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R-18トーク!?「殺し屋1」ティーチイン

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3月21日、都内では早くも桜が満開の春分の日、「殺し屋1」の”総本山”渋谷イメ−ジフォーラムで、ロングラン記念のティーチインが催された。ミッドナイト、大人の時間に12時までのシンデレラ達 VS ”魔法使い”三池監督あーんど王子様の映画に負けない危ないセッションが繰り広げられた。


ご出席(敬称略)
三池崇史 監督
浅野忠信 (垣原雅雄)
森本麗香 (司会:プレノンアッシュ)


浅野さんのいでたち
  • ペガサス(?)のようにフロントを立ち上げた長い髪
  • ふさふさ髭
  • 着慣れたチェックの赤ネルシャツ
  • 白にドクロちゃん(?)イラストのT
  • ゆったりめのブルージーンズ
  • グレイの皮スニーカー
う、美し過ぎて正視できません(*^^*)
花粉でお鼻がちょっとぐしゅぐしゅ


<映画鑑賞後のティーチインより>
モリモ お二人からまず一言ずついただきたいと思います。

三池 どうもこんばんは。ようこそ。見てくれてありがとうございます。

浅野 スイマセン、ありがとうございます。あの、この時間にまだまだちょっと話しをさせていただくのを付き合ってもらおうと思うんで、よろしくお願いします。


<浅野さんにQ>
映画監督を目指しているのですが、良い脚本ができて、自信が付いたら、出ていただけますか?

浅野 ハイ(笑)頑張ります。よろしくお願いします。


<監督にQ>
縛られてる浅野さんを見たくなかったですか?

三池 いやいや、見たいんですけどね。縛ってみたかったんですけど。あの、何ていうのかな、その、要は満たされないんで、結局ね。やっても満たされないという設定にしなきゃならないんで、要は飢えてる状態にした方が良いだろうなと。やるにはね、やっぱり"究極の縛り"になっちゃうのね。ちょっとそれは公開できなくなっちゃうかなっていう。
満たされないのは監督が?観客が?
  ううん垣原、垣原が。要はそういう、垣原を縛れる男がいないんですよ。それを求めているだけ。それをイチに求めてたんで、生半可な奴に縛られて喜べないっていう男だと思うんで、ともかく、その溜まったフラストレーションを全部暴力の方に使ってたというか。まぁ暴力といっても、ああいう職業の人ですから、ごくごく普通に暮らしてた。普通のレベルの暮らしでああいう、特別なにか暴力的だったということではないと思います。


<監督にQ>
「DOAF」に出て来る「1」マークの人は「殺し屋1」と関係あるのですか?

三池 えぇ、彼は香港でイチをやってた男なんでね、すごく関係あります。関係あるっていうか、そのまんまっていうだけで。
彼がイチ君なんですか?
  あの時代にいたんだろうって設定で。それが、この映画を見て、あれは2346年の話なんで、古びた映画を見て、あとはリメイクされたかなんかで見て、それのファンだったのかもわからないし、明らかに未来に、その何百年か後に、「イチ」という傷痕があるっていうのを、自分で着せただけですね。だから全然関係ある。


<監督にQ>
オープニング・タイトルの出し方は始めからのアイデアですか?

三池 オープニングはね、あの普通、文字というか、テロップで載せるっていう、その映像に文字情報を載せるっていうのが普通なんですけど。まぁ、どういう書体かな?っていうね、最初、普通はそういう風に。で、劇画の、要は原作の書体が良いのかどうかって色々考えていたんですけど、どうせだったら、ね、こうR-18でもあることだし、スペルマで書いてみたいなっていう。ま、夢精みたいなもんでね、ちょっと夢を。あれ、だから塚本晋也さんの精液なんですよ。3日分貯めていただいて。あれはCGでもなんでもなくて、アナログに作った。


<監督にQ>
木下ほうかさんはどんな役者さんですか?

