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祝公開!「eatrip」舞台挨拶

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梅雨も走り、雨ザーザーの6月6日、恵比寿ガーデンシネマにて「eatrip〜食の記憶〜」が先行公開された。 初日舞台挨拶には、監督と私的にも親しい出演者二人に、赤ちゃんまで加わり、アットホームな舞台挨拶となった。

ご出席(敬称略)
野村友里 監督
浅野忠信
UAと、その令嬢
イトウソウケン(?:司会)

浅野さんのいでたち
  • 無造作セミロング/不精髭
  • Vネック白T
  • 白綿シャツ
  • ストレートの紺ジーンズ/ポケットにサングラス
  • ソールが白い、黒スニーカー
  • ごついスタッズのリストバンド
久々のラフ

<川崎上映後の舞台挨拶より>

司会: まずは第1回目を見ていただいたお客様に、監督から一言ずつご挨拶を、お言葉を。

監督: 見ていただいた方ですよね? ありがとうございました、本当に。 あの、見終わってからの方がたぶん、あそこはどうだったんだろう?とか、このことが聞きたいなとか、色々質問したくなるんじゃないかな?っていうふうに私は思ってはいるんですけれども、今日はちょっと短いんですけれども、そんなエピソードも話せたら、また見ていただけるかな?なんて思ってるんですが、はい。

司会: 二度三度と?

監督: ハイ、思っています。

司会: 浅野さん、どうぞ。

浅野: えー、そうですね、僕はけっこう早い段階から、この映画の話を聞かしていただいて、早い段階も何も、結局一番最初はたぶん、もしかしたら友達でもらったのは僕かも知れないんですけど、まぁ友里ちゃんとは前から知り合いではあって、それで僕がまぁ映画の仕事をしてるもんですから、それであの、私はこれくらい料理の仕事をしていて、そういうのを何かこう映像を通して、食卓というものを表現したいっていうふうに聞いて、それはやっぱり、すごいピュアだなと思いましたし、すごい興味深い映画だなと思ったんで、僕はその、どうしようか?どうしようか?って言う話になって、何か内容を考えてよって言われて、僕色々こう、その日の内にもう、けっこう4本くらい短編というか短ーい文章で、もう本当食卓の話を書いたんです。 で、持って行ったら、全然違うからって。

司会: (笑)全然違ったんですね?

浅野: 全然違うって言われましたね。 あ!こういうことじゃないんだなって。

司会: 違う違う違う、本当面白くて、その5本のね、ショートストーリーが。 あ!こうやって映画って作って行くものなんだなって、逆にすごい学んだんですけれども、そのときは、私はこれは出来ないし、だから忠信君に、監督やってよ!って言ったら、断られたんです。 それで、結局ね。

浅野: そうですね。 僕はその元々の発想がないんで、話聞いてる身だったんで、それは僕がやることじゃないなと思って、それでもう、絶対やった方が良いだろって。

司会: 話違いますもんね、最初から。

浅野: もう全然。

司会: 監督やってよ!はない。

浅野: それでまぁ、あれよあれよという内に、こういうふうにきちんとした映画として、制作が進んで出来上がって。 僕はだから、本当にその、どうしよ?どうしよ?ってずっと言われてたんで、大丈夫かなぁ?っていつも思ってたんですけど、現場でもけっこうしっかり監督なさってましたし、出来上がりを見たとき、何よりも、すごいやっぱ僕等普段映画撮ってる人間では撮れない映画だなと思ったんですね。 それがやっぱすごい僕にとっては新鮮で、あ!こういう気持ちだから映画が撮れるんだなっていうふうに思いましたね。

司会: UAさん、お願いします。

UA: はい。 あ!私ですか? そうですねぇ、何言えば良いんだろう? よくね、ここ映画見に来てて、何かこうやってこっち側から見るのが初めてだなぁと思って。 意外と少ないんだね。 何人いるの?これ。 ん?あ、お詳しい。 116名いらっしゃる。 感想聞きたいよね、逆にね。

監督: そうですねぇ。

UA: どうですか? 自然な感じで? お腹が空いた? お腹が空いたんだって。 お腹空きますよね、丁度お昼だもんね。 何かね、今浅野君の話聞いてたら、何だ!私に最初に言ってくれたんじゃないんだ? 何か、ガーン!みたいな。 っていうやり口でみんなに言ったんでしょ?

