TA070820

「サッド・ヴァケイション」プレミア@名古屋

[もどる]

猛暑の8月20日、名古屋、大阪、福岡での「サッド・ヴァケイション」プレミアキャラバンが始まった。 第一夜は名古屋、伏見ミリオン座にて舞台挨拶が行われた。

ご出席(敬称略)
青山真治監督
浅野忠信(白石健次)
松岡ひとみ(司会:映画評論家)

浅野さんのいでたち
  • 脇を刈り上げた短い髪/うっすら髭
  • JD音楽VネックT(サンプラー/オレンジ)
  • JDスイングトップ(カーキ)
  • JDハーフパンツ(カーキ)
  • 黒の編み上げブーツ

<上映前の舞台挨拶より>

司会: 暑い暑い名古屋にお越しいただきましてありがとうございます。

浅野: ありがとうございます。

司会: それでは監督からご挨拶を。

青山: 監督の青山でございます。 この度「サッド・ヴァケイション」という映画を作ってやって参りました。 名古屋はこの間、また別の作品を、こういった舞台挨拶で、これで二度目ですが、本当にあの、ね、二度目です、すいませんですね。 しかし、しかしというか、映画は人生の中で最も力を込めて作った映画なんで、どうかよろしくお楽しみいただければ幸いです。よろしくお願いします。

司会: どうもありがとうございます。
では浅野さん、お願いします。

浅野:  皆さん、今日はどうもありがとうございます。 名古屋でこうして舞台挨拶をするのは本当に久しぶりです。 ただ名古屋というところは、僕のお祖母ちゃんのお墓がありまして、本当に小さな頃からお墓参りに来ていました。 ですから自分にとっては非常に特別な街なんで、何か居心地が良い場所だなと思います。 本当に今日はどうぞ楽しんでください。

司会: どうもありがとうございます。 ということは、浅野さんは名古屋人のDNAをお持ちで?

浅野: うちの父親が生まれたのが愛知県と言ってたんで、はい。

司会: そうですか。 何か印象に残っているものとかありますか? 食べ物とか。

浅野: 食べ物というより、そこのお寺のお婆ちゃんがいて、その人が、これ名古屋弁じゃないかもしれないんですけど、決まって「上がってってちょーよ」って言うんです。

司会: 名古屋の人ですね。

浅野: それをやっぱり小さい頃から、何かそれが聞きたいんですよね。 行くと絶対に「上がってってちょーよ、上がってってちょーよ」って言うのが。 それがやっぱり嬉しいんですよね、聞けると。

司会: あぁ、そうですか。 たっぷり名古屋を楽しんでってちょーよ。

浅野: ハイ。

司会: 監督は、名古屋はどんなところなんですかね?

青山: 名古屋の夜は...いやいや、今日、間もなく電池切れるんで。

司会: あぁ、そうですか。

青山: これが終わると、パターンと倒れるんで。

司会: 切れないでくださいね。

青山: 大丈夫です、はい、はい。

司会: それではベネチア国際映画祭とトロント出品ということで、おめでとうございます!

青山/浅野: ありがとうございます。

司会: 監督は、まずはベネチアからということなんですが、もうこの豪華な皆さんで行かれるわけですね?

青山: はい、何と総勢じゅう?...人ですか

司会: すごいですね。

浅野: あ!そうなんですか。

青山: いや、何かみんな行きたいんだって、行きたいって言ったのかわからないんですけどね、行くんですよ。 でも暑いんですよ、すごく。 今日の名古屋の夜よりも暑い。 ムシッとしてますね、ええ。

司会: でも会場もきっとまたムンムン気分で

青山: そうですね。

司会: よーいらしたよぉって、あれ、違いましたっけ? 良く来てくださったってことでね、迎えられるんじゃないでしょうか。

青山: ハヤシもあるでよってのは?

司会: そう、良くご存知ですね。

青山: どうでもいいですね。

司会: ねぇ、名古屋とかそんなに知っていただいたっていうか。
さぁ、これから映画を皆さんにご覧いただくんで、あまり中身のことはお話は出来ないんですけれども、監督にまずお話を伺って行きたいと思いますが、前作「Helpless」の十数年後の物語と言われておりますけれども、この映画「サッド・ヴァケイション」は最初からもう、その続きだということで設定をなさっていらっしゃるんですか?