三池 あのまんまの人ですよね。ただ、面白くすることに貪欲で、要は自分が面白く生きてられることに貪欲で、現場も楽しもうとするし、それが必ず映画に跳ね返って来るかって言うと、そうでもないんですけど。ただ今回「桃源郷の人々」で、さっきの近未来のイチと同じように、これ偶然なんですけどね、大森君も出てるんですよ。で二人がばったり顔合わせるっていうシーンがあって、やっぱり絶対やるだろうなって思ってたんだけど、二人で
木下:「何で泣いてるんだ?」
大森:「泣いてないもん(ToT)」
とかって一回言ってから台本通りのセリフになって行くっていうね、まぁ仕方ないからOKかな?っていう。

モリモ それすごく面白そうなんですけど。

三池 ただ、見てない人には何のことか全然わかんないんで。

モリモ いやもう、三池監督のこれからの作品を見る人は、その前に「殺し屋1」を!って感じでしょうか。


<監督&浅野さんにQ>
三池'S浅野観 VS 浅野'S三池観

三池 ああ、だから本当に不思議な人ですよね。役者なんですけどね、芸能人という感じじゃないし。アーティストかっていうと、それともまた違うんですよね。なんか自然にいて、自然に垣原やって、終わると、すごく嬉しそうに「あ、終わり?お疲れ様(^o^)/」ってこう帰って行く。すごくあれイイナ。恐らく何十万人に一人位しかそんな生き方はできないだろうなっていう。浅野さんのような人ってのはたくさんいるのかもわかんないんだけど、浅野忠信の様に生きている人ってのは、おそらく浅野さんだけなんだろうなっていう、そういうところに監督とか映画作る側の人間がすごく魅力を感じるんだと思います。

モリモ 今回は、でも始めから垣原でっていう感じだったんですか?

三池 そうです、そうです、うん。でも色んな、声かける度に断られてたり、「暴力はイヤなんです」。あれならどうだ!?みたいな(笑)

モリモ や、すごいですね、今回受けられたのは、じゃあ今まで断り続けて来たのを振り払って、今回出られた理由について。

浅野 や、あの、そうですね、僕はつまんないことを考えてたんですね。それでその三池監督の作品を、僕はあまり映画は見ない方なんで、監督の作品もあまり見たことなくって。でも監督の作品を見たらすごく面白くて、「あぁ!そっかぁ」と思って、こういう風に暴力を撮ってくれるんだったら、こういうところで、何で自分が暴力イヤだったのかの答えを得られるんじゃないかなと思って、ハイ、それでもう。まぁそれ以前に監督の映画を見たとき、あぁ!監督とやりたいなと思って、ハイ。一石二鳥!みたいなところも、ハイ。

モリモ やってみて、実際どうでしたか?

浅野 いや、面白かったですよ、本当に。あの、本当に監督が僕に今言ってくれてたたみたいなことですけど、僕も多少映画をやって来た中で、三池監督みたいな監督さんは見たことないですね。あの、現場が、監督くらいの年代の人たちというか、そういう年代の人じゃないみたいな、どっちかっていうと石井輝男監督とか大島渚監督みたいな、なんか雰囲気の、でも全然..

モリモ 大御所の雰囲気?

浅野 いや、大御所っていうことではなくって、その人たちの現場ってすごい速いんですよね、なんか問題がないというか。もう三池監督の現場もだから問題がないというか、あったんですけど、監督があんまし問題にしてなくて、そこをすごく見てて、「あぁ!イイナ」と思ってて、こういう現場がいいなと思って、ハイ、楽しかったです。


<浅野さんにQ>
垣原と自分の似てるところは?

浅野 いや、顔がやっぱちょっと似てると思ったんです、僕、漫画見てて。そして、また映画の話を友達とかとしてて、友達もなんか「これお前に似てるよな」とか言ってて、そこがけっこうあったのかなぁ。
性格が似てるとかは?
  いや性格も似てるんじゃないですかね、なんか(笑)、ハイ。ヤバイかどうかはわかんないですけど、自分勝手なところはあるんで、そういうところは。


<監督にQ>
最後の男の子は誰ですか?

