TA060114

初競艶!加瀬 VS 浅野トークショー

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カラカラの厳冬から一変して、激しい雷雨に見舞われた1月14日深夜、渋谷シネアミューズ開館10周年記念「日本映画堪能ナイト」にて、作品外では初顔合わせとなる、劇場ゆかりの二大俳優のトークショーが催された。

演目
風花
ロックンロールミシン
アカルイミライ

ご出席(敬称略)
浅野忠信
加瀬 亮
越川道夫(司会:スローラーナー)

浅野さんのいでたち
  • 下ろした長い髪/しっかり髭
  • 紺のジャンパー
  • 黒のパーカー
  • 黒のパンツ
  • 黒の革靴
会場の照明が色付きなので、服の色、素材が???

<上映前のトークショーより>

司会: それでは満員のお客様にお一言ずつご挨拶をいただきます。 浅野さんから。

浅野: 今日は雨も降ってて、こんな夜遅くにありがとうございます。 シネアミューズはですね、本当に、ここが出来て一番最初が是枝監督の「幻の光」という映画で、本当にずっと一緒に何かこう色んな映画を皆さんに見てもらうことが出来たんで、僕にも本当に大切な場所なんで、本当に今日を迎えられて嬉しいです。 ありがとうございます。

加瀬: 今日はありがとうございます。 この劇場、僕が主演のときはほとんどこの劇場でかけてもらってるんで、非常にお世話になってる劇場なんで、今日は呼んでいただいて嬉しく思ってます。 よろしくお願いします。

司会: (客席に)近いよね?

浅野: ハイ、そうですね。

司会: いつも思いますけどね、客席とね。

浅野: これはなかなかないですからね。

司会: これはなかなか、いじりたくなりますよね?前の方、思わずね。 なので気楽に話が出来ればなぁと思うんですけれど。 ここで上映された浅野さんの作品というのは、「幻の光」、「地雷を踏んだらサヨウナラ」、「孔雀」、「風花」、「アカルイミライ」、「地球で最後のふたり」。 けっこうありますね。

浅野: はい。

司会: 加瀬さんも作品は「ロックンロールミシン」、「アンテナ」、「アカルイミライ」、「カクト」、「誰も知らない」、「パッチギ」、「スクラップヘブン」。 多いですよね。

加瀬: 多いですね。

浅野: 「アカルイミライ」は一緒に

司会: 「アカルイミライ」は、でも絡むシーンはないですよね?

加瀬: そうですね、はい。

浅野: 一応、兄弟。

司会: 一応兄弟だけど、死んじゃいますからね、後で出て来る兄弟。

浅野: そうですね。

司会: どうでしょ?この作品の中で、まぁ今日は「風花」、「ロックンロールミシン」、「アカルイミライ」の3本が上映されるんですけれど、何かこの中の映画ですごく印象に残っているエピソードなり作品なりというのはございますか?

浅野: そうですね、まず亮とは、どっちが先だっけな?先が

加瀬: 香港が先ですね。

浅野: 「孔雀」っていう映画で香港に来てもらってて。 最初、だから事務所に入ってもらってたときに、まぁちょっと現場を見てもらおうということで

司会: えらいところから見せましたね。

浅野: イエ。 それが一番最初?

加瀬: えーと、一番最初は、あ!「鮫肌」の現場に1日だけ見学に行って、その後本格的に一緒に付いて現場を見せてもらうようになったのが「孔雀」ですね。

浅野: 「孔雀」はもうみっちり、香港とか新宿とか、沖縄も行ったよね?

加瀬: 沖縄は行ってないです。

司会: 「地雷を踏んだら」は?

浅野: 「地雷を踏んだら」もそうです。

司会: その辺りでは「白痴」も?

浅野: そうですね、「白痴」もあって、「地雷を踏んだら」も大変でした。

司会: どこが大変だったんですか?そんなに。

浅野: 何が大変だったんだろうね?

加瀬: いきなり初日から入院ですからね。

浅野: 初日から入院して

司会: 初日に入院したんですか!?

