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[番外編]祝完成!「わたしのグランパ」舞台挨拶

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銀座が冬の戻りに凍えた3月6日、丸の内東映にて「わたしのグランパ」の完成披露試写会が催された。

ご出席(敬称略)
東陽一 監督
菅原文太 (五代謙三)
石原さとみ (五代珠子)
筒井康隆 (原作)
高橋真紀子 (司会:テレビ朝日)

<上映前の舞台挨拶より>

司会 それでは早速ですが、まずは菅原文太さん、「鉄拳」より13年振りの映画主演となりまして、そしてまた...

菅原 いや、あのね

司会 違いますか!?ハイ。

菅原 確か11年振りじゃないかな?

司会 失礼いたしました。2年の差は大きいでございます。

菅原 これはきっとね、この主人公のゴダケンという主人公が13年の刑で刑務所に入っていたから、きっと語呂合わせでね、そうしたんだろうと思いますね。

司会 あぁ、すみません、2年ちょっと多くしてしまいました。ということで、刑務所から13年振りに五代家に帰って来たんですね、グランパ、ゴダケンさんこと五代謙三を演じました菅原文太さんです。それではご挨拶お願いいたします。はい、今の一言じゃ困ります。お願いします。

菅原 最初なの?

司会 はい。

菅原 ....(照明が)眩しいねぇ。あの、まぁこんな時節柄、まぁ良うお運びいただいてありがとうございました。え、あの最近は、もうここ数年なんですけど、映画とかテレビの依頼が、飛騨の山奥にいるもんですから、電話とか何とかで入って来るんですね、FAXとか。そうすっと、我が社のマネージャー氏が、マネージャー氏ったって、女房なんですが、「あんた、どうします?こういう仕事入って来てるんですけど、やめますか?」「そうだなぁ..」っていうやりとりなんですね、いつも。それであの、やめることが多いんですが、「今度は原作とシナリオが送って来てるわよ。読んでみますか?」でね、読まなけりゃ良かったんだけど、筒井さんの原作を読んでみるかって。で、冒頭にね、「囹圄(れいぎょ)」という言葉が、「囹圄(れいご)」、これあの田舎の蔵の中にしまってある、錆付いた日本刀みたいな、今使われないような言葉なんですね。私しゃ年だから「あぁ、懐かしい言葉が出てきたなぁ」。念のために広辞苑、辞書引いてみたら、「罪の有る人を幽閉するところ」とか、そんなふうに書いてあるんですよ。だから年だから思い出すのは安政の大獄だとかね、梅田雲浜だとか吉田松陰が獄死してるなとか、バスチーユ監獄のジャン・バルジャンなんていうのをね思い出したな。そしてその囹圄という言葉をキーワードにこの物語が始まって行くんですよ。これがあの筒井さんの罠の一つなんです、最初の。それでまた読み進んで行くとね、主人公が13年の刑を終えて出所するシーンから始まって行くんですよ。これがまた罠の二つ目でありまして。で、70歳と書いてあるんですね。これがまた立ち回りが出てくるんですよ。これが三つ目の罠でね。三つだけかと思ったら、監督から手紙が来てるんですね。これ開いて読んだら、「この役はあんたしかいない!」って書いてある。根が馬鹿なもんだから、その四つの罠にね、つい引っ掛かった猪みたいなもんでね。「1ヵ月、足利市でカンヅメです。」と言われてたから、「できるんなら隣の高山市でやってくんないかなぁ」って言ったら、「それはダメです。」ってんで、足利市に1ヶ月カンヅメになって、東監督にコキ使われました。自分はまだあの見てないんで、どんなふうに仕上がったのか、撮影中、監督の東さんが動き回って、私と同じような年なんですが、屋根の上にまで登ってね、「ヨーイ、スタート!」なんてかけて、上を見ながら、「大丈夫かな?転げ落ちなきゃいいがな」なんて思って見ていたような撮影だったんですよ。大体あの監督がワサワサワサワサ動き回ってるときの映画は出来が良いんですね。あの椅子に腰掛けて、じっと腰掛けて「用意、スタート!」なんてかける映画はたいしたことないんです。東さんが楽しそうに動き回って、大きな声出したりしてたから、ひょっとして面白い映画に出来上がってるかもしれません。どうぞごゆっくり見てください。どうもありがとうございます。