三池 解釈の問題ではもう色々好きに解釈していただいてというか、わからないところはわからないままでいいんですけど、事実関係だけ言わしていただけると、最後に振り返ってる少年っていうのは録音助手です。
<爆>
  あの、これもね運命なんですよね、台本にあったわけじゃないんですけど。タケシっていう少年を撮って、その横でマイクを構えてタケシの声を録ってる、その客観的にカメラ横からその二人を見てると、すごくよく似てるんですよ。で、その録音助手の男の子ってのは、すごくねカワイイんですよね。あの振り返って、あの衣裳で。あの、あんまりスタッフ向きじゃないんですよ。スタッフってきたないでしょ?ドロっとしてんだけど。その中にいて、きっと立派な両親にちゃんと、キチンと育てられて、キチンとした奴なんだなと、珍しいなと俺の周りに。で、なんか仮にね自分の子供がねそんな風に素直に育ってくれるといいなというような思いがあって、まぁ、色んなことを、例えば父親が自分の前で笑いながらピューピュー血ぃ出して「タケシぃ!」とか来られたら、もうトラウマになっちゃうじゃないですか、イチと垣原っていうのと知り合ってというか、同じ時間に同じところで過ごして、普通だとそれを引きずって、何か、原作もやや、そういう、引き継いでいく、逆になんか、ふっと立ち姿だけで少しほっとできないかな、何かあれだけ経験はして、確かにそれを引き継いでるんだけど、ただ独立した人間として、過去の思い出の中の一つにしか過ぎなくて、何か彼自身は、だから平気で街の中に立ってて、ふっと振り返って見える一瞬の表情ってのは決して曇ってないっていう、そういう風に、こうタケシ自身がそうなってほしいなっていう風に、撮ってるうちに、タケシのこともいじめたんで、思いがあって、同じような服をわざわざ北村さんに、デザイナーに作ってもらって、ていうか揃えてもらって、ラストシーンにしたんです。だからそれは録音部さんがいなければ、あのカットはないんで、だから頭で考えてというよりも、運命的なっていうか、偶然そうなってて、そういうのが現場には大事にしたいなという風に思ってるんで。


<監督にQ>
マー坊の額の傷の謎

三池 おでこの傷に関しては、本当に傷つけられたかどうかっていう、イチと垣原は本当に戦ったかどうかっていうことですよね。その前にだからどうも三半規管をぐりぐりいじくって、そこから垣原の見たものすべては垣原のイメージの世界。だから自分で脳を傷つけてから、自分で飛んだのかもわかんない。ただ垣原はイチにそういう風にされたかった。頭の中で夢を叶えながら落ちてったっていうことかもしれないんですが、それはちょっと垣原に聞いてもらわないと(笑)。浅野さんではなくて垣原とイチに聞かないとわからない。

モリモ どうですか?でも三半規管をぐりぐりっとやるのって痛かったですかね?

浅野 めちゃめちゃ痛かったですね(笑)

モリモ あの場面ね、痛いじゃないですかね。でもその前の舌の場面もすごい痛くて、私もう本当にあそこの他は全部もう笑って見られるんですけど、あそこの場面が出てきた瞬間に「うぅっ!」ってなりますから。どうですか?撮られるとき。人間は戻るもんなんですかね?使ってるうちに。

浅野 戻っちゃうんじゃないですか(笑)。大丈夫でしたよ。

モリモ でも、先程質問されてた、垣原と自分は似ているかもしれないって言ってたんですけど、あの垣原、漫画の垣原は山本さんが自分の顔をデジカメで撮って、それをデッサンで描いたらしいんで。

浅野 僕、漫画で見てて、でも最初の頃は、最初の頃は知らないんですけど、映画で初めて山本さんに会ったときに、そのあとヤングサンデーで見て、「あぁ!すっげぇ似てるな」と思って、作者の人、なんか自分を描き出しちゃったのかなぁって思ったことがありましたけど、ハイ。

モリモ なんか全部デジカメに撮られてやるんで、精子も自分で出してやるって、描くらしいんです。

浅野 はぁ。

三池 よく平気で言えるよな(笑)

モリモ いやいや、気にならないですよ(笑)、全然。


<監督&浅野さんにQ>
一番印象に残ったシーンは?

三池 現場的に、個人的に、映画と全然関係なく印象に残ってるっていうか、あれはですね、こう電話かけて怒鳴ってる、なんか興奮して、たぶん台本通りに言ってるんだろうなと思いながらも...