青山: そうですね、続きっていうのは間違いないですね。 ただ、今回の映画もそうなんですけれど、僕、ある映画を見て、あるいは自分で作った場合に、それに出てくる人に対する愛情が濃ければ濃いほど、その後彼等はどうなったのかってことを気になって気になってしょうがないんですね。 特に「Helpless」ってのは、僕が一番最初に作ったんですね。 最初のオリジナルで、脚本で作った、しかも自分の故郷で作った映画だったんで、その思い入れたるや大変なものがありまして、いつかこの人たちがっていうのが頭にずっとあったんですね。 それが途中で一遍「ユリイカ」という作品を作って、そこで秋彦という人が、「Helpless」にも登場する、「サッド・ヴァケイション」にも登場する男が出て来るんですけど、その「ユリイカ」をですね、カンヌ映画祭で上映したときに、やはり日本から出品していた「御法度」という映画に出ていた浅野君がですね、上映終了後に僕を呼び止めて、「健次はどうするんですか?どうなるんですか?」という脅しをかけて来たんですね。 そしたら、次はもうこれしかないわけです。 これをやるために頑張って来たんで、7年間費やしましたね。

司会:  そうですか。 じゃ浅野さんは最初の青山監督の作品にも出られて、健次という役をやられました、で、気になってたんですね?

浅野: そうですね、「Helpless」の後は、何となくまた色んな映画に出させていただいていたんですよ、それでたまたまカンヌで「ユリイカ」という作品を見たときに、それで見たらこうあまりにも良い映画で、それでそこには自分がやった健次の同級生の男が出てるわけですけど、そうしたら何で健次がいないんだ!?っていう気持ちになっちゃって

司会: 俺がいないんだ!?

浅野: はい。 それでやっぱり、僕は人殺しとか屈折した男を演じて来たものですから、その凄みで脅したわけですね。 何で出てないんですか!?と。 そんなことしてるならフライパンで叩きのめしますよって。

司会: でも、それほどやっぱり健次という役というのは思い入れが深かったんでしょうかね?

浅野: そうですね、それと同時に、やっぱり監督の作る作品が、あまりにも自分が好きなので、何かやっぱ「ユリイカ」見たときに、そのときの自分の、映画とか見て来て、そこの物語の流れている何かがやっぱり、あまりにも自分の中でマッチしたんですね。 そんなふうにやっぱり、特に映画見てる人はわかると思うんですけど、宮崎将君が役所さんにこう、あまりにも悪いことしてるのを説得されちゃうんですけど、そんなふうに、何かこう説得されたいっていう、自分がどうしたらいいのかわからない瞬間っていうのが、誰かに止めて欲しいっていうような気持ちがあって、それでちょっとびっくりしたんです。

司会: この10年間の間に浅野さんも、もちろん皆さん成長されて、色んな作品にも出られて、その人生経験というのは、今回の役に反映されていますか?

浅野: そうですね、それはもう思いっきり、はい、反映されて。 結局やっぱり色んな役をやって、それで溜まるものもあるんですね。 自分ではこうしたいけど、それは出来ないとか、こうしておけば良かったという部分みたいな。 そういう溜まったものも全部この映画では出させてもらったというか。 自分で本当に出して、確認して、それでこういうものなんだっていうのは全部やらしてもらってるんですけどね。

司会: 監督は、今までの作品について、これから皆さんにご覧いただくんで、あまり言えないんですけど、ちょっと違うなと。 非常に柔らかい感じがしてね、これはどうしてでしょうかね?

青山: というよりも、もちろんそれもあるんですが、僕が、そもそも僕の中にそういうのがあったんですね。 なかなか正直に、素直になれなかったっていうんですかね。 あまり、映画作るときについ構えてしまうようなところがあって、あまりそうやって大らかに振舞えなかったというところがあったんですけど、何かね、いよいよこれやるんだっていうときに、浅野君に「監督、映画作るってすごい簡単ですね。」っていうふうに言われて、おぉっ!と思って、な、何を言い出すんだ!?と思って。 思いながら、もちろんこっちはもう必死に何かやるからには一生懸命やってやろうと思ってるのに、映画作るの簡単ですよってさらっと言われて、要するに「ね(^-^)」っていう確認ですから、は、はぁ(^^;って感じで、確認取らされたっていうね。 でも考えてみたら、何か浅野君の言ってることもすごくわかって、何かすごく今まで肩に力入ってやってたけど、めちゃくちゃリラックスしてやってやろうと、すごいそういうふうに思って、やったのが良かったんだと思うんですね。 何か笑いとかなんとかっていうものまで含めて、何か自分が、北九州なら北九州っていう場所に感じているもの、あるいは普段生きて来て、そのままでも良いんですけど、そういったものの中で気取らないで生きているっていう、そういう時間っていうものを映画の中で作り出すっていう、それが出来れば良いなと。 だから映画のテーマを超えてね、そういうふうな我々の気取らない時間みたいなのを作り出すことに、何か浅野君の一言で向かい合うことが出来たし、成功することが出来た、そんな感じですね。

