TA040615

relaxトーク「地球で最後のふたり」

[もどる]


6月15日、スペースFS汐留にて、cine-relax「地球で最後のふたり」のトークショー付試写会が密かに(?)催された。

ご出席(敬称略)
浅野忠信(ケンジ)
ミルクマン斉藤 (映画評論家)

<上映前のトークショーより>

斉藤: どうも今晩は!ありがとうございます。今日も「relax」が選んだとっておきの映画でお楽しみいただきます、cine-relax座長のミルクマン斉藤です、よろしくお願いします。もうわかってます、誰を待ってるか。もうそのことは、これからお話しましょう、もうつべこべ言いません。では拍手でお迎えください、浅野忠信さんです。

浅野さんのいでたち
  • 長いポニーテール
  • 髭なし、ほのかに日焼けした肌
  • 黒い斜めストライププリントの水色のT
  • 紫のコットン(?)パンツ
  • 黒のビーサン
ちょっとコンビニへ風


浅野: どうもありがとうございます。

斉藤: よろしくお願いします。

浅野: よろしくお願いします。

斉藤: (しみじみ)かっこいいですよね。

浅野: イヤイヤイヤ。

斉藤: いや、わかってたけどサ。

浅野: (どピンクスーツの斉藤に)いやもう、かっこいいじゃないですか。

斉藤: いやぁ、スイマセン!申し訳ありません!もう謝っておきます。というわけで、今日はcine-relax、もう50回くらいやっているんですけれども、タイ映画は初めてなんです。

浅野: いやぁ、いいですね。

斉藤: はい、「地球で最後のふたり」、これからご覧いただくわけですけども、あの、なんかcine-relaxのお客さん、アジア映画に”引き”が弱くて。

浅野: はぁ!?

斉藤: 実はわりと。いけませんよね?

浅野: いけないですね、今アジアの映画が一番面白いですからね。

斉藤: 間違いなく、世界で一番アジアの映画が面白いと言ってるんですが、そんなことがあるんですが、見事に(会場は)一杯です。

浅野: いやぁ、ありがとうございます。

斉藤: やはり浅野さん主演、そしてクリストファー・ドイルさんね、撮影の、が組んで映画ということで、やっぱりタイ映画とは言っても、ちょっと違う匂いのする

浅野: あ、そうですか?あぁ、でもそうですね、自分で見たときにもやっぱり、ちょっとこう、どこなのかな?という感じがあったので、そういう意味では一概にこうタイという感じには言い切れないかもしれないですね。

斉藤: そうですね。まぁただ、一つ言えることは、監督もちょっとタイ映画の中ではかなり

浅野: 異質な?

斉藤: ちょっと図抜けてるって言うか、ちょっと感覚突っ走り過ぎてるという。

浅野: そうですね。

斉藤: ペンエーグ・ラッタナルアーン監督という。今まで作った3本の長編、これを含めて3本の長編、全部日本に入ってますけれども、「69」それから「わすれな歌」という2本が日本に入ってますけど、こちらも面白い映画で。

浅野: 面白い映画ですね。

斉藤: あの、オファーというのはどんな形であったんですか?

浅野: えっとですね、まぁフランスのドーヴィル映画祭というのがありまして、それで僕は手塚眞監督の「白痴」という映画で

斉藤: あ、フランスで?

浅野: 監督が行けないんで、僕が代わりにちょっとまぁ行っちゃったという。そこで本当にもう、行ったり来たりするのにも”ど田舎”なんですよね、そこは、はい。もうシーズンでもないから、海なんですけど、人も全然いなくて。そんな所で、お昼の食事会みたいのがありまして、そこに行ったときに隣に座ってたのがペーン監督で、やっぱアジア人同士「君はどこから来たの?」みたいな話になって、それでタイから監督は来たって言ってて。それでまぁ、本当にそこの町はやることもないんで、あの、映画をけっこう見たんです。

斉藤: 映画を見るしかない?映画祭やってるしってんで?