浅野 僕も全く同じでした(笑)、そこですね。

三池 ガーンって切って、たぶんねカットかかるんだろうなって思ってたのかもわかんないんですが、そのまま黙って見てると続行されて行って、浅野さんもちゃんとそれに受け答えして、あぁ!なーんだ、ほっときゃぁ進むのかと思って。だから、一瞬「ダメだな」と思っても、なんかそこで止めるべきじゃないんだなって。なんか今まで自分で途中でカットってかけてて、その後何か起ってたかもしれないって、なんかずいぶん残念になって、あんまりなんか、一回スタートかけたら、誰かがやめるまでやっとこうかなっていうくらい。で、けっこうね、あの漏れ聞いた話しでは、タランティーノが好きらしくて、特にあのシーンが好きで、あの菅田さんっていうんですけど、菅田さんはなんか次のプロジェクトかなんかであの「℃¥$¢£#&*」って電話を切るあの男に会いたいって、実際、菅田俊はタランティーノと会って打ち合わせしたそうです。

モリモ あぁ、じゃあ欧米進出!って感じですかね?

三池 えっとね、向こうから来るのかどうかよくわかんないですけど。だからあの言葉だから、国境を越えてるから、英語でも何でも来い!でしょう。「℃¥$¢£#&*」って言ってりゃいいっていうので、何かこいつは使えるかもしれないって思ったんですかね。だから現場では非常に、要はNGってのは本当にNGなのかどうか、僕らはなくしちゃったものっていっぱいあるんじゃないかなって、ふっと思って。普通ならもう一回行こうかと思うんですけど、やぁなんか今みたいなカット、俺は普通は撮れないなって、すごく大事になっちゃって、そのままで、で、次のカットに進んで、そういうのを積み重ねて行くから、あぁ撮る側、スタッフ側も、撮られる側もなんか、正確に何かをやるってことじゃなくって、それを元に現場で何か、こう1回しかできない何かが生まれるっていう方が面白いのかなっていう、そういう空気は少しずつできてくるんで、すごく印象深いカットです。

モリモ 浅野さんはあそこの場面「菅田さんは何言ってるんだろうな?」みたいな感じで、よく続けられて...

浅野 いや、あれ僕不思議とわかんなかったですね、その、そういうことが起ってることが。ただすごい勢いだなぁとは思って、見てて。それで僕は菅田さんがどういうセリフだったかなってのはわかんなかったんで、自分のことしか考えてなかったんで、あ、すっごいなっと思って。それでまぁ、そのまま僕んとこやって来るんで、このままどうなるのかと思ったら、監督がOK!って言ったから、わ!すっごい現場だなと思って。でも本当に、あそこはすごかったですよね。生であれを見れたのは僕もけっこう、ハイ、嬉しかったですよ。

モリモ じゃあ、こうNGを自分で出したんじゃないかな?と思ったけれども、採用された場面ってのはけっこうあったりしたんですか?

浅野 僕ですか?いや、あの特に、ハイ。いや、自信があるわけじゃないんですけど、あまり考えてないんで、NGは、ハイ。


<監督&浅野さんにQ>
作った側の意図するところと受け取る側のギャップに対してのジレンマ

三池 どうでしょ?ただ正確に何か伝えるんであれば、伝言ゲームみたいなのであれば、文章で補ったりとか、パンフレットで解説したりとか、もっとわかり易く撮ったりとかなんでしょうけど、それが映画にとってどうしても必要なものであれば、要は一回そういう風に自分で作っていくと、またそれを求められて、そういうもの、台本も含めてそういうものを求められるじゃないですか。だからこう、自分にとって、見る人は色々解釈してもらって、何かを感じてもらって、メッセージそのものっていうのは、自分の実人生、自分に対して何かやってるだけで精一杯でしょうね。他人に対して何か言うっていうよりも、その伝えたいことは恐らくあるんだと思うんですよ、本能的に。それは台本のセリフと違うことかもわからないんだけれど、違うってわかっていながらも、でもその人間はその役柄上有効なことなんで。自分のテーマと違って、逆のことを言っているかもわかんないんだけども、そういうセリフとの出会いも運命なんで、それをこう、そのまんま本当に伝わっちゃうのか、嘘に聞こえるのか、それはその俳優さんが本当にそう思って言っているのか、違うなって思って言っているのかって、そういうことってなんか伝わるとは思うんですよ。曖昧ながらも。だからそういう伝言、何かを正確に伝えるというために自分は映画を作ってるわけじゃないんで、恐らくそれには映画ってすごくもどかしい手段だと思うんですよね。そこには自分は苛立ちは感じないし、自分も映画を見たときに、作った人たちがどういう思いで作ったんだろう?ってあんま思わないんです。自分が面白いと感じたかどうか。たぶん全然違う解釈してるかもわかんないし、作った人と違うところで笑ってるかもわかんないし、面白いなと思ってる部分がたぶん違うと思う。それでも、そいつらのまた作るのはなんか気になるとか、時間に余裕があったら劇場に行くとかっていう、そういう曖昧な関係で良いと思います。

