃないかなぁと思うんですけども、監督があれをですね、うーん、やり過ぎだよなぁ...いいか、切っちゃおうか...でも石だもんな、こんな細いもんで切れるわけない...いいやなぁっていうような感じでですね、まぁあれをアリにしてしまったというところが僕の中では、あ、もうここ飛び越えたら、監督あともう恐いもんないだろうなという気がしましたね、えぇ。そっからもう、大体あの目が見えない人がですね、いきなり後から来て、刀で閂を開けるっていうところもね、えぇ(笑)。冷静に考えれば、ちょっと?なところもあったんですけども、そっからはもう一騎加勢に畳み掛けてですね、切り落とした...切り落としたわけじゃないですけどね、刀を投げた、小柄が刺さって、手が思わず筋肉を動かしてしまって、引き金を引いて、外に立ってる奴に弾が当たってしまってねぇ、あの辺はもう、あそこのシーン辺りにですね、凝縮してエンタテイメント性を入れ込んで行ったのかなという感じがしますね。

伊藤 ふぅん。

タカ だから、あそこを監督が一番どの辺までやって良いか悩んだんじゃないかなと、僕の中では思っていますけども。

浅野さんに質問(♀)
北野監督の演技指導は?
浅野 特にその細かいことはなかったと思うんですけども、まぁ現場でその都度、その都度ちょっとした指導はありまして、あのよく憶えているのがですね、最初の方に僕が、後ろにこう妻が見ている前で、こう人を斬って、すぅっと立つところがあるんですけれど、そのときに、すぅっと立ってくれればいいからって言われて。で、斬った後ってどうしても脚がちょっと開いてしまうんですよね。すぅっと立つってことは、こう脚をスーってこう戻していいのかな?(笑)って、僕スーっと戻しちゃったんですよね、テストのときに。そうしたら、両方脚は開いたままでいいって言われて、あ、なるほど!と思って。そういう本当にちょっとしたことなんですけど、ハイ、あったりしました。

伊藤 あの浅野さんって、その前に『御法度』で北野さんとね、ビートたけしさんとご一緒してて、今回北野武監督っていうので、メガホン持ってる図を見たわけなんですけども、北野武監督はどんな方でした?

浅野 そうですね、もう本当にやっぱり、その作ろうとしている作品に対して、何ですかね、こう強い意志を持って挑んでらっしゃるんだなぁと思いまして、それでこの間も監督が話してるのを聞いてて思ったんですけど、やっぱり現場で起ってることをよーく見てるんだなぁと思いまして。えぇ、それでいてまぁ、だからといって堅い雰囲気は全然ないんで、本当にもう監督の人柄で、みんながもう信用してついて行ってるんだなぁという感じがありましたね、はい。

タカ 監督の演技指導っておかしいよね?

浅野 (笑)いやぁ、面白いと思いますけど、ハイ。

タカ 長嶋監督にちょっと似てるとこがある。

浅野 (笑)

タカ いや、すーっと立てって言われたって、わかんないでしょう?こうして、こうして、こういう形でこう動いて、こう立って、こんな表情してくれればいいかなって言わずに、それをすーっと立ってって言うから。で、こっちからバーンと来て、わーって行けよって言われても、我々はそれで良いのかな?って思って、まぁ自分の中でね、勝手に解釈して、えぇ、バーッと来て、わーっと行っちゃうんですけども。それで意外とOKになるんだけど、あれはやっぱ困るでしょう?ああいう演出のされ方してもね。

浅野 (笑)あぁ、新鮮でしたね。

タカ もうちょっとどうにかね。

浅野 (笑)

でもね、あの監督が浅野さんのことをおっしゃってましたけど、監督がよく言うことで、芝居しないでくれって役者さんに言うんですね。芝居するなって。役者さんに芝居するなっていうのはどういうことかってのは、まぁいろいろ解釈があると思うんですけど、浅野さんのことをすごく言ってたのは、浅野君に芝居をするなって言うとねって、彼がすごいのは芝居をしない芝居をするんだよ、芝居をしてない芝居をするんだよって、それが出来てしまう。で普通に芝居するなって言ったら、本当に芝居しないんだよね、違う役者は。まぁそれでもいいんだけど、ヘタな役者が何かヘタな芝居をするよりかは数倍良いんだけれど、やっぱり浅野君のすごさは、芝居をしないでねと言ったら、芝居をしない芝居をするんだよって、それがもう、一つ上回ったところにある人だから、だからすごい役者だという。何か自分達で誉めあってるんじゃないですけど、そういう表現ですからね。あの長嶋さん的と言えば、非常にわからないかもしれない(笑)