浅野: はい。そういえば、タイ人の監督の映画見ようと思って、それが「69」ですね。すごい面白くて。

斉藤: 面白いんですよね。

浅野: ええ。それでその後も色んな映画祭に行く度に、まぁ顔合わせたりしてて。それでまぁクリスとかは、そのクリス関係、香港の色々プロデューサーやっててくださる方とかも、色んな映画祭でみんな会ってたんですよ。で、せっかくみんな映画祭で顔合わせて友達になったんだから、これで世界中の人間で映画を撮ろうよ!って言ってくれて、それは面白そうだ!って。

斉藤: 行くかって?

浅野: ええ。なかなかそういう。まぁクリスにしても香港とか中国にいるけど、元はオーストラリアだったり、お金出してくれる人たちも香港にはいるけど、元はオランダ人だったりとかイギリス人だったりとかって、もう本当色んな国の人だったんですよ。そういう機会はないなぁと思って、きっともうメンバーめちゃくちゃなことになると思って。なるべくめちゃくちゃなことをやりたいんで、ええ。

斉藤: ですから、先ほどちょっと楽屋でお話してたら、浅野さんはタイで映画を撮ったのは初めてというわけではなくて、「地雷を踏んだらサヨウナラ」っていう映画が3年?4年ほど前でしたっけ?

浅野: もうちょっと前ぐらいですかね。

斉藤: もうちょっと前になりますかね?ありましたけど、あれがなんか1ヶ月半くらいやはりタイで?

浅野: タイで撮影しました、はい。

斉藤: ですから、タイとは縁があるんですかね?

浅野: あるんですね、はい。そのときも一月半行って、この間のこの「LAST LIFE IN THE UNIVERSE」でも一月半行ったんで、もう本当に3ヶ月以上はタイにいたことがあるんですけど、ええ。

斉藤: でも、ほとんど日本人のスタッフっていうか、まぁ日本人の出演者は何人かいらっしゃいますけれども、スタッフはもうほとんど向こうの方じゃないですか。

浅野: そうなんです、今回は、はい、そうですね。

斉藤: どうでしたか?

浅野: いやぁ、面白かったですね。もう言葉がわかんないんで、そういう意味では多少ストレス溜まったりとかはしてたんですけど、この文化がやっぱり違うんですかね、なんかこう、逆に不思議なことが一杯ありまして。

斉藤: 不思議なこと?

浅野: えぇ、なんかこう、全然映画と関係ない話なんですけど、タイの人は絶対あだ名が付いてるんですね、あの例えばペーン監督ならペンエーグ・ラッタナルアーンとかちょっと長い名前だったりするんで。

斉藤: 早口言葉か?

浅野: ええ。それでその、みんなこう色んなあだ名が付いてるから、「そのあだ名は意味があんの?」って聞いたんです。そしたら、あるよあるよって、例えばあの人だったら「豚」と呼ばれてるって。ぶたぁ!?っと思って。すごいこう年上の人なんです、もう偉い人で。「偉い人に豚って呼んじゃってるの?」って聞いたら、別に何もおかしくないじゃないかとか言って、「いや、そうだけどさ..」って言って。そういう、けっこうとんでもない、「鬼」とか変な名前が多いんですよね。

斉藤: それ罵詈雑言に近いという、普通なら。

浅野: ええ。本当にもう「エビ」とか「カニ」とか、もうそういう人ばっかりで。現場にいる人、みんなだから聞くと、なんか「末っ子」とか「1」とか

斉藤: いちぃ!?

浅野: ええ、変な名前ばっかりなんです。

斉藤: 何だそりゃあ!?

