司会:
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今日はですね、舞台挨拶のときにも監督に来ていただきまして、今日は二夜目っていうか、このシアターでやる最終日ということで、トークショーをやりたいと思いますけれども。 浅野忠信さんとはね、もうご紹介するまでもないですけど、最近の作品だと、今日も撮影を終えてからですね、来ていただいたということで、今山田洋次監督の「母べえ」っていう作品にお出になっているということで、何か特殊メイクで、かなり頭がこう剃り上げたようなメイクなんですけど、今はね、別に
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浅野:
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そうですね、もう特殊メイクなんで、普通に髪の毛はありますけども、こういった頭(ニットキャップ)やって来ました、今日は。
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司会:
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それから、その前にもう撮り上げてる作品が今秋公開で、この劇場で公開されますけど、青山真治監督の「サッド・ヴァケイション」ですか。
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浅野:
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そうですね。 「Helpless」という映画の続編なので、もし「Helpless」を見てる方はぜひ。 まぁ、見てない人は「Helpless」を見てから行ってもらえれば良いかなぁと。
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司会:
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ということで。
それでは早速なんですけれども、この「星影のワルツ」、皆さんこれからご覧になるわけなんで、あまりネタバレ的なことはナシになると思いますけども、浅野さんからまずは一言、ご覧いただいた感想でも。
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浅野:
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ハイ。 そうですね、まさに今そこで、これから見る人の前でトークショーってことは、何を話せば良いのかな?と思って。 僕はまぁ家でなんですけど見させてもらって、気になるとこがやっぱいっぱいあったので、それをぜひ聞きたいんですけど、まぁ、そういう話はマズイよってなったら、僕が話し出したら止めて欲しいんですけど。 やっぱりあの、自分も、もう亡くなりましたけれど、お祖母ちゃんが、うちの母親のお祖母ちゃんが何年か一緒に住んでいたことがあって、やっぱりすごい僕自身、お祖母ちゃんに助けてもらってたことがあったんですよ。 それでやっぱその関係をすごい思い出して、何かこんなふうにやっぱり自分の家族の話を映画として撮れるって素敵だなぁと思って、すごい集中して見れましたね、はい。
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司会:
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今のところどうなんでしょ?まぁ琢次さんみたいにね、ご存知の通り、20年、若木さんが写真家として撮り続けられた実在の、まぁ今はお亡くなりになられた方で、それを喜味こいしさんという役者さんを使って撮られてるわけですけれども
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若木:
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そうですね。
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浅野:
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もうこれ聞いちゃって良いですか? まずだから、今そこでも話してたんですけど、お祖父ちゃんに助けられたことはあるのかな?っていう。 その僕は父親と仕事をして来て、その役者、父親とやっぱ仕事してるから、どうしても嫌なときとかあるんですね。 それで、やりたくない!バンドもやってるから、バンドやりたい!って。 それでそういうときに理解者がまったくいないような気がして。 で、お祖母ちゃんがあるときやっぱり「何をやっていても、好きなことは出来るから、役者も続けてごらんなさい。」って言われたときに、初めて続けようと思ったんです。 そういう、だから信吾君の中でも、お祖父ちゃんの中で、今カメラマンとして何かやって行く上で、支えてもらってたことっていうのはあるのかな?
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若木:
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まぁ何かその、一番最初かな?何か展覧会、パルコでやったときに、うち全員東京に見に来たんですね、でまぁお祖父ちゃん見てくれて、盛り上がって、感想はそんなになかったんだけれど、最後はホテルで泊まってたから、会って、仲良かった連中なんかと話してたら、お祖父ちゃんが「人生大波小波だぞ」とか言って。 何いきなり言ってんだよ!とか思ってね。 今はね、こんな小波でね、船に乗ってねゆらゆらして喜んでるかもしれないけどね、そのうち大波が来るからね、それをとりあえず乗り切らないと次の小波は来ないよみたいな話をいきなりしてね、盛り上がってる最中に
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浅野:
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だからその、男同士じゃないですか、やっぱ、それが俺にはちょっとわからない、ってのは、うちの母方のお父さんはもうアメリカに帰っちゃってまったく会ったことないし、それで父方のお祖父ちゃんは鹿島に住んでたから、やっぱりその鹿島のお祖父さんに会ってるときは、やっぱり厳しい、たまにそういう言葉が出てくる。「お前、よくやった!」とか、「あれはまずいぞ」みたいなことを言う。 その関係は、今聞いててやっぱ、そうだよなっていう。 お祖母ちゃんじゃない関係性なんだな。
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若木:
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お祖母ちゃんはたまたま俺がすごい小さい頃亡くなってて、おじいちゃん、ずっと一人で、3歳くらいのときに亡くなったから、ずっと一人なんですよ。 で、一番最初にエロ本をみつけたのがお祖父ちゃんの部屋で、俺が小学校のときに。 それから何か物置とか色んな所にみつけるようになって。 でもう70歳くらいだったから、なんか良くわかんないんだけど
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浅野:
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でも現役で読んでたってこと?