浅野: そうですね、最初にちょっと慣れるというので、まぁ1週間か8日間位前にタイに入って、でまぁそのときは全然大丈夫だったんです。 じゃ、いざ初日を迎えて、撮影の初日を迎えた日に、その初日の撮影現場がバンコックとはちょっと離れた所だったんですけど、前の日に車で移動してるときにもう、もう駄目だ!という状態だったんですね。 もうお腹が壊れまくってて、ちょっと熱も出てて。 それで着いて休んでて、次の日初日迎えたときに、戦場を走るシーンだったんですけど、走って、もう駄目です!って。 それで病院行ったんだよね。

加瀬: でまぁ僕が思い当たったのが、その前の日に、浅野さんと一緒にデザートを食べてて、浅野さんのアイスクリームの上に何か変な色のゼリーが載ってたんですよ。  「亮、これ大丈夫かなぁ?」って言うから、大丈夫じゃないですかって。 それが多分原因だったなぁって思って。 で入院して、僕夜ずっと病院に付いてたんですけど、点滴打ったらすっかり元気で、何か「吉牛買って来い! 吉牛買って来い!」って言ってて、いや、ないからみたいな。 まぁ二日目からは全然大丈夫だったんですけどね。

浅野: でも撮影は大変だったよ。

加瀬: 撮影はもう超大変でしたね。

司会: どんなふうに大変?

浅野: 何か、日本のスタッフだけでも撮影出来る位の人数が行ってたんですけど、そこにタイのスタッフもいるんですね、それが一緒になるとむしろ問題が起きて来るんですよ、俺が正しい!俺が正しい!っていうか。 それでまぁ、日本の撮影だとどうしても、どういう流れになるかわからないじゃないですか、でまぁ夜中までかかったりもするだろうし、でもタイの人にはそれが信じられなかったりして。 軍の人からジープ借りて用意してたりして、本隊が色々走り回って、一向に帰って来なくて、今日ジープ要らないんじゃない?って、勝手に返しちゃうんですよ、タイの人は。 本隊がやっと疲れ切って帰って来て、じゃあジープの撮影行くか!っつうと、もうないんですよ。 えぇっ!とか言って。 それで何かまた問題が起こったりとかで、何かそういうところがあって。 もう最悪なときは、川にカメラが落っこちましたね。 

司会: えぇっ! 高いですよ、カメラ。

浅野: 16ミリだったんですけど、丁度フィルムを換えたばっかりだったんで、それだけでも良かったなと思います。

司会: 加瀬さんはその映画の現場を見るっていうか、そういうふうに体験するってのはその辺りが初めての経験になるんですか? そうでもないんですか? 例えばその「孔雀」とか

加瀬: そうですね、でも「孔雀」のときはまだ、もう本当に何もわかってない状態で、浅野さんが演技してる間とか、僕は他のスタッフとずっとくっちゃべってたりとか、本当どうしようもない状態だったんですけど、「地雷」はけっこう、「白痴」で段々、何となく現場での立ち位置とかわかって来て。 わかってるって、最初は一番下なんですけど。 「地雷」のときはけっこう一生懸命やった覚えがあるんですけど、でもそれでもかなりたくさん失敗して、「地雷」とかってけっこう、三日間全く寝れないとか、そういう状況の中でやってて、何かカンボジアか何かに行くときに、撮影の最後の方だったんですけど、いつものように浅野さん起こしに行って、そうしたら浅野さん部屋にいないんですよ。 で、時間もうすぐなのになと思って、それで色々辺り探したんですけど、全然いなくて、で丁度社長も来てたんで、「浅野さんいなくなっちゃいました。」って言って、それがまぁ、ちょっと大きくなって、警察まで来る感じになっちゃって

司会: 失踪だ。

加瀬: そのときにパッと思い出したのが、浅野さんの部屋[206]じゃなくて[205]だ!と思って。 だけどもみんなすごい騒いでて、やっべーな!と思って。 で、そーっと[205]に行ったら、いるんですよ。 電話したら、「もしもし」って起きて来て。 そういう何か失敗ばかり覚えてますけどね。

司会: いや、それはちょっと追求しようか。 どういうふうに収拾がつくの ?そういうのって。

浅野: いや、俺全く、今初めて知りましたね。

加瀬: いや、もう僕は、浅野さん覚えてないかもしれないですけど、僕は謝って、社長にも謝って、監督にも謝りましたね。

司会: あ!謝ったんだ。

加瀬: 謝りましたね。

司会: へぇ。 何か漫画みたいな話

浅野: そうですね、全然、僕が見てないだけなのかもしれないけど、全然知らなかったですね。

司会: あ!そうなんだ、全然知らなかったですか。

加瀬: けっこう付き人のとき、失敗してるんですよね。

司会: 言えないこともあります?