浅野: そっから、だからちょっとタイ人はオカシイなと思って、色んなこと聞くようにしてたんです。でもう、よくまぁ、なんですか、ふざけてこう(突っついて)ツン!とかやったりするじゃないですか、後ろからこうやったり、それをお兄さんがよくやってたんですよ、その手を、女の子に。そのときに、なんかこう、何か言ってるんですよ、「※φ☆◎Й」って。「あの人はいつも何を言ってるの?」って言って。で、やられた女の子も絶対、その言われたことを言ってるんですよ。「あれは何なの?」って言って。そしたらもう、聞くと、「隣のおやじはハゲおやじ」とか、すごい下らないことを言ってるんです。やられた人は絶対それをリピートしなくちゃいけなくて。

斉藤: やられたら、「隣のおやじはハゲおやじ」って言い返すと。

浅野: はい、そうなんです。意味がわかんねぇ!

斉藤: はい、謎だ!

浅野: いやもう、そういう謎がかなり多くてですね。

斉藤: 辛くて甘い物食ってるからかなぁ?

浅野: まぁ、かなり極端なご飯でしたからね、辛いか甘いかなんで、美味しいんですけどね。

斉藤: 色んな意味で国民性、極端なところがあるかな?って感じ、なんとなくね、あるんですけど。

浅野: はい、面白かったですね。

斉藤: あのドイルさんとはもう何回目かになるじゃないですか。「孔雀」っていう、ドイルさんが自分で監督した映画にも主演されてたし、菊地武男さんとのあの王家衛の監督した映画にも出られたし。

浅野: はい、そうですね。

斉藤: 今回はどうでしたか?素晴らしいキャメラっていうか、まぁいわゆるその昔のドイルタッチ、王家衛のドイルタッチとはちょっと違った、抑えた。

浅野: そうですね、そういう意味では本当に、クリストファー・ドイルさんも会う度に、こうやっぱり自分のその映画に対する取り組み方とかそういうものが、もう追求!追求!っていう感じだったんで。それで今回も撮影中もずっと、撮影終わって部屋に戻ってからも、自分の作品作り、写真とかのコラージュをやったりして、本当に絶えずこう何かをやってるんですよね。だからそれを見て僕も本当にすごい勇気付けられて。あの現場でやっぱりこう外国人、タイ人以外の外国人っていったら僕とクリスくらいだったから、僕がけっこう弱気になったときとかがあっても、本当クリスを見てこう、いや、すごいな、この人こんなに真剣に何かに取り組んでるんだし、俺も何かやらなきゃって気持ちにいつもさせてもらって。でその、タイのそのキャメラマンの助手をやる人とかにも、いつも「お前、俺を楽しませろ!お前、俺を楽しませろ!」って言い続けて。

斉藤: あ、助手の人に?

浅野: 常に、はい。だからもう何か面白いものをやろうじゃん!っていう、なんかこう姿勢でいて、それが本当に映像に出てるなってのが良くわかりましたから、はい。

斉藤: 助手のその思いつき、ひらめきみたいなものを掬い取った上で、もう現場全体をもっとテンションを上げて行こうぜ!っていう。

浅野: そうですね。もうクリス見てるだけで、やっぱりまぁテンション上がるんですけど。

斉藤: はい、まぁそうですね。

浅野: ええ。それでもう撮ってる映像も間違いないんで。本当に、だから真剣な人だなぁっていう。普段は本当に酔っ払って、もう撮影中もお酒飲んだりしてる人なんですけど、元はもうピュアな良い人ですよ。

斉藤: でもう、活動の範囲広がってますものね、クリストファー・ドイルさんも。

浅野: ええ、そうですね。

斉藤: まぁオーストラリア人って、さっき浅野さんもおっしゃったけど、オーストラリアから香港で、香港、台湾で名を上げて、そこからまたオーストリアで撮り、アメリカで撮り、行ったり来たりですものね。

浅野: そうですね、忙しいですよね。

斉藤: 忙しいって、浅野さんほど

浅野: いやいやいや、あの人本当すごいですよ。撮影中も香港行ったりとか、もう彼女連れて来たりして、いやもう忙しいなぁと。

斉藤: 色々忙しいなぁと。

浅野: 色んな忙しさがあるなんていう、ええ、面白いですよね。

斉藤: でも実は僕、まぁこういう仕事なんで、映画を見る仕事なんですけども、この1週間で浅野さんの出ている映画を4本見たという。

浅野: ありがとうございます。

斉藤: すごいラッシュなんですけれども、正に。まぁ2本掛け持ちということは、あんまり多分ないと思うんですけど、まぁ1本ずつ違う時期に撮られてたと思うんですけれども。でも本当に浅野さんって休まれませんよね?その間に

浅野: いや、けっこう空いてるときもあるんですよ。そのたまたま

斉藤: たまたまでしょ?