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若木:
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現役で読んでた。
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浅野:
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すごいなぁ、やっぱりお祖父ちゃんは。 それだから明らかにお父さんとはない関係がお祖父ちゃんの間にはあったんじゃない。
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若木:
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やっぱり何か直接だとね、反抗期のときとか、何か喧嘩とかしたときにお祖父ちゃんの部屋に逃げるってのは何回か。
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浅野:
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あ、全く一緒です、それ俺。 俺もうちの兄ちゃんと喧嘩して、「お前出てけ!」って言われると、とりあえずお祖母ちゃんの部屋に行ってて、助けてもらってたから。 あぁ、そうなんだ。 まったく話しが変わっちゃうんですけど、気になったのはエイちゃんとヒロちゃん、まぁそれを見てない人には申し訳ないんですけど、登場して来る人がいて、あの人たちは本当の信吾君の幼馴染?
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若木:
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そうなんです、幼馴染で、本当に家が隣で、その家も実は映画に出て来るんですけど。 子供の頃の写真とかあったりとか、おもちゃの車とか乗ってたりとかいっぱい、ずっとその頃から一緒で
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浅野:
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それはまぁ、ここで言って良いのかわからないんですけど、その方たちはちょっと障害を持たれてるような感じで、それでそういう人たちとやっぱり小さい頃から関係があって、あんなふうに過ごしてるってのが、やっぱり僕、すごい素敵だと思ったのと、だからか!っていう、何かやっぱり信吾君って、独特な何かこうコミュニケーションがとれるっていうか、そういう瞬間があるから、こういうことだったんだなってのが、すごい自分の中で納得したっていうか。 彼等も、じゃあやっぱり信吾君のこと相変わらず好きで?
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若木:
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まぁしょっちゅうっていうか、大体2ヶ月に一遍くらい帰ってて、映画に出てくれって言ったりとか。
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浅野:
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へぇー。
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若木:
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メールとかも割りとしょっちゅうしてて。 もう何か会社、仕事の合間とかに。
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浅野:
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うん。
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若木:
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メールとかが微妙に打てないんですよ。 で、勝手に変換で選んでるから、全部ローマ字で来たりとか、変わった漢字で来るんだけど、何か、今日たまたま来たんだけど、昨日何か、三日にまたここのライズXでトークショーで来てくれるんですね。
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浅野:
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へぇ!それはぜひ。
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若木:
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東京初めてくらい、初めてなんだけど、何か「しんごCHANNO..」、ちゃんのだけローマ字なんだけど。
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浅野:
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(笑)
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若木:
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「愛車の里あwせdr」って何だかわかんなくて、何これ?愛車が何だって?ってメール打ったんですよ。 そしたら、「いや、ただのりてぇだけだよ」みたいなのが平仮名で。 乗りてぇってのが「の里あwせdr」
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浅野:
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なるほど、”故里”の”里”が”り”になって。
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若木:
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全然わかんなかったですね。
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浅野:
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すごいですね、それは。
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若木:
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まぁそういう、けっこうアバウトなところがあって
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浅野:
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面白いですね、それ。
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若木:
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車好きなんですけど。
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浅野:
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じゃあ、映画に出てくれっていう話しをしたときは、どうやって言ってたんですか?
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若木:
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まぁ、「映画今度やるんだけど出てくれないかな?」って。 そしたらね、そのビデオもね、実は撮って、僕がしゃべってたんですけど、それはまたいつかまた。 「まぁいいよ」みたいな感じで
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浅野:
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へぇ。
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若木:
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「じゃあ、会社の人に言わなきゃな」みたいな 「休みはどっからどこまで取ればいい?」とか、勝手に進んじゃったりして。
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浅野:
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すごい、具体的に。 いや、面白いですね。
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若木:
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何かね、面白いと思うのは、普通の仕事をっていうか、俺は東京に来てるから、色んな人と会ったり、仕事だったりしてるけど、向こうはそのまま小学校、幼稚園の子供のままでいるから、記憶が普通に小学生の話するんで
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浅野:
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あぁ
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若木:
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「しんごちゃん、小学校の帰りのあのときのこと覚えてるか?」とかって。 かなり前なんだけど(^^;って。 そういうとき、昨日の話のようにしてるから。
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浅野:
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へぇ。
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司会:
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でもすごいね、純粋なお二人ですね。
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浅野:
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うらやましいですね。 それで、脚本を書くときに、元々その二人も出てもらおうっていうことが
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若木:
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そうなんですね、一応脚本では会話を作って、こう言ったらこう言うみたいなことを書いてあったんだけど、まったく、やっぱりこりゃ出来ないだろうってことで、全部削除して、現場で照らし合わせて、今日はじゃこんなことやろうみたいに言っておいて。
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浅野:
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あぁ。
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若木:
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本人達は映画ってのはわかってるんだけれど
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浅野:
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リアクションはいたって
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若木:
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「そこに隠れてる人がさぁ」って、カメラ回してる人指差して、「ちょっとそこのマイクが出てる人いるじゃん」とか言って
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浅野:
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言っちゃう?