モリモ 浅野さんはどうですか?演じる側として。

浅野 ええ、そうですね、僕もまぁ曖昧なものでいいなぁと思って。あんまりその、僕も他人に任せちゃうタイプなんで、見た人が逆に何を考えてるのか知りたいぐらいで、本当に何も考えていませんね、ハイ。僕があまり考えてもダメなものはダメなんで、ハイ。


<監督にQ>
中沢会長の原作での愛犬オセロが砂時計になったのはなぜ?

三池 単純に言うとね、犬の面倒見てる余裕がなかった、一つには。ただ、出すとやっぱり何かやらせたいし、出た以上、犬と中沢会長にね、その関係作んないといけない。ただ無理矢理持たされてる犬と、本当に持ってきた犬って何かやっぱ違うんで、ガブッて噛まなきゃいけないしね。噛む犬ってのはいるんですけども、噛まれる方はたいへんだしなぁ、ただ出たけど噛まないっていうのはどうかな?っていう。でも何か持ちたいっていう、中沢は何か持ってるんだって、じゃぁ砂時計か!って自然な考えで。

モリモ 自然でしたか(笑)?

三池 俺にとっては割と自然な、砂時計がいいかな?って思ったんですよ。だからそのとき助監督がだから「え、何でですか?」って聞かれたんで、じーっと助監督の目を見詰めてたら、「すいません、わかりました。」って。まぁ、だから犬ってのはけっこうたいへんなんですよね。僕は助監督の頃、犬物をよくやってまして、自分でもけっこう犬使えるんですよ、ドッグトレーナーの助手みたいな。助監督だからやるんで。やっぱたいへんなんですよ。要は現場のエネルギーの半分は犬に費やされてしまう。時間もかかるんですよね。たくさん人も出るし、これは犬で見せるってのいうはたいへんだなって。それと有薗さんに犬は要らねぇだろうって。何か兼ねてるような人なんでね、小犬と人間を兼ねているヤクザみたいなもんなんで。

モリモ そうですね、すごいキュートな感じで。

三池 有薗さんでなければ、要ったでしょうね、出さなきゃいけないって感じだったと思います。すいません、そんな理由で。申し訳ない(笑)。


<監督にQ>
歌舞伎町の撮影でのトラブルは?

三池 シャレにならないトラブルは毎日のようにあるんですけど。ただ、今ね、警察が全面的に協力しませんというか、許可出さないんですよ。歌舞伎町、まぁ映像的に面白い場所はほとんどですよね。新宿だと歌舞伎町近辺全部だめ。渋谷も道玄坂とかあの辺全部だめ。で、だめな代わりに撮る自由はあるんですよ。許可は出さないと。後はトラブルが起ったときに取り締まりに来ると。以前、一番問題になったのは、我々がやってると、許可を出したんだけど、工事現場と同じなんで、この通りのここからこの間にパイロンをこう出して、こっからこう向けて、キャメラをこう向けて、こう撮りますっていう、こう四角くやって、ざーっとやって許可を取るんですけど、やってると当然そこからはずれてきますよね、時間も何時何分から何分までって出さなきゃいけない。あんまり長いと許可出してくれないんですよね。だから、必ず我々撮ってる側と許可者の間にギャップがあって、日にちがずれてたりして、そこでいつもだめだっていう。そのだめがなくなったんで、後は根性決めて、本当垣原みたいな奴がいるんですよ、いっぱい、そういう人たちとうまく付き合いつつ、かわしつつ、逃げつつゲリラ的に撮って行くと。だからむしろ今はね渋谷の方が恐いですよ、危ない。よく、こうボコボコにされたりしてます。

モリモ 三池監督がですか?