加瀬: 「白痴」の現場でも、浅野さんが中で芝居してて、何かすごい静かなシーンで、僕外で待ってるの暇だったんで、ちょっと歩いてて、そしたら蛙がいたんで、蛙を捕まえようと思って

司会: ちょっと待って!なぜ蛙を捕まえようと?

加瀬: いや、暇だったんで、蛙を捕まえようと思って、蛙を追っかけてたら、池に落ちちゃったんですね。

司会: 自分が?

浅野: それは覚えてますね。

加瀬: ドボーン!といった瞬間に「カットォ!」って聞こえて、「誰だぁっ!?今の音出したのは。」

浅野: それはヤバイ。

加瀬: それも本当に謝って。

司会: それはシンドイね。

浅野: 謝るしかない。

加瀬: けっこう、今になって思い出すと、ヘマばっかり。

司会: いや、ごめん、今ね、その初めて映画の現場に触れて、加瀬さんは、いや本当にこんな大変な現場ばっかりで、映画の世界っていうのはシンドイものだとか、いやこんな世界ではここは居れないと思ったか、そういう話を引き出そうと思ったんですけど、けっこう天真爛漫にやってますよね。

浅野: そうですよね。

加瀬: いや、本当に体力的にキツイと思ったのは「地雷」ですね。 後はやっぱり、おっしゃってくれたように、楽しいですね。

司会: 大体この二人は何で出会うの? どこでどうやって出会うの?

浅野: 履歴書? 何か受けたの?

司会: 普通の就職みたいに?

加瀬: まぁでも手紙送って

司会: それは浅野さんに対して?

加瀬: はい。 もちろん履歴書も入れて。 それで丁度社長が3回位面接してくれた後に、とりあえず浅野さんと会ってっていうことを言われて、それで何かスパイラルの前か何かで待ち合わせして。

司会: 待ち合わせして

加瀬: 僕はかなり緊張して、役者をやりたい!って思いを伝えなくちゃと思ってたんですけど、覚えてるのは、フジロックの話を

司会: 全然映画の話じゃない。 役者と全然関係ないじゃない。

浅野: 地元の友達が繋がってたりするんですよ、横浜どうしなんで。 それでそういう友達の話とかして、ええ、そういう話しか覚えてないですね。

司会: そのときの加瀬さんの印象というのは?

浅野: いや、でも変わらないですね。

司会: 今と?

浅野: ええ、何かこうジーパン履いて、今日はジーパンじゃないですけどね、茶色いブーツを履いて来てたのは覚えてますけど、雰囲気は変わらないですね。

加瀬: 僕も、でも浅野さんの印象は全然変わらないですね。 これけっこう珍しいことだと思うんですけど。 何か段々、長く付き合ってると色んな面が見えて来て、印象が変わって行くんですけど、浅野さんは全然最初に会った印象と変わんないですね。

司会: その後皆さん色々な作品にも出られて、ここでも多くかかってるわけですが、浅野さん、何かすごく印象に残ってる作品って、さっき控え室でも「風花」のね

浅野: そうですね、ついこの間の、確か台湾の映画祭に行ったときに「風花」見たんですよね。 見直して、すごく面白かったんですよ。 それであの台湾のお客さんもすごく喜んでくれてて。 やっぱりまぁ相米慎二監督との出会いが僕の中で大きかったんで、それでやっぱり改めて見てすごく面白かったんで、何か最近はやっぱ「風花」はちょっとブームになってたんで、ハイ。

司会: 相米監督とのその出会いというのが、すごい大きかったと今おっしゃいましたが、どんな点でですか?