監督: 違うぅ!

UA: あなただけに言うのよ、私ね。 それがね、こんなことになって、まぁ何か、何だろう?奇跡のような、何か言ってたことが本当になっちゃうんだねっていう日なんですね、今日は。 だってね、料理作る人だもんね、普段は。 何で映画撮ろうと思ったの?

監督: まぁ料理ってすごく儚いものじゃないですか、普段私がずっと色々作らせていただいていて、それはもう公私っていう境界線がないんですね、基本的には。 結局、他人のために作るから、そこに後から仕事だろうが、仕事じゃなかろうが、そこに対するエネルギーっていうのはさほど変らない。 労働から見ると変らないもんなんですね。 まぁ表現を担当させてもらってるときには、ちょっと遊ばせてもらうときがあるんですけども、そんなふうな人の繋がりと空間との気持ちとか、共有とか共存とか、そういうことを考えているうちに、何かこう 時代性から、こう何だろう? 食育だとか、何が大事なんですか?とか、生き方は?とかいう質問を投げかけられるときに、言葉で表すことではないし、感じることなんじゃないかな?っていうふうに感じていたときに、一つの私なりの考え方の表現方法として映像というものが一番共鳴するんじゃないかな?っていうのが一つのきっかけだったんですけれども。 まぁその中の強烈な印象を受ける人たちの中の二人がここに立ってる二人でもあり、本当に二人に同時に相談させてもらっていて、二人に断られたの、私。 私はこの空間を作るのは得意だったので、そういう場を作るから、やっぱり監督作業とか、映画のもの作りってことはまた全然違うフィールドだと思ったので、得意とする二人にお願いをしたくて、ター君、浅野さんにお願いしたら、「いやぁ、それは違うでしょ? 自分でどんどんやりなさい!」 って言われて、でUAにお願いをしたら、「私、監督も出来るよ。」って

UA: 「出来るよ。」って(笑)

監督: 映像の出身なんですよね、UAはね。

UA: あぁ、いやいやいや。

監督: そう、そしたらね、「ごめん、アルバム作らなくちゃいけなくなったから忙しい。」ってストップがかかって、えーっ!みたいになって。

UA: 沖縄でさ、沖縄の小っちゃい島で、ある晩に告白されたんだよ。 何かさ、盛り上がっちゃうじゃん? でも実際になると、そんな無理だしって感じだし。 で、妊婦で出るからっていうふうになったんだよね。 したら、妊婦役を丁度探してたって言って、それが私だったっていう。

監督 そう、色んなタイミングがあって、結局後押しみたいな形になって、こういうふうに実現出来たってことなんですけどね。

司会: 初めての監督なんですが、ご苦労とか喜びとかは?監督してみて。

監督: 何でもたぶん苦労と言えば苦労だし、苦労じゃないと言えば、こうやって立ってること自体で生きてるわけですから、きっと越えられない山じゃなかったんだなと、もちろん思うんですけれども、一番ドキドキしたのは、やっぱりその出てくださってる皆さんが、迷惑ですって言われたらどうしよう?と思って、本当に。 だって、ねぇ、その世界で生きてるから、傷付けちゃいけないし、UAもよく考えたら、ものすごい全国にファンがいて、どうしよう?と思ったし、後、築地の方も沖縄の方も、結局出ることが生業としていないので、もしかして余計なことをしてしまったらどうしよう?と思ったんだけれど、まぁ作り終わった後に、出演者の方から一応温かい言葉と笑顔を見れて、ほっとしたんですけどね。 それだけですよね、一番最初のハードルは。

司会: 監督の監督っぷりはどうでしたか?浅野さん、UAさん。

UA: うーん、”カントコ”って感じだったね。 カントコーっ!

司会: 浅野さんは?