三池 はい?俺はね、何でかね、運良く免れたりしてるんですけど。まぁ囲まれてなんだかんだは。

モリモ 浅野さんもね、こういうあのメイクのままで歌舞伎町歩かれてますけど、大丈夫でした?

浅野 まぁ、その、いや、ありましたよ、でも恐いことは。恐いことというか、あの、まだメイクはしてなかったですけど、朝6:30くらいに歌舞伎町の裏の方のホテルにメイクで入るときに、ま、ラブホテル借りてもらって、メイクさせてもらってたんですけど、そこ入るときに、助監督さんと歩いてて、「こちらでーす」って歩いてて、丁度ホントにもうホテルの真ん前くらいで、向こう側にその二人歩いてる人がいたんですよ。僕の方にじゃないですよ、向こうに向かって。なのに一見こっち振り向いて、上着バッと脱いで、「来い!こらぁ」って。「はぁ?」って思って、僕もうまっ金金だったから、「来い!こらぁ」って僕に向かって。でも目は僕を見てんだけど、全然違う方イッちゃってるんですよ。「あ、この人イッちゃってるわ」と思って、僕はそのまま「いや、行きません」ってホテル入って、それでまぁ、何もなかったですけど。

モリモ 早朝から?

浅野 早朝からいきなり「来い!こらぁ」ですからね、びっくりしました、ハイ。

モリモ でも浅野さん喧嘩っ早くなくて良かったですね。

浅野 いやいや、喧嘩っ早くてもあの人はたぶん相手にしないんじゃないですかね、ハイ。

モリモ 何かそれもね面白かったかもしれないですね、映画の中に出てきても。

三池 無責任なことを、よく(笑)

浅野 その人はなんか、その後、なんか助監督さんに「あの人どうなりました?」って聞いたら、パトカーが来て、パトカーの上でずっと「来い!こらぁ」って言ってたらしいですよ。それでお巡りさんにそのままパトカー乗せられて、行っちゃったらしいです。

モリモ すごい人ですね。

浅野 結局僕でもなかったみたいですね、「来い!こらぁ」の相手は。

モリモ 他に見えてた人かもしれませんね。

浅野 たぶんそうですね。


<監督にQ>
暴力についての考え方

三池 この作品は暴力でずっと描かれてて、まぁ暴力をもってしかコミュニケーションとれないというか、暴力のある世界?要は会話を交わすのと同じように。まぁ夜好きな人とベッドに入ってするみたいなのと同じように暴力があるっていう登場人物たちなので、それは何か暴力を描くことそのものには意味はないというか、そういう人間たちってことで、特に映画で暴力を描きたいとか、バイオレンスシーンが好きっていうことでもないんですよ。で、割と最近は心を入れ替えた系の物も撮ってて、「テレビにも流せるぞ、これは」みたいなものも撮ってて、だからそれはギャップが、リバウンドを自分の中でも意識しなくても、やっぱりこっちに行っちゃうと、どっかで何か違う物を求めたりするんですね。だからなんか色んな状況で、こうボンボン振り幅がもっと広くなっていけばいいなと。普通なんか小っちゃくなって、立派だけども、なんか「どうだかな?」ってところに落ち着い行く、で、だんだん年もとってくと振り幅が小っちゃくなってく、それを自分はもっとバッカバッカ大きくあればいいかなという。まぁ、だから優しさの裏返しで、やっぱりバカーンと「これは嘘だ!」っていう暴力を、バーンって殴られたらやっぱ痛いじゃん、腹立つじゃねぇかって、ボーンとやってバーンと殴っちゃうと、「子供殴っちゃってすいません!」みたいに今度はこっちでこう、そういう感じですよね。


<浅野さんにQ>
役作りについて

浅野 いや、特にないですかね。その、あんまり役作りという気持ちで何かをやったことがないんですけど、ハイ。まぁ髪の毛金髪にしたりとかすると、自然と人が変わったように見えるもんなんで、ハイそういうことですかね。特に何もやってないですよ。やってないって言ったら嘘になるかもしれないですけど、そういうわかり易い、何ですかね、何かはやってないと思いますね、自分では、ハイ。


<監督にQ>
自分の子供に見せますか?