浅野: その、いつだったかな?けっこう前に、この仕事始めるようになってすぐ、相米慎二監督の噂、「あいつ」という映画をやったときに、木村監督っていう人がまぁ映画祭とか行くと”第二の相米”みたいな感じで言われてて、だからソーマイって誰だ?って、僕は高校生ながらに思ってて、それでまぁ色々話聞いてたら、偏屈なオヤジがいて、とかって色んな人が色んな話をするわけですよ。 でまぁオーディションも確か「お引越し」かな?オーディションに行ったことがあって、そのときとかも、だから、大変だよ!とか言って、色んな、何かあんまり良い話を聞かないんですよ、恐いよとか、偏屈だよとか。 それでまぁあるときキョン2と相米さんがやるから、それで浅野君やらないか?みたいな話をもらって。 でキョン2は僕すごいファンだったんで、それは絶対やりたいと思って。 でまぁ噂に聞くその相米慎二監督なんで、嫌だなぁと思ってたんですよ。 

司会: 恐いと。

浅野: 正直ちょっと恐いなと思って。 それでまぁ、でもまぁキョン2がいれば乗り切れるかなと思って、それでやりたいと思って。

司会: すごいエピソードですね。

浅野: そう。 それで何か僕が絵の展覧会をやったときに相米監督が来てくれて、そのときに会ったらすごい紳士で、別に大丈夫そうだなと思いましたよね。 で次に、じゃいざやるってときに、浅草の何か鶏料理屋で顔合わせしようといって、すごい美味しい鶏料理屋に連れて行ってもらって、そこで最初に監督が「浅野君は馬鹿だから」とか言って、「君は台本だけ読んどいて」とか言われて、えぇっ!と思って。 ほとんど初対面に近いのに馬鹿だからって言われて、何で知ってんだろうな?と思って、びっくりして。

司会: バレたかと?

浅野: ええ。 それで何か、逆に何かその言い方がすごく愛があって、あ!これは面白いことになるかもと思って。 でキョン2もそういう調子で、全然遠慮なく、何か好き勝手なこと言ってるんですよ。 で何か俺もすっかり巻き込まれて、でその日まぁ「もう一軒行こうよ!」なんて監督がうだうだ言って、何か他の所行って、さすがにみんな帰ると。 俺もやっと帰れるななんて思ったら、「浅野君、じゃもう一軒付き合え。」って言って。 そんで何かもう一軒何か連れて行かれて。 でもすごくやっぱそのときは面白くて。 みかんの皮とか食べてんですよ。

司会: どんなお話なんですか!?

浅野: それで撮影入ったら、やっぱもうその調子でずーっと面白くて。 ただ監督の中では何かこう、「俺はお前を味方につけて、俺は何しろキョン2を美しく撮りたいから、お前を味方につけて、一緒になってキョン2を美しく撮りたいと思ってたのに、お前は全く言うことを聞かない。」とか言って、「お前のこと今日から敵って呼ぶから。」って言われて。

司会: えぇ?何て呼ぶ?

浅野: 敵。

司会: 敵!?

浅野: 敵って呼ぶからって言われて。 はぁっ!?と思って。 それからもう毎日、お早うございます!とか言うと、「おう!敵」とか言って。

司会: タチが悪いよね。

浅野: ハイ。 いや、何かすごく面白かったですよね。 その調子でずっと撮影やってて。 で人の演技とかで賭けをしてんですね。

司会: 賭け?

浅野: もう何か「お前今日は絶対良い芝居しろ」とか言うんですよ。 何でかな?と思って、そりゃ毎日頑張ってますよ、とか言って。 で他の人も何かすごく期待してる目で見てるんですね。 何やってんですか?とか言って。 「いや、実は相米さんがね、小川さんに美味しいワインを、今日賭けに勝ったら飲ませてもらえるみたいだよ。」とか言って。 その賭けって何ですか?って言ったら「浅野君が良い芝居したら」とか言って。 え゛ーっ!と思って。

司会: それ、すごい漠然とした、判定しにくい賭けですよね?

浅野: そうですね。 そういうこと平気でするんです。 欠伸したら1000円とか

司会: やたらお金に、何かこう

浅野: 試されるんですよね。 えぇ、すごい思い出深くて。 それで何しろ、もうお芝居やる上で、本当に何も言わないんで、本当にやってて面白かったんですよ。

司会: 何かうらやましい話ですよね、それってね、聞いてるだけだと。

加瀬: 相米監督の作品の現場にいたというのが、僕はすごくうらやましいですね。

司会: 加瀬さんも「風花」ご覧になったんですよね?

加瀬: はい。 完成の試写会のときに一度監督にもお会いしたことあるんですけど。 「風花」ももうすごい好きな映画の一つですね。

司会: どんなところが?