司会: 浅野さんの一言と、そして健次はどうなったんだということがきっかけになったということですが、ご自身でこの映画をご覧になって、いかがでしたか?

浅野: それはやっぱりその、あまりにも健次という役がすごくやりたかったんで、それをもう11年間、「Helpless」とか「ユリイカ」を見てきた自分の中で、すごくやっぱり、ちょっと違うようなところがあって、最初はちょっとびっくりしちゃったんで、えっ!という、本当に違かったんで。 そういう本当にショックなものを、3本、「エリエリ・レマ・サバクタニ」という作品と、3本一緒にやって来た監督だから理解してくれたということで、やっぱりあまりにも嬉しくて、はい。

司会: 今回はすごいキャストが揃ったんですけど

浅野: いやぁ、本当に面白い方ばっかりで、もちろん僕の母親役の石田えりさんとか宮崎あおいさんも大事ですけど、オダギリジョー君とかにも救われたところがあって、本当に何ですかね、魅力的な方なんですね。 現場だとやっぱり本当に忙しい人なんで、疲れてるんですね。 疲れてる?、どう?って言ったら「疲れました」って言ってて、それが妙に何かほっと出来たんですね、ええ。

司会: 代わりに言ってくれたみたいな。

浅野: ええ。

司会: オダギリさんは浅野さんのことすごく好きみたいですね。

浅野: あぁ、そうですか? マズイですね、「御法度」みたいになったら。

司会: アブナイ、アブナイとか言ってますけどね。 監督は、浅野さんはもちろんなんですけど、宮崎さんと、特に石田えりさんとは何か? 今回母親役に選んだ理由みたいなものは?

青山: いやぁ、僕の一番最初に感じたのは、健次がまだ5歳のときにその母親が出て行ったっていう、出て行くところを想像したときがあったんですね、それは映画の中では描いてないんですけど。 そのときの健次が布団の中にいて、「健次、一緒に行こう。」って母親が言ってて、健次が布団の中で寝た振りをしてるっていう様をずっと想像してて、それが原点なんですけど、そのときに耳に聞こえてくる「健次」って声が石田えりさんの声。 僕の中ではずっとそうで。 ただ今回の映画では、それから何年も経ってるから、浅野君のお母さんを石田えりさんが演じるっていうのは年齢的にちょっと難しい、リアルに考えると、現実の年齢を考えると難しいということは思っているんですけど、わかってるんだけど、でも、やっぱりなぁ、映画って何でもアリだから、これはもうあの印象そのまま引きずろう、自分で、でやってもらったところ、やはり石田さんしかこれはやれなかったなというか、絶対にこれで良かったと僕は信じてます。

司会: 女性のしたたかな部分とか、柔らかさですとか、監督、すごく研究というかされてますね。

青山: え?

司会: 何かきっかけがあったのかなぁ?

青山: 一応、まぁ。

司会: 今日、女性が多いですからね、どのように受け止めていただけるのかちょっと楽しみですね。

青山: まぁ自宅で、家庭ってものがありますしね。 僕は義理の母親と妻と3人暮らしなんです。 まぁいわば女性たちの支配下に置かれた男なんで、サンプルはいくらでもある。 

司会: 研究材料がたくさんあったと

青山: その内一人は女優だと。

司会: そうですね。 そういうお二人なんですが、監督の魅力を。

浅野: 監督の魅力ですか? 散々今日も一日インタビューの中で答え続けて来たんですが、何て言ったら良いんですかね、疲れたときに疲れたと言う態度をとってしまう、切れそうだと言ってしまうところがやっぱり、それは魅力だと思うんですけどね。

司会: 浅野さん、そういう方好きですよね? けっこうオダギリさんとか。

浅野: 僕なんか、猫かぶっちゃうタイプなんですよ。

司会: 言えないんですか?

