2010年末、浅野は米国での「Battleship」長期撮影からようやく帰国。 「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」公開から1ヶ月、年も新たな成人の日の1月10日、シネスイッチ銀座にて、監督とキャストが顔を揃えてのヒット御礼舞台挨拶が行われた。 | |
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司会: |
まずは皆様から一言ご挨拶をいただきたいと思います。 監督からよろしくお願いいたします。 |
東: |
今見ていただいた映画を監督しました東ですけど、今日はお二人の名俳優の付き添いみたいな形で来ましたのでよろしくお願いします。 寒い中、どうもありがとうございました。 |
永作: |
本当に寒い中ありがとうございました。 見ていただけて本当に嬉しいです。 こっちの方でね、鼻を真っ赤にして泣いてくださってる方がいて、私も何か、今思い出してちょっと、思い出し泣きをしてしまいました。 本当にありがとうございました。 |
浅野: |
皆さん、今日はありがとうございます。 この映画が公開されたときはちょっと仕事の関係で舞台挨拶が出来なかったんで、今日このような時間を設けていただいて、本当に嬉しく思っております。 自分の中でとても思い入れのある作品なので、本当にこういう寒い日に、遅い時間に見に来てくれた人たちがいるっていうのを嬉しく思います。 本当にありがとうございます。 |
司会: |
ありがとうございます。 まず、ちょっとご質問させていただければと思います。 まずこの作品の脚本を、監督が担当されたわけですけれど、脚本をいただいたときの感想を、浅野さんにまずお聞き出来ればと思います。 |
浅野: |
そうですね、これ何年前になるんでしょうね? |
東: |
えっとね、今から数えれば5年前。 |
浅野: |
5年位前? |
東: |
第1稿がです。 |
浅野: |
そうですね。 その最初に脚本をいただいて、読んで、まぁ本当に僕は、読んだときに、僕は父親と仕事してるんですけど、これは絶対にやりたい!と、父親に話して、何が何でもスケジュール調整して欲しいとわがままを言って。 そのときがたまたま色んな他の仕事の関係でスケジュールが上手く行かなかったんですね。 それでも何か仕事が来るたび、来るたびに、でも一番に考えて欲しいのはこの脚本なんだよねって、ずっとずっと父親と話してて。 だから誰にもやって欲しくないと思ってましたし、これはもう自分しか出来ないと思ってましたし、そのときの自分の生活とか色んなものと当てはめたときに、もう絶対これは僕が面白いものに表現出来るような自信があったので、何かそういう、本当に強いやる気にさせられる脚本でありましたね、はい。 |
司会: |
ありがとうございます。 永作さんはいかがでしたか? |
永作: |
はい、私も読ませていただいたときには、絶対にやりたいと思いました。 あの、本当に言葉が少なくて、由紀は、話す言葉が、それなのにしっかり存在している感じが、やったらどうなるんだろうなぁ?と思って、ドキドキわくわくしながら、私、うん、私がやる!と思いました、はい。 |
司会: |
監督は今のお二人のお言葉を聞いて、いかがですか? |
東: |
いや、あのね、まず浅野さんのことから言いますとね、6年前というのはちょっと間違いで、2007年の1月でしたから、それから数えて、7-10と、11で、あ!5年ですね、やっぱり。 そのときにですね、実は第1稿を書き上げる前にも、要するにこの原作を読んだときから、あ、これ浅野忠信だ!ってもう頭の中に決まっちゃってたんですね。 それで他のことは考えられないので。 それで不思議なもんで、監督というのはとても、そういうときにはちょっと思い上がった自信を持たないとですね、脚本を書けないもんですから、これ絶対浅野忠信が断って来るわけがない!と。 なぜかと言えば、これはある意味では中期の浅野忠信の代表作になるだろう、中期の。 だから絶対これを断ったら馬鹿だと思ってました。 そしたら馬鹿でなくて、その段階でOKしてくれたんですが、今日皆さんがご覧になった映画の脚本は、それから色々紆余曲折をしまして、内容的には部分的に変っております。 第6稿でクランクインして、さらに第6稿もさらにもうちょっと手を入れて、こういう完成にしたわけですけど、浅野さんとはそういうことで。 ずいぶん忙しい俳優なのに、色んな形で待っていただいて。 それから永作さんについても、またこれも話せば長いことながら、短く言いますけど、決定的な印象を持ってしまったことが、これやっぱり2006年の彼女の出演作ですけど、『好きだ、』っていう。 