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若木:
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そうそうそう。
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浅野:
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最高だな、それ。 後は何か、カメラマンとして普段やってるじゃないですか、それで何かそういう自分で、カメラマンとしてもやりたいことっていうのがあったのかな?っていうのが気になってて。 もちろん監督もやらなきゃいけないし、脚本も書かなきゃいけないとか、その中でこれはぜひやりたいってのは映画の中であったのかなっていう。
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若木:
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何かでもわりとこうコンテは描く必要なくて、監督とカメラが一緒だから、カメラマンには説明する必要はないけど、だからスタッフの人はわかんないって(笑)。 とりあえずこういうシーンっていうことを言われてても、最後の方の砂浜のシーンとかっていうと、コンテはないんだけど、台本だけ読むと、「じゃあこれ1時間くらいの映画だね」とかって言われるんですけど、実際俺の中では、もうちょっとあるけどなぁって。 声とか言葉のないものが自分の中ではあるから、そういうところをけっこう、ビジュアル中心の演出がけっこうあって。
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浅野:
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何か、見てて、こういう手段じゃないとこういうことは出来ないんだろうなっていうのももちろんあったんだけど、やっぱりもし次があるんであれば、色んな技術の面というかスタッフの面でも、もっともっと突っ込んだ作品を見たいなっていうのが。
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若木:
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やぁ、やっぱそうですねぇ
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浅野:
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(笑)
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若木:
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今回はまぁビデオで、かなり高性能だから、16ミリくらいので。 まぁでもやっぱフィルムでやってもいいな。 けっこう大変そうだけどね。 今回のスタッフってのは7人だけで作ってるから
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浅野:
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あぁ、俺何かで読んだ。
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若木:
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何もみんな言わないし、ただ楽しくやっててねみたいな、映画作りのやつらが
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浅野:
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うるさい奴等が。
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司会:
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何かもっと、まぁ今回の映画は、これからご覧になるんであまり言いませんけども、さっきの幼馴染の二人、何かあの人達に見とれて、あれ?これ若木さんのドキュメンタリーそのものかな?みたいな感じで、フラフラと映画の中に迷い込むじゃないですか、出てくるときは、あれ?ドラマだったっていう。
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浅野:
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あの主人公の、要するにあれが信吾君なんですよね。 その主人公の人とエイちゃんたちのやりとりも、あれ?幼馴染って書いてあるけど、信吾君の幼馴染の人が、この人も幼馴染の人かな?ってたまに間違える瞬間もすごいあって、いや、でも違うよなっていう、不思議な瞬間がやっぱありますよね。
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司会:
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ですよね。 それはすごいリアリティがあるし、何か本当の感情が流れて来るという感じですね、自然だというか。 あの今日はお二人が一緒になるということで、何か自然さみたいなものを、浅野さんの演技もすごい、何ていうか力瘤の演技じゃなくて、飄々とすごい自然な感じがするじゃないですか。 それは何か意図してるとか思ってることはあるんでしょうか?演じる者として。
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浅野:
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最初の頃に、さっき言ったように、父親と仕事してるもんですから、反発の塊というか、それで映画とか撮ったときにやっぱり高校生のガキにはやっぱりちょっと辛い現場だったんですね。 それでまぁ二度とやりたくないんですけど、二度とやりたくないことでも続けなきゃいけないっていう、何か変な決まりがあったんですよ、その父との関係とかで。 そうするとやっぱり嫌いなことをやるからには絶対かっこよくなきゃいけないと思うじゃないですか、それでやっぱどうすればいいのかな?と思ったときに、オーディションとかに行くと、同じような年齢の俳優を目指してる子たちが、どこで覚えたのか、よくわからない芝居を始めるわけですね、そりゃねぇだろ!っていう。 いきなり、例えばオーディション会場に昔の友達がいたんで、「あ、久しぶり!」って言って、「今日のオーディション、こうだよね」とか話してて、じゃ実際に台本上に久しぶりに会った友達との会話があるとするじゃないですか、さっきと同じことやればいいのにと思うじゃないですか、でもいきなり「おぉっ!久しぶりぃっ!」って始まっちゃうわけですよね。 そりゃないと思って。 俺はこいつらと絶対に同じになりたくないと思って、僕なりにけっこう研究して導いた結果だと思いますね。
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司会:
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そしたらもうあれですね、この前のトークショーでね、一本撮り終えて難産だったけれども、喉元過ぎればまた次を、熱さを忘れて次の映画をっていうふうにおっしゃってたと思うんで、一つ浅野さんを主演で劇映画を、いかがでしょうかね?
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若木:
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それは自分の話じゃなくてね、もし次だとしたらやっぱりこう、ちゃんとやりたいと、お願いします。
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司会:
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今日は監督第一作ということでね、やっぱり処女作の中には、もうその処女作にしかない魅力っていうものが詰まっていると思うし、本当に僕も最初に見せてもらって、思わず、あれ?どこに行くのかな?と思い、最後に不覚にも泣いてしまいましたんで、本当にそういう感情が流れている映画なので、お楽しみいただきたいと思っています。 今日は本当にありがとうございました。
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