司会 菅原さんありがとうございます。ずっとお話しを聞いていたい気もしますが、後ろで石原さんが「グランパ!」ともう今にも声をかけそうな感じで見つめていらっしゃいました。
続いてはヒロインの五代珠子を演じました石原さとみさん、お願いいたします。今回の作品、石原さん、デビュー作ということですね。初めて映画の撮影に臨まれた感想をまずお願いいたします。

石原 五代珠子役の石原さとみです。昨年8月末にホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリをいただき、この映画がデビュー作、この「わたしのグランパ」がデビュー作映画となります。初めて台本をいただいたときに、まだ芸名が付いていなくて、「五代珠子」の下に白い空欄でなんですけど、芸名をいただいて、「石原さとみ」っていうシールを貼ったときに「あぁ、私この役やるんだぁ。」という実感が湧いて来たのを憶えています。初めて映画を、撮影に入る前日とか、眠れないほど緊張してたんですが、菅原文太さんに「珠ちゃん!」と呼んでいただき、すごく安心していられたのを憶えています。そんな感じです。

司会 はい、ありがとうございます。石原さんは菅原さんのことを何て呼んでたんでしょうか?珠ちゃん!って言われて。

石原 はい、菅原さん!って。

司会 (笑)

石原 役ではグランパですけど、はい。

司会 なるほど。そのお二人の関係も、ねぇ、お話しを後でうかがいたいと思います。
続きましては、いっぱい罠を仕掛けられたと、菅原さんはおっしゃってましたが、原作者であります筒井康隆先生、お願いいたします。

筒井 え、どうも今日はお運びくださいましてありがとうございます。私が「時をかける少女」を書いてから40年経ちました。「七瀬シリーズ」を書いてからでも30年、「文学部田川教授」から15年、そして今、「わたしのグランパ」が映画化されたことによって、新しい傑作になろうとしております。皆さんはその立会人です。自分はその「時をかける少女」を封切りのときに見たと言って自慢する人がいます。皆さんもこれから30年後、40年後に「ワシはグランパの試写会に行った」と息子さんやお孫さんに自慢をなさるかもしれません。もっともその頃は私はとっくに人間の形はしておりませんけれども。私達の願いはこの新しい作品をとにかく光り輝かせていただきたいと思います。石原さとみも光り輝いております。それから菅原文太さんは先ほどから焼酎をだいぶ飲んで酔っ払っております。とにかくこの「わたしのグランパ」、これを傑作にしていただくのは、皆様方の声と力です。よろしくお願いします。サンキュー!

司会 ありがとうございます。 それでは、演出を手がけられました東陽一監督のご挨拶をお願いいたします。

えっとあの、菅原さんの独演会風の語りを聞いていて、何を喋るか忘れちゃったんですけど、あの、こういう場所で監督が言うセリフというのは大体決まり文句がありましてね、「素晴らしい原作をいただいて、素晴らしい俳優さんに恵まれて、とても楽しい仕事をしました。どうもありがとうございます。」っていうのが決まり文句なんですけど、そういうのつまんないんで自分の言葉で言いますけど、え、いや、素晴らしい原作をもらって、素晴らしい俳優さんと一緒に仕事をして、とても幸せでございました。最後までごゆっくりとご覧ください。

司会 ありがとうございます。東監督から「幸せだ」という言葉、いかがですか?菅原さん。

菅原 は、はぁ。

司会 ちょっとお顔がね、赤いようで。ハイ。
どうですかね?じゃぁ東監督の方から。

監督として今日初めて聞きますけど、本当は撮影中ですね、「あの監督の馬鹿野郎!」とか思ったことないですか?