浅野: そうですね、そのスタッフの方が、僕はもうけっこうずっと一緒に映画を撮って来た方が多くて、みんなでつっ込み入れながら、「監督、ここはこうなんですよ。」って言うと、もう逃げちゃうようなノリで、はぁ?見たいな感じで。「誰かがスタートかけてよ。」とか、そういうとぼけたことばかり言ってて、あれはひどかったね。

司会: あれは違うんです。 カット!って言うのが言えなかったの、大きい声、恥ずかし過ぎて、ね。だから言えなくて、いちいちカメラマンさんの横で「カット、カット」って言ってたら、そう、浅野さんに「大きい声で言って!」って言われて、「はい」って言ってね。 でもこれねセリフがあるわけじゃないから

浅野: そうですよね。

監督: 流しっ放しで、良い話で盛り上がってるときに、カットって言えないから、すごくもどかしくて。 そこはね、なかなかフィルムで撮らせていただいたにもかかわらず、ねぇ。

司会: 浅野さんは、初めてのお茶会というか、お茶のシーンでしたが。

浅野: そうですね。僕は、だからお茶は初めてで、でもその千さんがすごい、お茶って何か緊張しちゃうじゃないですか、何にも僕知らないし、その作法とかも、すごい怖かったらどうしよう!って思ってたら、千さんが「そんなのどうだって良いんですよ。」って言ってくれて、「お茶なんて、本当に友達同士でお茶飲むのと同じような感覚なんですよ。」って言ってくれて、あぁ、そうなんだ!って、そういう感じですごいリラックス出来る状況を作ってくださって。 何かその、色々、作法とか知っていれば、より楽しめるって話を教えてくれて、それを聞いてたらやっぱりすごい、見方とか全く変ったんですね。 あぁ、なるほど!って。 本当に、遊ぶためのルールと言いますか、それが実はあって、それがお茶なんだなというふうに感じて。 だからすごい良い時間でしたね。

司会: UAさんの登場のシーンは、実際に食材に、畑に行ったり、そういう「eatrip」の中でも、かなり料理とか野菜とかに直結するところだったんですが

UA: はいはい、特にね、はい。

司会: とても自然体でお話されたりはしたんですが、

UA: 自然体ね。 いや、けっこう作ってますよ。 だって、ねぇ、まぁいいわ。 そうですね、玄米はね本当に作ってるんだけど、精米したりも本当にしてるんですけど、後何だっけ? 卵買いにか。 あれはたまーにしてます。 何て言えば良いんだろう? ごめんなさい、もう一回言ってもらっても良いですか?

司会: あのUAさんの出演されてるシーンで、UAさん自身から、あのシーンへの思いとかですね、こういうことだったのよみたいなことをお聞かせ願えれば。

UA: あぁ、なるほど。 そうですね、私、一人っ子だったんですよ。 自分で、自分でしゃべってるとこ覚えてなかったの。 けっこう、もっとしゃべってて、歌歌ったりとか色々したのに、全部カットになってて、しゃべってるとこ、自分でももう一回聞いたんだけど、あぁ、私って本当一人っ子の性格なんだなぁって思いました。

監督: わかる。 コミュニケーションのところの会話で、一人だぁーっと食べてたんですよ。

UA: そう。 それは何だったんでしょう?

監督: すごくそれを思ったんだけど。

司会: それを実際自分で見て?

UA: そうそうそう。 自分が本当にそうだったんだなぁって。

司会: 監督は、エンディングロールへの思い入れが実はたくさん詰められていると聞いたんですが。

監督: そう、まぁね、それはちょっと作り手の勝手な思いがあるかもしれないんですけど、ただエンディングロールの方にも色々な人の手書きの絵があったりとか、一番最後に、それが最初のタイトルに繋がるっていう、全てが繋がったり、色んな人の気持ちが入ってるっていうところで、ぜひそこまで見ていただきたいなっていう思いがあったのと、後、私は、映画の中で色んな音があるんですが、特にエンディングロールの音が好きで、あの音楽を作ってくれた青柳さんは、UAの家に遊びに行ったときに、打ち合わせに、UAがちょうどそのときに何を作ってくれたんだっけな?何かね、お庭になってたお野菜をササッと作ってくれて、それを食べて、お茶をして帰ったんですね、そのときに青柳さんが、あぁ、こういうことなんだなと思って、帰り道に降りて来た曲っていうことを聞いて、それも合わさってますね。