タカ ちょっと買いかぶり過ぎですかね。

森Pに質問(♀)
差別表現として問題になりそうな言葉についての見解
あの確かに時代劇冥利と言いますかね、設定上、現代使うことが必ずしも好ましくない言葉というのは、まぁはっきりわからない言葉にしてもしょうがないんで言いますけども、例えばテレビでは使えない言葉で言うと、『盲』ですね、それから場合によっては非常に扱いが難しいと言われている『按摩』、えぇまぁ一番すごいのは『どめくら』ってすごい、まんま差別用語と言われる言葉はあるし、そういう意味での、逆に難しさはありましたよね。ただこれを、じゃ言い換えたらどうなるかっていう問題があるんですけど、えー目の不自由な方って話もですね、それから按摩さんをマッサージ師と言うわけにも行かないので。で、正直言って、まぁそういう難しさもあるんですけど、ただこれ、まぁ何でしょう、こじつけて言うわけじゃないんですけれど、時代劇がそこを寛大にしてくれないと何も作れないってのはあると思うんですね。ですから少なくとも、まぁ今はないにしてもですね、士農工商といった身分制度があった時代の昔の話で、身分としての百姓と言われた時代があったり、それから具体的にやっぱりそのことが通常使われてしまっていた時代、その今言った盲ですとか、そういった言葉ってのは、やっぱそのままあったと。で、それを言い換えることによって出て来る、むしろそっちが差別観かなっていう気持ちも非常にするわけで。まぁ一時、これをね実際テレビ放映するときは、じゃあそのまま流せるんですか?と言われちゃうと、これはもうわからないんだけど、むしろもうこれは、何でしょうね、それを扱っていただく方の判断によってしか、もう解決できないと思うんですよね。これを我々が妙に何か言い換えたりすることで、それを意識してるぞということを言った瞬間に、実は座頭市って全く成立しない。目が見えない按摩っていう言い方で、しかも人斬りっていう言い方もあってですね、これを何か危ない、何かこう、包んで行けば包んで行くほど、要するに扱ってはならない人になって行きますよね。だからあの、何だろう、これはもうそういう設定上の問題って、これからも色んなことあると思うんですけども、別に私達はそういったものと闘うっていう意味じゃなくて、要するにもう座頭市を扱うってのはそういうことだっていうふうに思っていただくしかない。で、なおかつその世界観ってのはたぶんさっきありえないって言いましたけれども、座頭市って大体、その目が見えなくて、何だろう、人を斬ったりとか、あの博打のシーンにしたって、あんなことはありえない。ただまぁ、でも目の見えない方が人の気持ちがわかるとかなんとか言ってる、これも別にエクスキューズっていう意味ではないんですよね。で、ただあれはスーパーマンだという意味で解釈してもらうしかないなってことも含めてですね、それ以外の言葉は注意しましたけれども、ただ何か変にそこを意識したわけではないです。結果として、これも変な話ですけれども、結果としてそういうふうになったかなと。例えば座頭市って、考えたら変ですよね?よく監督も言ってましたけど、今までだって逆にあれをお笑いのネタにしてたわけですから。

タカ そうですね、ずっとコントやってましたからね。

ずっとね。だって、あんなのは石投げちゃえばいいんだとか、長い棒でつっつきゃいいんだとか、見えないんだから。

伊藤 そうですね。

えぇ、何しようがね。そりゃ無茶だよねという。ただそう言っちゃうと、何だかよくわからない(笑)というとこからのスタートなんで、ただもうこの言葉の意味も、だからもうそこで、何か忘れていただくしかないかなって気もするんですけどね。でも、あれテレビ放送するのどうするんでしょうね?

タカ どうするんでしょうねぇ。

うん、もう私達は考えたくないですね。

タカ ちょっと。

少なくとも。

タカ えぇ、また音が入るのか、丸々そこがカットされるのか。あとあれですね、時代考証的な台詞回しみたいな部分は一切なしみたいな、わかり易く現代風の言葉でしゃべろうっていうことにはなってましたよね。

そうですね。それ以上はね何か、設定はそうなんですけど、それ以上ね『おぬし』とか一切出て来なかったのが、やっぱりそこはさらっと行きたかった。でもやっぱり、今おっしゃったような問題点がもし指摘されるとすれば、どうしてもその指摘される方もいらっしゃるかもしれませんが、ただやっぱり物語の設定上、時代劇という設定上、確かにふさわしくないという但し書きは必要になって来る場面ってのはあるかもしれないですね。

伊藤 はい、というわけで、ちょっとね深いお話し本当にどうもありがとうございました。


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更新:2003.08.24(日)
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