これはモントリオールで石井寛監督が監督賞をとった映画なんですが、日本ではそんなに大ヒットする映画じゃなくて、やっぱりマイナーなプロダクションの作品でしたけれども、その中で、少女が主人公、少女と少年が主人公ですけれども、途中からぱっと何十年も経っちゃって、大人になった男女が出て来るんですね。 その大人になった方の女性で出て来たんですが、その永作さんを見てですね、僕はちょっと呆然としたんですね。 それはあんまり美人だからってわけでもないんですよ。 美しい人と美人とは違うと思うんで。 美しい人になってるんですけれど、それに見とれたわけじゃなくてね、彼女がやってた演技がね、まるで、要するに今迄聞いて来た色んな名演技とか自然な演技とかそういうのと全然違うんですよ。 役の人がそのまま出て来てる気がして、すごいびっくりしたんです。 そのときから目をつけてた人なんですね。 だから第1稿書き上がったときには、もうそのイメージはあったんですけれども、制作側、プロダクションの色々な都合で、僕の方は色んな有為転変を経てましたんでね。 一度だけ事務所に勝手にプロダクションがスケジュールだけ聞いたりとか、そんな失礼なことしたらしいこともありまして、大変難しかったんですけれども、とどのつまりは結局、だめ元だからもう一回頼んでくれる?って言ってお願いして承諾していただいたっていう。 そういう因縁があるので、私としてはもう最初から考えた通りのキャスティングになってるということになっております。 あの、私しゃべると長くなるんで、こちらの方に。 |
司会: |
そうですね、説明させていただいて。 キャスティングの話、今少し出たんですけれども、今、公開から約1ヶ月位経ってまして、twitterなどですごく熱い感想をいただいているんですけれども。 その中で、お二人のキャスティングが本当に素晴らしいと、他の役者さんではちょっとこう当てはめて考えられないみたいな、そういった感想がとても多く寄せられているんですけれども。 お二人が今回初共演ということで、そういったことについてはいかがですか?浅野さん。 |
浅野: |
僕も、そうですね、以前『R246 STORY』という短編の映画をちょっと監督させていただいたことがありまして、そのときにユースケ・サンタマリアさんの作品で永作さんが出てらっしゃったんですね。 それで、それを見たときに、まぁやっぱりもう、今監督がおっしゃったように、もう呆然としたというか。 常に共演してみたいというふうな思いはあったんですけど、何かやっぱりこう、本当にこういう、今回のこの映画みたいな形で絶対共演してみたいと思ったんですね。 簡単な役ではなくて、きちっとずっと一緒にいるという役でやりたいと思ってたんで、もう永作さんが決まったときは間違いないと思いましたね。 僕の想像してる僕の役が、さらにもっと豊かなものになるという実感がありました、はい。 |
司会: |
永作さんはいかがですか? |
永作: |
はい、そうなんですよね、なかなかお会いすることが、共演することが出来なくて。 でもどこかで、まぁいつかきっとご一緒出来るんじゃないかなぁと想像しながら、まぁ期待をしながら。 で、こういった作品で、東陽一監督という、すごく私たち役者のフィールドをすごく広げた状態で私たちに渡してくれるような監督の下で浅野さんと出来たことがすごくありがたかったというか。 何だろう?何か本当に監督が思ってくれて、そして私たちもそれに引き寄せられて、何かそういう、で、この結果なんだろうなと、そして一緒にタッグを組めることになったんだろうなと今なら思いますね。 浅野さんもとても感覚的にやっぱりお芝居をしてくださる方で、ちょっと変えても、そのちょっとをちゃんと変化した、変化球でちゃんと返してくれるっていう。 だから、監督は何度もリハーサルをされなくて、ほぼ毎回一発本番のような形で撮らせてくれるんですが、何回やっても何回お芝居を稽古したとしても、すごくどの回も新鮮にやらせていただけたなぁと思いましたね。 |
司会: |
監督はお二人のお話を聞かれていかがですか? |
東: |