浅野: ええ、撮ったものがこうタイミング的に、ガーッと来てるんで、それでこう忙しそうに見えるんですけど。

斉藤: でもあの面白い画集出されてたり。画集出されてるは、で今年の3月でしたっけ?「トーリ」、DVDが、監督作品が出て。

浅野: そうです、出させてもらって、はい。

斉藤: あの中にもほら、ヤマタカEYEちゃんのあの鳥のアニメーションとか、ダンスの首藤君とか。だからそういう、何て言うんですか?そのいわゆるストーリードラマじゃない監督作品で、まぁドローリングされてたり、そういうものとは、けっこう、ねぇ、その辺りとこうコラボレーションされてるのかなと思うんですけども。ラッタナルアーン監督も元々グラフィックデザイナーなんですってね。

浅野: あ、そうなんですか?初めて聞いたな。

斉藤: なんとなく、ほら「69」とか見たときにも、構図のキレが異様に良いじゃないですか。

浅野: そう言えばそうですね、ええ。

斉藤: なんかそれでニューヨークでずっと、なんかグラフィック、宣伝のお仕事をされてて、でタイに帰って来て、なんかCMを撮って、それで賞を一杯獲って、監督になったっていう経歴の方なんですけども。何かその辺りに、映画を作るっていう以外の感覚的なところで、ペンエーグさんとけっこう気が合うんじゃないかなっていうような、なかなか良いコンビネーションじゃないかなとも思ったんですけども。

浅野: でもやっぱ細かいところ、その映画以外のところで、細かいところ気を遣ってるなというのはよくわかって

斉藤: それは画作りとか?

浅野: あの例えば、こうスタッフTシャツなんかにしても、すごい良いスタッフTシャツ作ってですね

斉藤: あ、なるほど!

浅野: それで、これはなかなかこういうTシャツ、映画ではないなぁと思ったりして。またなんかこう、一緒にこうイタリア行ったときも、こういうビーサンを履いてるんですけど、歩くと砂浜に「LOVE」とか出る。それで裏見してもらったら、ここに「LOVE」って書いてあって。どうなってんだっけな?「LOVE」と「YOU」があるってのか。だから(自分を)I、(右足)LOVE、(左足)YOUみたいな、歩くたんびにI LOVE YOU、I LOVE YOUってなっちゃうような。面白いな!と思って。これいいだろう?って、他にもなんか、「I HATE YOU」とか何かそういう違うのもあるんだよみたいな感じで言ってて。でもそういう細かいところはすごい気を遣ってる人だなぁと思って。何を気を遣ってるのかわからないですけどね。他人を楽しませてくれるというか、ええ。

斉藤: なるほど。いや、何か仕掛けがありますもんね、彼の映画には。

浅野: ええ、そうですよね。

斉藤: 毎回ちょっと違った趣向を、まだ3作ですけど、見せてくれるし、明らかに感覚的には研ぎ澄まされたものが感じられるし、今の世界全体を見回しても面白い、これからがものすごい楽しみな監督だと思うし。

浅野: ええ。

斉藤: 3作の内では、間違いなく今回が最高傑作ですもんね。

浅野: あぁ、ありがとうございます。

斉藤: でも浅野さんも映画祭で主演男優賞を。

浅野: ありがたいことに、はい、いただきました。

斉藤: もうベネチア国際映画祭のコントロコレンテ。

浅野: コントロコレンテ。

斉藤: はいそうですね、主演男優賞になったんですけれども、もう当然だと。

浅野: いやぁ、いやいやいや、もうありがたい限りですね。

斉藤: あの、英語じゃないですか。

浅野: 英語といっても、もうかなりヒドイ英語ですけどね。

斉藤: でもあの、すごく上手い設定じゃないっていう。もう単語の羅列に近い。

浅野: そうですね、ええ。

斉藤: どうです?

