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初出し「アカルイミライ」 東京フィルメックス

上映前の舞台挨拶の巻


司会 それではお一人づつ簡単に私の方からご質問させていただきますが、まずは黒沢監督にお尋ねします。この作品、デジタルビデオでのハイビジョンで撮影されてると思うんですが。

黒沢 ええ。

司会 今回、フィルムじゃなくてハイビジョンのデジタルビデオを使われた意図といいますと、どのようなところにあるんでしょうか?

黒沢 そうですね、あの、今日はハイビジョンで撮られたものをそのままハイビジョンで上映するということですので、めったにないチャンスですので、どのように見えるか、フィルムとどう違うのか、同じになるのか、皆様の目で確かめていただきたいと思うんですけど。あの、別にビデオ、デジタルビデオを使ったからといって、フィルムと基本的に何かが違う、大きく違うとは僕は思ってません。撮るものは人間とその風景ですから、撮るものは同じですから、機械が何であってもそんなに変わらないと思ってますが、ただやはり、非常に便利でしたね。東京の街のあちこちで撮影してるんですけど、フィルムだったらちょっと、さすがに撮れないような暗い場所とか、あるいは人が多くてなかなか普通のフィルムの普通のカメラだったら置けないような場所とかにこっそり置いたり、暗いなら暗いまま撮ったりする、非常に機動力がありましたので、これまで様々な画面を東京で撮って来ましたが、東京という街をまた新たな撮り方で再発見出来たと自分では思ってます。

司会 ありがとうございました。
それでは藤竜也さんにご質問したいと思います。映画を皆さんご覧になる前なんで、あまり内容の方には触れたくないと思うんですが、今回は本当に素晴らしい演技をしていらっしゃいまして、感動的なんですが、藤さんは今回、若者と対立するような形の、対立するような役を演じてられてるんですが、演じる上で何か黒沢監督とこう演技論のことで何かディスカッションされたとか、そういうことがありましたでしょうか?

いえ、まったくないです。

司会 まったくないですか。あれは監督の方からこう色々演出をされるっていうようなことに関しては、藤さんもすごく納得されてやられるというか?

まぁ、僕がやった役っていうのは、今時のよくあるオヤジでして、その息子達や若い世代に置き去りにされて途方に暮れてるような男で、非常に理解しやすかったですね。

司会 これが初めてでしたね?黒沢監督の作品に出演されたというのは。

そうです、初めてです。お名前はもちろん聞いておりましたが。

司会 どんなですか?簡単に、まぁ本人も隣に控えてらして、ちょっと言いにくいでしょうが、どのようなご印象を持たれました?

現場では静かな監督ですね。やはりどっちかといえば、思考刺激型の映画っていうんですかね、ストーリー展開そのものは別に波瀾万丈出来るようなことじゃない、淡々とした話の中で何か一筋縄じゃ行かない、何か「明るい未来」だとお正月の書き初めみたいな題ですけれど、でも何かそれだけじゃなく、この捨て切れない何か深いものがあるんですね。きっと、だからそういう監督の考え抜いた色んなその思いとか、そういうものが一つ一つ映像になっていくのに立ち会うってことは非常にスリルがあって、面白かったです。

司会 ありがとうございました。
オダギリさんに質問したいと思います。

オダギリ ハイ。

司会 オダギリさんは色々本当に活躍していらっしゃるんですが、たぶん映画で本格的に主演されるのは今回が初めてではないかと思うのですが

オダギリ はい。

司会 このお話しが最初に来たとき、あるいはシナリオを読まれたときにどのような印象を持たれましたでしょうか?

オダギリ そうですね、ま、ぶっちゃけますと、本当に僕で良いのかな?ってのを本当に思ったんですよ。せっかくの黒沢監督の作品に、あのなんかバラエティとかねチャラチャラ出てるアホみたいな男、馬の骨かもわかんないような役者が出ていいもんなのかな?って本当正直思ったんですけども。あの脚本はもちろん、黒沢監督そして藤さん、浅野さんと共演が出来るってことは、もう本当に魅力的で、こちら側が断る理由はもう何一つなかったですね。もうお願いして出させていただきたかったです、ええ。

司会 ありがとうございました。

オダギリ (もっと話したげに)(苦笑)

司会 また俳優の方についてのお話しはこの後、上映後のQ&Aで、黒沢監督の方からどのような意図でキャスティングかというようなお話がお聞きできるんではないかと思います。
それでは浅野さんにご質問行きたいと思います。浅野さんは非常にたくさん、若手監督の作品というか、素晴らしい映画に出ていらっしゃいまして、浅野さんは初めてでしょうか?黒沢監督の作品というのは。

浅野 ええ、そうですよ。

司会 何か非常に意外な感じで、すごいもっと出ていらっしゃるような気がするんですが、浅野さん、たぶん色んな日本の監督の作品に出られてて、色んなそれぞれの組といいますか、特色があると思うんですが、黒沢さんというものは他の監督と比較してどのような印象を受けていられます?

浅野 えー、その、やはり監督はとても、何ていうんですかね?静かな方で、その静かな感じが現場でも出ていたと思います。ハイ。

司会 あー、そうですか。演技ってのはいかがです?演技といいますか、どうしても黒沢さんというと演技にすごい割りと注文を付けられる方です?それともまったくそういうことのない、自由にやらせてくれるってどっちのタイプだったでしょうか?

浅野 えっとですね、その、基本的には自由にやらせていただくんですよね。

司会 ええ。

浅野 それで、一つすごく有り難いなと思ったのは、あの、これいつも答えてるいるんですけど、例えば水を飲むときとかでも、「これ飲まなくてもいいんですけどね」っていう言い方を(笑)なさるんですよね。それですごくあの「あ、やらなくてもいいんだな」という感じで受け止めるんですが、非常に何か「あ、じゃあ、やってもいいや」っていう複雑な気持ちで有り難かったりするんです。

司会 どうもありがとうございました。

上映後のティーチインの巻 >


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更新:2003.01.20(月)
obuchi@yk.rim.or.jp