三池 あぁ、子供は好きだろうなっ(笑)て感じはしますけどね。あの、子供つってもでっかいんでね、俺の子供はですね。それでも、まぁ16とか17とかなんかそのくらいで、高校生です。高校2年生かな?なった?

モリモ まだ、じゃあこの作品はご覧になっていないのでしょうか?

三池 どうだろ?見てないと思うよ。ただ、あれは持ってましたよ、「パーフェクト・ガイド」。漫画も原作もう知ってるし。「父ちゃん、これやったのかよ?いいなぁ。」って。何がいいのかわかんない(笑)。「やったよ」って。割と付き合いが薄いんで(笑)、希薄な家族でして、そんなもんですね。


<監督にQ>
海外進出予定

三池 定かではないんですが、海外の配給が色々決まってるし、色んな映画祭でこれからも、ファンタスティック映画祭系とかも含めて、世界中の映画祭で上映されてますね。

モリモ ロッテルダムにはお二人とも行かれたんですよね。

三池 えぇ、すごかったですけどね。900人くらい入る劇場で、毎回超満員で、もうノリノリですよ。だいたい自分のやつとかは映画祭の中でも、なんかあまり真剣に、「この映画何だ?」っていうことじゃなくて、そういう風に映画を見ることに疲れた人たちの娯楽としてあるんですよ。なんか「疲れたなぁ...まぁ、見るか」って楽しんでくとか、罵倒して行くとか、途中で帰るとか、そういうお祭り風に使われてるんで、900人がすごい盛り上がってましたよ。異様に盛り上がってました。

モリモ 一緒にご覧になられたんですか?

三池 自分は見ました。すごく良かったです。

モリモ 浅野さんは?

浅野 僕ちょっと風邪引いちゃってて、それで、ハイ。

モリモ ロッテルダムではインタビューとかを受けられたと。

浅野 ええ、そうです。

モリモ で、今度あれですよね、来週は香港に行かれるんですよね。

浅野 はい。

モリモ 香港は4月から公開されるんですけども、来週、イベント上映みたいな感じであるみたいなんで。

浅野 たぶんそうですね。

三池 たぶんズタズタの「イチ」ですね。より暴力的な、フィルムをブチブチこう切って。もっとなんか..

モリモ 違う意味で暴力的なんですね。

三池 うん、すごく過激になってるんじゃないかな?切っちゃって、それを無理矢理くっつけてでも上映するっていうパワーってのは。まぁ考え様によっては、そういう風に作ったものを切られるっていうあれなんだけど、それも一つ「殺し屋1」の一つのバージョンとしては。あの、舌切るのはやっぱ危ないっていうことで、何ヵ所か、乳首もダメです。

モリモ あ、そうなんですか?子供の頭持ってるところは大丈夫っていうことですよね。

三池 あれはいいんじゃないですかね。奥地に行くとまだ喰ったりしてる人たちだから(笑)、子供は大丈夫なんですね。今は喰わないのかな?舌も、だから半分くらいまでで、ぷちっ!って切れる瞬間がダメとかっていう、そういう。それを無理矢理バーンって次のカットに繋いであるから、ある意味より暴力的でいいんじゃないかなっていう。オランダはどうやらノーカットで。

モリモ 公開は。

三池 はい、マリファナ吸ってもいい国だからですかね(笑)、「イチ」もいいだろうって。ヨーロッパじゃたぶんオランダだけじゃないですか。もう早々と一番先にやるんじゃないですか。

モリモ あ、ヨーロッパでの公開?もし香港版を見たければ、香港に「殺し屋1」を見に行こう!ツアーでもやりましょう。

三池 ビルいっぱいにでっかいなんかね看板てか、あれができてるそうです。「千と千尋」の3倍でかい奴。

モリモ 「千と千尋」を超えたと。ぜひぜひ行ってみてください。今日は皆さん本当にありがとうございました。

三池 どうもありがとうございました。

浅野 ありがとうございました。

< 完 >


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更新:2002.03.25(月)
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