司会: 後、音楽と言えば、浅野さんの登場シーンもかなりこだわられたとか聞きましたよ。

監督: あぁ。はい、お茶のシーン、すごい好きなんですけど。 あそこはね、千さんと浅野さんを初めてあそこで引き合わせたんですね。 引き合わせたっていうか、会ってもらったんですけれども。 そのときに、さっき浅野さんに説明していただいたんですけど、堅苦しさを伝えたいんじゃなくて、千利休じゃないですけど、伝統ってのは革命とか革新があって、それで化学反応があって新しいものが生まれて続いて行くっていう考え方なんですね。 なので、何となく千さんっていうと、私はやっぱり伝統だからクラシックとかそういう音楽のイメージがあって、浅野さんっていうとロックとかパンクとかそういうイメージがあったので、その融合っていうところも妙な取り合わせで表したいなと思って、ちょっとそういうジミヘン風の音楽、地球のところの映像で流れてたと思うんですけど、あれは忠信君の頭の中をイメージしてるんです。

浅野: 聞きたいでしょ?

UA: (笑)

司会: 監督、実は昨日発表があったんですが、実はですね、第33回モントリオール世界映画祭、ドキュメンタリー・オブ・ザ・ワールドに正式出品が決まりまして、これは快挙なことですよね?浅野さん。

浅野: そうですね、素晴らしいと思います。 頑張ってください。

司会: それを聞いたときのご感想を、監督。

監督: ねぇ、ありがたいなぁって本当は思ってるんですけど、今はまだ全然時間がないし、本当にそれよりも出演者のこととか、今ここにいらっしゃる皆さんが、良かったなとか、何かしら気付きがあれば、今はそちらの方がすごくしみますね。 でもすごいことですよね。

浅野: すごいことですよね、はい。 プレッシャー感じてください。

UA: おめでとう。

浅野: おめでとうございます。

司会: 今日初日で、一番最初のお客様たちなんですが、感慨もひとしおだと思いますが、最後にお一言ずつ、感謝の言葉なりメッセージなりを言っていただければと思うんですが、UAさん。

UA: そうですね、ここで6月6日にこうして会えたのも何かの縁でしょう。 私もこんな毎日で、食もまた改めて見つめ直してる毎日なんですけど、東京で暮していると、なかなか本当の美味しいもの?そのいくらでもお金払ったらね、毎日飾り立てた美味しいものはあると思うんだけど、本当に美味しい自然の、それも大地のエネルギーが摂れるような食べ物を早くみんなが思い出せるようになれたら良いのになと心から思ってます。 なので、また良かったら一緒に散歩でもやりましょう。

司会: あとUAさんは、その監督を断られたきっかけになった、15周年の節目ということで

UA: あぁ!監督を断った、てか妊娠したりしてね、そっちの方が大きかったんだけど

司会: 7月にニューアルバム

UA: あぁ!私のこと?良いんですか? 皆既日食の日、7月22日にアルバムが出ますのでよろしくお願いします、なんて。

司会: 今めでたい続きなんで、ぜひ映画を見た方はお楽しみいただければと思います。

UA: はい。

司会: 浅野さん。

浅野: はい、そうですね、さっきも話したように、食卓を通じて何かと色々と感じることがあるっていうのが気付いたし、それでこの映画が出来上がったときに、やっぱり、考えてみたらこうやって色んなところで食に関わってる人もいるし、みんなをそれを口にしてると思って。 そう考えたら、より食事が楽しめるようになったんですね。 だからそういう時間をやっぱりもっと大切に出来ればっていうことを教えてもらったんで、そういうところも含めて見てもらえたら嬉しいと思うし、今日は本当にありがとうございます。

司会: では最後に監督、ビシッとお願いします。

監督: 本当に今色んな選択肢があると思うんですけれども、食っていうのを味方につけとけば、けっして悪いことじゃないなと思いますし、ここにいらっしゃる方も良い大人というか大人だと思うんですけれども、あと私が何年生きれるかわかんないなと思いつつ、やっぱりその一つ一つの食卓をね、誰と食べようかなとか、何を食べようかなとか、これが食べたいんだって思うと、結局それが何か人生に繋がって行くなと思っているので、良かったらまた見てください。 ありがとうございました。

司会: 今日はお忙しい中ありがとうございました。


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更新:2009.06.08(月)
Kaori