加瀬: ちょっと本人を前にして嫌なんですけど、浅野さんめっちゃ面白いんですよね。 最初はあんまりお酒飲まれないのに酔ってる芝居が最初は面白いのかなぁと思ってたんですけれど、そうじゃないんですよね、何か。 普段の面白さにけっこう近いというか、人間として面白いというんですかね。 

司会: でもやっぱり相米監督は、ねぇ、数々の本当に逸話がある人で、女優に「四股踏め!」って言うんですよ。

浅野: ハイ? 四股踏めって?

司会: 夏目雅子さんが「魚影の群」のときに、「お前の足は地上から3cm浮いている。四股踏め!」って、衣装合わせで四股踏ませた。

浅野: あぁ、そうなんですか。

司会: その後、斉藤由貴さんにも四股踏めって。

加瀬: 何なんですかね?

司会: 夏目雅子さんがこう笑うと、撮影中にね、「その顔は『婦人画報』の表紙で見たことがある。」って言うんですよ。 ダメを出す。 すごくタチの悪いことを言う。 まだ一杯ある方ですけど、でもやっぱり女優さんをすごく美しく見せたい方で

浅野: そうです。

司会: うん、役者を演出するってことに、もう亡くなってしまったのがすごく、「風花」が遺作になるのが惜しいんですけれど、本当に役者を輝かせる、それだけに映画を撮ってるっていう印象がすごくする監督さんだと思いますけれど。

浅野: そうですね、それも何か、そういう何か、聞いてて美しいなっていう話、ほとんどないじゃないですか。

司会: ヒドイことが多いですよね。

浅野: ひどいときに、「用意、ハイッ!」ってやって、お芝居やって、「カット!」とか言って、「OK!」って言って、すごい何か嫌そうな顔してるんですよ。 何かひどいOKだなと思って、 浅野:「監督、全然顔がOKじゃないですよ。」って言ったら。 相米:「俺は痔を持っていて、痔の血がぴゅーっと出たんだよ。」って、 浅野:「俺の芝居なんかどうだっていいんじゃないですか!?」、 相米:「もう良い、今日はお終い!」とか言って。 すごい感覚してるなと思って。

司会: でもそれで浅野さんが良く見えたんだったら、まんまと浅野さん、罠にはまったのかも知れませんね。

浅野: はまりましたね。

司会: 相米さんのね。

浅野: かなりはまりましたね。

加瀬: 僕は、けっこう何度見ても、けっこうこの間何かお笑いの人達と競演して、お笑いの人達もみんなあれ大爆笑らしいですよ。

浅野: へぇー。

加瀬: 浅野さんがもう面白くて仕方がないっていう。

浅野: やっぱ相米さんが面白いからだと思うんですよね。

司会: 二人にすごく聞きたかったことを思い出したんですけれど、ネタバレになるのでやめます。 後でこっそり。

浅野/加瀬: あ、ハイ。

司会: 本当にね面白い。 まだご覧になってない方もいらっしゃるかもしれませんが、面白い映画なので、是非お楽しみにしていただきたいのですが、まだ上映する作品があるので先に進みますが、加瀬さんの、次は出演作で「ロックンロールミシン」は行定勲監督

加瀬: はい。

司会: どうでしたか? 思い出はありますか?

加瀬: 僕が今まで経験した現場の中で一番キツイ現場ですね。

司会: キツイ現場でしたね。 あれは僕も配給してたんで、現場にも寄りましたけど、みんな死んでましたよね。

加瀬: 死んでました。 12日間位ですよ。

司会: 撮影期間? そんなだっけ? 12日間位? 1週間とかじゃ?

加瀬: はい。 12日間、ほとんど家に帰れず

司会: てか、ずっといましたよね? あそこに

加瀬: 現場で1時間仮眠とか、そういうのが毎日続いてて、あんまり、だから覚えてないんですよね。 本当あまりにも眠た過ぎて、ほとんど、メイクさんとか「メイク入りまーす。」と言ったまま倒れてる。

司会: すごいな。

加瀬: 本当そういう現場だったんですよ。 だから、「地雷」のときに初めて3日間位寝ないの経験して、俺はけっこうもうタフだと思ってて、でも「ロックンロールミシン」はかなりやられました。

浅野: 監督はそういうときどうしてるの?

加瀬: 監督、寝てますよ。

司会: 監督寝てる!?

