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初出し「アカルイミライ」 東京フィルメックス

上映後のティーチインの巻


司会 最初にお聞きしたいのが、さっきあの舞台挨拶の途中でも言ったんですが、今回みなさん初めて出演される、藤竜也さん、オダギリさんそして浅野さんをキャスティングされたんですけども、その理由といいますか、キャスティングのポイントをお聞かせいただければと思うんですが。

黒沢 はい、まずオダギリジョーさんに関してですがね、最初からこの役は、最初、自分が何者だかわかっていい人間が、最終的に、次第に自分が何者かわかって来るという物語ですので、俳優さんのまだ新人で、自分が俳優としてどういうポジションにいるかはっきりはしていないという方で行きたいと思っていました。それでオダギリさんが丁度良いのではないかと思いました。浅野忠信さんに関しましては、今後、役柄が「守」という役ですけれども、どこか社会から一歩身を引いたような、言ってみれば、社会の外側にいて、非常に冷静にそれを見つめているような人物だと考えていましたので、これはまったくイメージですけども、浅野忠信という俳優も日本の映画の世界にいますが、何か一歩外から非常に冷静に、客観的な目でそれを見つめているようなイメージがあったもんですから、浅野忠信さんにお願いしました。最後に藤竜也さんですが、これは本当に年齢的にベテランの方ということなんで、とにかく恐くない方(笑)っていう。あの非常に気難しい方ではなくって、僕は本当にあの、古い撮影所の時代を全然知らないで監督をやっていますので、ああいう昔の撮影所時代を知っている方であっても、全然そんなこと気にしない、柔軟な優しい方っていうことで、特に藤竜也さんというのはそうらしいということで、お願いしました。

質問
監督の「未来」に対してのイメージについて
黒沢 未来のイメージですが、確かにこれまでの僕の映画の中では、非常に未来は何か殺伐とした、暗い、希望がないようなものが多かったとは思います。ただ、それはホラー映画だったりしたせいもあるんですが、僕としては映画を撮るんであっても、僕という人間は決してそういう人間ではなくて、どちらかというと楽天的で、そんなに未来は暗い、ネガティブに考えているわけではないんです。ですから、今回は未来は、題名通り未来は明るいということをまず最初に決めて、とにかく今までと違った、未来は明るいのだという前提に立った映画を作ってみたいと思いました。しかし、もちろん色々考えますと、そんなに輝くように明るいわけではないのです。やはり、嵐の中を進んで行くというイメージがぴったり来ると思いますが、決してそれは否定的なイメージではない、むしろこの映画に出てくるクラゲのようにですね、周りを明るく照らしてはいないけども、自分自身はぼんやり光っている、ああいう明るさが、丁度僕が考える明るい未来の明るさだなと思いました。つまり、周りは真っ暗かもしれないけども、その暗闇に飲み込まれず、自分だけは光っている、それで十分未来は明るい、その人間にとって未来は明るいのではないかというのが僕の今の考えです。

質問
「回路」のハリウッドリメイクについて
黒沢 これはアメリカが決めることなので、よくわかりません。リメイクの話は確かにありますが、そう簡単に、今着々と撮影が進んでる、そういう段階ではないようです。リメイクをしようと様々に映画関係者が動いているという状態らしいです。それ以上は僕もわかりません。

質問
次回作「ドッペルゲンガー」について
黒沢 「ドッペルゲンガー」という映画は実はもう「アカルイミライ」の次に撮った、この間出来たばかりなんですけど、映画がありますが、これはまだ出来たばかりで、公開もだいぶ先になると思います。この「アカルイミライ」とはだいぶ違う、映画だと自分では思いますね。一言で言うとコメディです。

質問
「CURE」の撮影時、俳優に犯人を聞かれて、「〜かもしれない」と答えたという伝説の真偽
黒沢 ちょっとこの場であまり他の映画の話をしても通じないとは思うんですが、それが伝説になっていることは自分ではわかりませんでしたが、本当です。

質問
監督と俳優の解釈違いが起きませんか?
黒沢 僕の場合、俳優さんの演技というか解釈というのは、最初に僕が決めて、それを俳優さんに伝えるというやり方をしていません。俳優さんと僕とで、「これどういう解釈にしようか?」と相談をして、まさにそのカットを撮るときに、選んだ一つの解釈のもとで、それを行うというやり方をしています。例えば、この「アカルイミライ」の真ん中辺で、浅野忠信さんが警察に捕まって、オダギリジョーさんや藤竜也さんと会うというシーンで、金網越しに話しているシーンで、だんだん精神が、少しおかしくなって来るというような表現をしました。これは実は最初に僕が考えていたわけでもなく、あるいは浅野忠信さんがそういうプランを持っていたわけでもなく、撮影現場に行きますと、本当にそのとき初めて金網のものすごい、あれセットではないんですけれども、金網だけは後で付けたんですけれども、実際にある場所に、金網ができているのを見て、そのとき初めて、「ここに長くいるとたぶん精神はやはり普通ではなくなって来るのではないか」とその時に僕は思ったんですね。それを浅野さんに伝えて、「なるほど!そうだ」っていうことで、そのときに初めてそう解釈して、そういう芝居が成立した。こういうような作り方を僕はしています。

司会 どうもありがとうございました。

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更新:2003.01.20(月)
obuchi@yk.rim.or.jp