浅野: いや、監督とかだったら言えますけど、目上の人にはやっぱり言えないですね。

司会: 大丈夫ですか?とか言われたら

浅野: いや、大丈夫ですとか言っちゃうんです。

司会: 自然体って感じですか?

浅野: そうですね、良く言えば自然体。

司会: 悪く言えば?

浅野: 近所のお兄ちゃんですよ。

青山: ただのワガママ男とか言いたいの?

浅野: いやいやいや。 何でも答えてくれちゃうっていう。 近所の何かこう頼もしいお兄ちゃんというか、勝手なお兄ちゃんっていうか。

司会: ちょっとつれて来たみたいな?

浅野: 連れられて、危ないこととかさせられて、でも結局助けてくれたりなんかして。

司会: あぁ、頼もしさもあるみたいな。

青山: 花火大会のときにね、絶対に何か他の学校の奴にね、追いかけ回されたり

浅野: ハイ。

司会: 普段からもう二人一緒にいらっしゃることがあるんですか?

青山: ないよね。 ないですね、全然。

司会: あ!本当に?

青山: 僕達ベタベタしないんです。

司会: え!うそー。

青山: 僕たちは一人になりたいだけなんです。

浅野: ハイ。

司会: わりにON/OFFなんてして

青山: もう、すごいですよ。 現場終わったら、お疲れ!って

司会: 今日飲みに行こうやー、とか?

青山: ないですね。

浅野: 偶然、北海道のレゲエバーで遭遇したことが

青山: あぁ、あのときだけでしょ?

浅野: ハイ。

青山: あぁ、そうですね。

司会: へぇ、そうなんですか。 何かねいつもこう

青山: 違う、あのときは俺は浅野君のことを探してたんだ、ずっと。

浅野: あ!本当ですか?

青山: ずっと探してたんだ。

浅野: へぇー。

青山: どこに? 浅野君がどこそこのバーにいるっていう情報をキャッチして、俺は一人で、もうべろんべろんに酔っ払った状態で、ぐるぐるぐるぐる歩いて、どこにあんのかな?そのバーはっていって、たどり着いたときには酔いが覚めてたの。

浅野: (笑)

司会: 一人になりたいんだけれども、でも淋しんぼうみたいなんですね。

青山: いや、一言言っておきたかったの。 そのことは着いたときには忘れてました。

浅野: (笑)

司会: 監督は、浅野さんの魅力といったらやっぱり近所の?

青山: ええ。 そいつを連れて歩いたら、もしかしたら俺もモテるかもしれない。

司会: 他力本願な感じですね。

青山: そうそうそう。

司会: 何か、でもさっきちょっとだけ話して、お二人とも次男坊で

浅野: あぁ、そうなんですね。

司会: それはやっぱり、そういうのってあるんですかね? 気が合うっていう。

青山: だから、一人になりたいんです。

司会: 何で?

青山: いや、長男が絡みがちなタイプっていうかね、兄弟で上が下に絡みたがる奴がいたとするじゃないですか、するとどうしてもなんか言うこと聞かなきゃいけなかったりするけど、出来れば一人になりたい。 一人の時間が欲しいっていうタイプになって来る。

司会: ほぉー、次男坊気質。

青山: 普段はむちゃくちゃらしいよ。

司会: (客席の)男性で次男坊気質、当たってるみたいな人います?

青山: 今回長男の人が多いみたいで

司会: 長男が多いですね。

青山: 長男、または一人っ子が多いみたいで。

浅野: 居心地が悪いですね。

司会: いきなり

青山: ヤバい視線に晒されている。

司会: そんなことありません。 何かね、はい。
さぁ、映画の話、たくさん出来なかったんですけど、ごめんなさい。 まぁこれからねご覧いただくということでありまして、じゃもうラストメッセージをいただきたいと思いますので、監督から。

青山: はい、本当に浅野忠信という役者さんの今が、今の一番、色んな顔が、色んな魅力が見れる映画になってるはずですし、どうぞ最後までごゆっくりご覧ください。

司会: ありがとうございました。
続いて浅野さん。

浅野: そうですね、本当にやりたかったことが詰まってる映画のはずです。 この二人が本当に必死になって考えて作った映画なんで、本当にこう深い目で見てください。 よろしくお願いします。

司会: ありがとうございました。


[もどる]

更新:2007.08.27(月)
Kaori