浅野: いやもう、本当に僕はあれくらいしかしゃべれないので。まぁ監督は僕のいつものめちゃくちゃな英語をよく理解してくれてるんで、それで多分そのままやってくれという感じで、ええ。

斉藤: あ、なるほど。

浅野: だから非常にやり易かったです、余計にこう知らないことしゃべる必要がなかったんで、ええ。

斉藤: あの、無駄のない、無理のない感じですよね。

浅野: はい、そうですよね。

斉藤: それは画面からもわかるし、設定もその相手の女の子、シニーターがまた、今度は日本に行く、行きたいと、行くことになっているっていうんで、ずっと日本語の教習テープをかけてたり、そういうなんか言葉の、うまくそのLOST IN TRANSRATIONしてる関係が、ラブストーリーの軸になって行くんで、言っちゃなんなんですけど、また微妙なラブストーリーで面白いですよね。

浅野: はい、そうですね、タイ語も混ざってますからね、ええ。

斉藤: もう言語が飛び交い合うという、文化も飛び交い合うっていう感じで、あの画面全体から、こう漂ってるわけですけれども。

浅野: ええ。

斉藤: あの、浅野さん、ちょっと面白い性格設定になってるじゃないですか?ケンジ。

浅野: かなり変わった。

斉藤: かなり変わった。

浅野: ええ、かなり変わってると思いますね。

斉藤: 自分にあります?あんな

浅野: いやぁ、あそこまではないですかね、かなり几帳面な人なんで。

斉藤: 几帳面だし。

浅野: 僕はまだいい加減な方だから、違うような気がしますけどね。

斉藤: 丁度さっきあのド−ヴィルのときに、あの「白痴」で行かれてたと。「白痴」もその

浅野: ええ、近いですよね。

斉藤: 近いですよね。今「白痴」の名前が出たので。

浅野: そういえば、そうですね。ファッションも、なんかやることも近いような。

斉藤: ちょっとあの、この世から..みたいなところもあるし。ちょっと近いですよね、確かに。

浅野: そうですね。でもケンジの方がユーモアがあるというか、なんかこうタフな感じがしますよね。

斉藤: そうなんですよね、結局タフなんですよね。

浅野: タフなんですよ、奴は。フリですからね、全部、ええ。

斉藤: まぁこれ以上言うのもなんなんで、ケンジのことについてはこれから楽しんでいただきたいと思うんですけども。

浅野: そうですね、ええ。

斉藤: なんかタイ映画の中でも、今まで日本に入って来たタイ映画、まぁ映画祭で僕らが見てるタイ映画なんかとはちょっと違った都市の姿みたいなものもけっこう出て来てて。

浅野: ええ。

斉藤: あの、女子高生バーみたいなの出てくるじゃないですか。

浅野: あの、そうですね、コギャルみたいな、はい、ええ。

斉藤: あんなのあるんですか?向こうに。

浅野: いや、ありますね。

斉藤: あ、あるんですか。それ日本の観光客相手に?

浅野: そうですね、ほとんどが。

斉藤: あ、やっぱりそうなんですか。

浅野: ただ、スタッフの人でも、僕だから、スタッフの人に「お前みたいな良い日本人もいるんだな」と言われて、「いやいやいや、いるよ!一杯」って。ああいう、だから変なHなおやじばっかりだと思ってたって言われて、スイマセン!って言って、そういう人ばっかりじゃないですって言って。

斉藤: はぁ、タイの人がやってるんですか?経営は。

浅野: タイの人が経営して

斉藤: 日本人相手に?