今永作さんが言われた、フィールドを、役者のフィールドを広げてくれたと言われたけれども、同じことをですねインターネットなんかの批評では批判されたことがありましたけどね。 要するに、役者に頼り過ぎてる、監督はって言うんですけど、監督が役者に頼らなくてどうするんです!? でもそれ位言われる方が良いわけですけど。 どうしても私は皆さんに一言、今日は監督の気持ちを、今日は付き添いなんですけれどね、言っておきたいと思いますのは、確かにtwitterとかですね、そういう所では、あるいは別のわりとまとまった批評ででもお二人の演技については非常に評判が良いわけで、それは当然だと私は思ってますが、ただその、皆さんがあまり言葉を選ばれないで、結局、とても自然な演技っていうふうにおっしゃっているのが、意味はわかるんですが、実は監督から言うとそうではないんですね。 つまり私が声を大にして、小さな声で言っておきますけど、このお二人のやられたことはですね、これ二人ともちょっと俳優としてはちょっとタイプが違うんです。 ちょっとタイプが違うところが、組み合わせとしてはものすごく良いわけなんですけど、二人とも共通してることは、私が完成した映画を見ても、改めて冷静に見た結果の話ですけども、要するに今までの日本映画の伝統的なアクション、様式的なアクション、それはつまらないものじゃなくて、その中に素晴らしい演技もあるんです、たくさん。 でも様式的なアクションってのはあります、日本に伝統的に。 上手く行った場合はとても上手く行くんですが、失敗したら目も当てられないってことになるわけですけども。 そういった芝居とは全く違うんですね。 じゃあ、そうかといって、一方にいわゆるその皆さんのおっしゃっておられる自然な演技っていうようなものかと、あるいは地が出てるとかいうようなことを言った人もいますけど、とんでもないそれは間違いなんです。 自然な演技なんてものは有り得ないんです。 つまりこの人たちは、今までの日本映画の俳優がスクリーンで展開したことのない、本当のリアルな演技をしてるんですよ。 リアルな演技ってのは、ただそこらの、いかにも自然なふうに振舞ってるんじゃなくて、画面からお客さんにインパクトを与えるために、地でやってたりするわけがありません。 地は出ますけれども、やってたりするんじゃないんです。 それから、自然な演技を演技してるんじゃないんです。 一生懸命すごい芝居をしてるんです、ずっと。 その芝居が皆さんに本当にリアルに伝わるかどうかってのが勝負どころなんですよね。 それがたいていの皆さん、監督の悪口を言うにしても、俳優の悪口を今迄言ったことがないのは、その功績だと思うんです。 ですから私は、全く新しい演技をこの二人は、演技って、私の場合は演技って言葉はあまり使わないで表現って言うんですけども、全く新しい表現をこの二人はされたわけですけれども、あんまり新しいことをやられちゃうとですね、ちょっとその、のけ反る人たちもいるわけですよ、今迄あまり見たことがないもんで。 つまりこれをどう評価して良いかわからない。 要するにしばらく様子を見ようというふうになってるような気がします。 で、この映画におけるこの二人の演技が本当の意味で皆さんに受け止められるようになるにはですね、あと2、3年かかるかな。 その頃はもう終わっちゃってますがね、上映がね。 それが大変残念なことなんですけども。 私が今言ったことは、絶対たぶん間違いなくて、2、3年経てば、大変なことをこの二人はやってるんだということが、改めてもう一度明らかになると思いますが、そのときはDVDが出てますから、ぜひもう一回見てください。 それが私がどうしても今日申し上げたかったことです。 |
司会: |
どうもありがとうございました。 短いお時間だったんですけども、最後にですね、今日はかわいいゲストがもう1名来てくださってますので、森くれあちゃん、前へどうぞ。 |
森: |
はい! |
東: |
あの、さっき控え室で聞いたんですけど、森くれあ君です、えっと、役名何だっけな? |
森: |
かおる! |
東: |
あ、かおるだ、ごめんね! |
森: |
(笑) |
東: |
挨拶してください。 |
森: |
はい! 森くれあの、かおる役をやって、楽しかったです。 来てくれてありがとうございました。 |
東: |
その花束は誰にくれるの? |
森: |
監督さんに。 |
東: |
これはやっぱ女優さんじゃないか? お母さんに? 監督さんにあげるの? ありがとね。 もう少しそこに立っててね。 |
司会: |
どうもありがとうございました。 監督、最後に一言お願いします。 |
東: |
それで実はですね、予定では、今、そういうものすごい演技をこの二人はしたんですよと、他の俳優さんたちもそうですけど、特に代表的な意味でこの二人がすごい芝居をしたんですよと言って、大体全部同感じゃなくても、大体同感でしたら、皆さん拍手してくださいと言うはずだったんですけど、言う前に拍手されちゃったから、まぁ良いか。 でも、この二人と、それからもう一人の俳優さんに改めてもう一度拍手をお願いします。 今日はどうも寒い中ありがとうございました。 |
司会: |
どうもありがとうございました。 |