菅原 いや、それはないよ。若い頃はね、しょっちゅう「監督の馬鹿野郎!」って思ってたんですよ。過酷なこと要求するでしょ?監督ってのは、自分がやらないから。やんないでいいから。でも最近はね、もう、やるときは俎上の鯉と思ってるんで、あのどうにでもしてくれ!っていうことだから、素直だったでしょ?

だから、内心は「監督のバカヤロ」って思ってるけど、昔のようには言わなくなっていうことですか。

菅原 そんなことない。あの、監督次第だね。東さんも優しいから。

優しい男ほど恐いんですよ。

菅原 恐いんですか?(笑)でも本当に1ヵ月カンヅメになったとは言いましたけど、とても楽しい日々でしたんで、それだけは本当です。はい。

司会 菅原さんといいますと、一昨年あの「千と千尋の神隠し」の釜爺、あの「えんがちょ!」っていうの、あれがとても最近は..

菅原 あのね馬鹿だからね、何でもおだてに乗るとねすぐにやっちゃうんですね。でもあれも楽しかった。

司会 今回はでも映画ですけど、やはり映画というのは、どうでしょうね?映画の魅力といいますか、出演されて、やっていらして。その辺のとこちょっと語っていただけたらと思うんですが。

菅原 映画はね、昔のようにこの大概の映画がみんな騙しおおせたんだけど、お客さんを、今はもう、もっと非常に多様化してるでしょ?映画だけでなく、ドキュメンタリーもあり、ニュースもあり、色んな物がもう氾濫してる時代だからね、映画も昔のようになかなか騙しおおせなくなって、ちょっと隙を見せたり、やっぱり怠けたりダメだったりすると、もうすぐそれが見られるから難しいですよね。昔はこんなこと(注:見栄を切る)しただけでお客さん喜んでくれた。だけど今はそうは行かないから、そうですね、それは俺に聞くより、そういうことは監督に聞いた方がさらにいい返事が。

司会 そうですか。

いや、私は司会やりますから。

司会 はい、お願いします。

筒井さんに伺いたいんですけど、石原さとみ君がそのグランプリを取ったときの審査員の審査委員長、あの6人くらい審査員がいたと思うんですが、審査委員長をやってらっしゃいましたけれど、僕はずっと黙っておりましたけど、ちょっとなぜ彼女がグランプリになったか教えていただけますか?

筒井 それは私が一番に彼女を推薦したんです。私が選んだ。そしてその後監督とも意見が一致して、ね。とにかく、そうですね10人いたんでしたっけ?候補がね、10人の中で、私はこの中で珠子ちゃんが怒るシーンがありまして、怒った顔の上手い女優さんでなきゃだめだ、皆さん怒った顔をして下さいと言ったら、みんな表情変わらないんですね。心の中じゃぁ怒ってるのかも知れないけど、内面的な演技でもって表情が変わんない。恐い顔したのが彼女一人だった。で彼女を選びました。そういうことですね。

司会 なるほどね、本当にダイヤモンドの原石のようですけどね、キラキラしていて。

筒井 いや、もうダイヤモンドです。

もう原石じゃない。

司会 もう鼻高々ですからね。本当にお三方のおじいちゃまっていうか、おじ様方に囲まれて...失礼しました!石原さん、ね、皆さんの中で大変じゃなかったですか?大丈夫でした?楽しく?

石原 はい。優しくしていただいたんで。

司会 そうですか、安心しました。ありがとうございます。
さぁそれでは上映させていただきますが、東監督からご覧になる方へ最後に一言お願いします。見所ですね。

あの、見所は一番最後のローリングタイトルにありますから、最後まで見ないと、途中で帰ると損しますから、最後まで見て下さい。

司会 それでは本当の本当、最後に菅原文太さん、お願いいたします。

菅原 いや、もういいよ。見て下さい。

司会 そうですか、わかりました。ありがとうございました。


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更新:2003.03.08(土)
obuchi@yk.rim.or.jp