浅野: そうですね、タイの女の子とかオカマちゃんとかが働いてて。でも、本当に偉いんですよ、彼女たちはもう、そういうとこで働いたお金を全部ちゃんと家に仕送りしてますから。本当にだから、日本のおやじも行くんだったら、半端な気持ちで行くんじゃねぇぞ!っていう感じがしましたよ、やっぱり、ええ。

斉藤: やっぱりそうですね。

浅野: ええ。

斉藤: この映画のバックストーリーにもそれが入ってますからね。

浅野: はい。

斉藤: きっちり入っているので、最後の、なんて言うのかな?曖昧だけれども、とても明確な、そんな感じがするんですけども、とっても素晴らしいラストが待っているんで、そこもちょっと日本とかも関って来るんで、楽しみにして欲しいんですけども。あの浅野監督、あ!浅野監督だって、浅野さん、そう浅野監督でもあるわけだけど。あの浅野さん、その今回はペンエーグさん、タイの監督、それから「珈琲時光」っていう台湾のNo.1監督ですね、間違いなく、侯考賢(ホウ・シャオシェン)監督の、今日見たんですけども、これもまた素晴らしい、侯考賢も一杯撮っているけども、彼のフィルモグラフィーの中で間違いなくベスト3に入る、大傑作だったんですけど、びっくりしたんですけども

浅野: いやぁ。

斉藤: また日本以外のところでこの二人の監督と、最近組まれて、どちらもその大傑作っていうのがなかなかすごいと思うんですけどね。

浅野: はい、ありがたいですよね。

斉藤: やっぱりアジア、それから引きが多くなったんじゃないですか?ものすごく、また忙しくなるのでは?

浅野: そうですね、そうなってくれるとありがたいんですけどね。今のところは特に、ええ。

斉藤: 絶対、絶対増えますよね?

浅野: そうですね、またタイも行きたいですし、その侯考賢監督のは日本で撮影だったので、向こうで今度は何かご一緒できれば、ええ。

斉藤: あれもう日本のスタッフっていうより、向こうのスタッフを連れて来て

浅野: 向こうのスタッフですね、ええ。

斉藤: また、キャメラが李屏賓(リー・ピンビン)ていう、今は世界最高の

浅野: ええ、すごい人なんですよ、本当に。もう、何がすごいかって、打ち上げのときに、「俺の腹殴れ」って言うんですよ。何言ってんだ?この人はって思って。けっこう力ある人が殴ったんですけど、最初はまぁ手加減しておいて。「もっと強く殴ってくれ」って言って、もう本気で殴ってんですけど、全然効かなくて。いや、カメラマン関係ないでしょ?あんまりっていう感じがして、すごいなぁと思ったんですけどね。

斉藤: なんだかよくわかんねぇなぁ。

浅野: よくわかんないですよ、本当に、ええ。

斉藤: いや、中国の人ってね、映画の人って変な人一杯いて

浅野: やっぱり?

斉藤: この間、東京国際映画祭に来てて、すごく新劇的な映画を撮ってる人で、だからちょうどそのカメラマンの李屏賓さんが、「珈琲時光」のね、ちょっと噛んでる映画で、新人監督の映画なんですけど、デカイんですよ、丸ごとスキンヘッドにしてて、すごい人当たりは良いんですけど、いや体デカイなぁと思ってたら、すごいまともな暗い詩的な映画を撮る人なんで、元々スタントマンで、なんか少林寺ものに出てたとか。

浅野: ほっほー。

斉藤: 何じゃそりゃ!?って。どこでどう変わって、こういう風になるのか?