加瀬: カットかからないときはもう寝てて、後出演者の台詞が返って来なくて、見ると出演者も寝てて、本番中に。

司会: すごいね、それね、あんまりないことよね。

浅野: その、だからやっぱりメイキングが見てみたいなって思っちゃう。

加瀬: メイキングあったかな?

司会: メイキングあったかしら? 撮ってましたっけ? あんまり覚えてないな、俺も。

司会: 俺も何か、とにかく起きて、壁に体をぶつけて、ちょっと体を起こさないと

司会: あ!ガンガンぶつけてましたね。 おかしいよ、それ。

加瀬: いいんですよ。 指先とかでも、痛いんですけど、それでもけっこう寝ちゃうんですよね。 だから、「ヨーイ!」って言ったら、ぶつけて、それでも本番中にけっこう目が閉じて来ちゃうんですよ。

司会: はぁー。 嫌な話ですねぇ。 でもね、配給に関わらせていただいたので、現場に行って面白かったのは、技術の林田さんっていう美術の方が、加瀬さんとかね池内君とかがやっている、その服のデザインをやっているチームの部屋を作っていて、あの部屋の物語を一生懸命林田さんが作ろうとして、段々あの部屋が、こう物語が進むにつれて姿を変えて行くっていうのを、すごくプランニングして作っているのが、すごくこう美術、映画を見る上で、美術が物語を語って行くっていうのがすごくよく見えて、面白かったですよ。

加瀬: あの部屋はすごい居易かったというか、居易かったというのは、その何もしなくても、その映画の世界の中に居れるというか

司会: そうですね。 本当に映画の家というか、あの物語の中の部屋でもあって、すごく面白かったですよね、あれ。

加瀬: 面白かったですね。 後、監督も、別に何をやってもいいよっていう方なんで、ほとんど多分台詞通りとかはあまりなかったと思うんですけど。 本当にただその部屋に座ってて、誰か入って来て、おぉっ!みたいな感じで進んで行ったような気がします。

司会: こちらのドラマもこれからまたご覧いただくので、楽しみにしていただきたいと思いますが。
最後に「アカルイミライ」。 これはお二人とも出演されていて、監督は黒沢清監督ですね。

浅野: はい。

司会: 何か印象に残っている、黒沢さんの悪口とか

浅野: イヤイヤ。 いやぁ、そうですね、まぁ

司会: 不思議な人でしょ?黒沢さんって。

浅野: そうですね、面白いですよね。 何かこう、上手いんですよね、「そこでマイクを持って、こうしゃべって、こっち向いてください」とかって言われると、そんな言われた通りにしたくないよって思う気持ちが働くんですけどね。 でも黒沢さんの場合は「あ!やんなくてもいいんですけどね」って言うんですよ。 そうすると何か、やんなくてもいいって言われると、やってもいいですよ!みたいな気持ちになって、それは上手いなと思いましたね。

司会: うん、上手いね。

浅野: えぇ。

司会: 加瀬さんはどんな印象を?

加瀬: 僕も、その前に1回テレビでやってもらってたときに、ちょっと自分なりの反省みたいなのがあって、「アカルイミライ」のときは、僕が言われたのは、僕が煙草吸おうとしたときに、ライターと煙草がテーブルの上にあって、どこでも良いから、会話をしてる最中に、向こうにマッチ取りに行ってって言われたんですよ。 意味がわかんない、ライターあるのにって。 だけど、黒沢さんわけわかんないから、まぁ言うこと聞いとこうと思って、マッチ取りに行ったんですよ、ライターがあるにも関わらず。 それは何かやっぱり、出来上がったのを見たときに、何かこう不思議な、その動きが、画面から1回ハケる動きが、何かこう空間に広がりを持たせてるっていうか、僕の想像をちょっと超えてるんですけど、何か面白いというか。 台本を1回ちらっと見たことがあるんです、そしたらAとかBとかCとか一杯記号があって、矢印が一杯バァーって描いてあって。 何なんだろうな?とか思ってて。 あまりもう分析しないようにしてます。

司会: 「回路」ってあるでしょ、黒沢さんの。

加瀬: はい。

司会: あれで麻生久美子さんが出てるんですけど、一番最後に船に乗って、机の上にみかんが置いてあったんですって。 そのみかんを見ろ!見ろ!って言うんで、ずっと見てたんですって。 そしたらね、終わったら、CGでそれを消してあったんですって。

加瀬/浅野: へぇ!