浅野: けっこう、だから向こうの人は受け入れ幅がでかいというか

斉藤: でかいんですよね。

浅野: ええ、色んな様な人が。あのびっくりしたのは、そのカメラマンの、35mmっていうでっかいカメラなんですけど、そのカメラは日本だったら絶対カメラマンの助手が持つんです。落っことしたりとか、例えばフィルム撮ったものを勝手に開けたりしたら、もう絶対、お前明日から来るな!って、もう映画界では食えないぞくらいの勢いなんですけど、平気で照明部の人の、すごい体大きい人に「お前体デカイからカメラ持っといて」ってカメラ持たせちゃうんでよす。で、そいつを持ってて、ガンッ!と落っことしちゃった。えぇっ!って思って、すっごい怒られると思ったのに、誰も何も言わなくて、「あ、落っことしたね」みたいな感じで、えぇっ!っと思って。で、その日まだ撮影一杯あるし、そしたらその覗くところ、ファインダーっていうんですけど、覗くとこ、壊れちゃってるんですよ。で李屏賓が、「お、これ見えないぞ」とか言って、どうすんのかなと思ったら、「まいっか、見ないでやるか」みたいな感じで。

斉藤: えーっ!

浅野: すっごいと思って。それで撮影してました、ええ。

斉藤: それは技術なのか?

浅野: いやー、もうだから

斉藤: もう入ってしまってるのかなぁ?

浅野: 入ってしまってるんでしょうね。いやもう本当、だから見習わなきゃいけないなと思いましたよ、そういうところは。細かいこと言ってもしょうがねぇだろ!っていうところは。

斉藤: すごいなぁ。

浅野: ええ、すごいですよね。

斉藤: で、世界最高なんですからね。

浅野: 世界最高ですよ、体の強さも、もう何もかも。

斉藤: 世界最高ですよね。しかも本当にね、ドイルとピンビンって言ったら、誰も勝てないっていう感じの、いや、本当にそうなんですけど。

浅野: ええ。

斉藤: なんか偶然ね、同じくらいのときに公開されることになったんで、今日「地球」を見たら、「珈琲時光」も楽しみにされるべきだと思いますよ。

浅野: ぜひ。本当に良い映画ですよね。

斉藤: その後、石井克人さんの「茶の味」とか。

浅野: 「茶の味」とか。

斉藤: 黒木和雄さんの「父と暮せば」とか

浅野: はぁ。

斉藤: あと何がありましたっけ?塚本さんの「ヴィタール」とか、塚本晋也さんの新作とか。他、「SURVIVE STYLE 5+」とか。

浅野: ええ。

斉藤: 何かまたはcine-relaxで見ていただけることになりましたけど、ちょっとお楽しみください。また浅野さんの映画が見れます。また激戦になると思いますが、また申し込んでいただけたらと思います。

浅野: はい。

斉藤: また何か機会があったらぜひ来ていただきたい。

浅野: はい、ぜひよろしくお願いします。

斉藤: すごい、良い方ですね。

浅野: あ、そうですか?いやいやいや、仕事の場であまり悪い、適当なってのもどうかと思うので、ええ。普段はめちゃくちゃです。

斉藤: いや、なんか楽しくお話をさせていただきましたでございます。

浅野: あ、いやぁ。

斉藤: まぁ、これから浅野ファンにとっては、もう全然退屈しない2004年であると。

浅野: そうなるといいですね、はい。でも本当に、自分が見ても面白い映画があるんで。

斉藤: いや、本当にそうですね。

浅野: ありがたいです。ええ、ぜひ本当に見てほしいと思います。

斉藤: お金損しない映画ばっかりなんで。

浅野: いや本当に、映画館で見てもらえれば一番嬉しいなと思いますね、ええ。

斉藤: 間違いなく、フィルムで、皆さん見ましょう。今日来てくれている人はもう、行け!って。

浅野: いやいやいや、もう映画に来てくれてることはよくわかるので、ありがたいですね、はい。

斉藤: じゃ、早速見ていただきましょうか。

浅野: そうですね。

斉藤: 「LAST LIFE IN THE UNIVERSE」、「地球で最後のふたり」です。今日のゲストは浅野忠信さんでした。また来ていただきましょう。どうもありがとうございました。

浅野: ありがとうございました。


[もどる]

更新:2004.06.18(金)
obuchi@yk.rim.or.jp