司会: そういう人ですね。

浅野: 面白いですね。

司会: そういうことを平気でする人だし、「大いなる幻影」のときも、ラストカット、武田真治さん達が撮影始まるのを待ってたら、島崎さんってカメラマンに「回して」って言って、回って、それでアップしてカットだったらしいですけどね。 撮影がそれで終わりだったらしいですね。 「カット!」って言って、「はい、終わりました。」って、まだ二人とも芝居してないって。

浅野: 待ってたのに。

司会: 終わってたって言う。 そういう嫌な話が、この人も一杯残ってる人ですね。

加瀬: 僕の友達は黒沢監督が教えてる演技クラスみたいなのに1回行ったらしいんです。 そしたら同じシーンをある二人の役者にやらせて、60回位やらせたらしいんです。 1回目はこうだって、あと2回目はこう考えてって

司会: あ、その生徒達に次々に?

加瀬: 60回位グループチェンジして、最後の人達には「何も考えないでやってください。」って言って、「ハイ、何も考えないのが一番良いですね」って。

司会: あー、でもそういう人ですよね。 哀川翔さんに「悪魔のように歩いてください。」って。 それ演出なんですか!? 悪魔のように歩いてください!? 演技説明するのに、
黒沢:「哀川さん、この人は自分でも何やってるのかわからない人なんですよ。」
哀川:「はい、わかりました。」
黒沢:「いやいや、哀川さん、わからないんですよ。」
それ違う話だから。 そういうことを平気で言う方なんです。

浅野: 大変な監督ですね。

司会: いや、大変な監督ですよね。 面白いなと思って、本当いつも。

加瀬: 実は僕も今一緒にやってるんですけど

司会: あぁ!そうなんですか。

加瀬: この間衣装合わせに行って。 そうしたら、「わけのわかんない役は加瀬君と僕は決めてるんで」って言われて、何を言ってるんですかって。 台本を読んで、意味がわかんないんですよ、その役の。

司会: はぁ、はぁ。

加瀬: でもまぁ、オファーされて嬉しくて、行っちゃったんですけどね。 でも、言われたのそれだけですね。

司会: なぞなぞですよね。 「アカルイミライ」自体もなぞなぞみたいな映画ですけどね。

浅野: えぇ。

司会: あまり話すとまだ見てないお客さんに申し訳ないですけども。 浅野さんが何で笹野高史さんやってる役にああいうのかとか、謎が一杯ありますよね?

浅野: ハイ。

司会: あのでも、僕が「アカルイミライ」を見た後で黒沢さんと電話で話したのが、藤竜也さんの「星めぐりの歌」、宮沢賢治の

浅野: はぁ。

司会: どこまで「銀河鉄道の夜」を参照したんですか?って黒沢さんに聞いたんですよ。 そしたら、「いや、僕は宮沢賢治というのは一冊も読んだことがなくて、『銀河鉄道の夜』というのは読んだことがないんですよ。 そんなわけないじゃないですか! じゃ、なぜ藤竜也さんが「星めぐりの歌」を歌うんですか?って言うと、「あれは藤さんが勝手に」って言うんですね。 嘘つき!って言って電話切りました。 あのこの映画は本当、今日見る3本はとっても良いですよ、それぞれ三人三様傑作揃いなので、皆さん是非この後楽しんで行ってください。 そして、そうこうしてるうちに、もうトークショーを終わらなくてはいけませんが、今後も皆さんの出演作、たくさんありますよね。 浅野さんは1月28日から「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」、青山真治監督、3月が「ナイスの森」

浅野: これは亮と一緒に。

司会: 石井監督ですね?

浅野: 石井克人監督

加瀬: 初めて絡むんですよ。

浅野: ハイ。

司会: 一緒に出てても絡んだことがないんですよね?

加瀬: 今まではなかったんですけど。

司会: これが初めて?

加瀬: はい。 その辺もお楽しみに。

司会: で6月が「花よりもなお」、是枝監督ですけど。 これは一緒に出てるんですけど絡んでないんですね?

浅野/加瀬: 絡んでないですね。

司会: これは絡んでないと。 あ!2月にベルリン映画祭で「INVISIBLE WAVES」、これは「世界..」?

浅野: 「地球で最後のふたり」

司会: あ!「地球で最後のふたり」。 メインコンペで。

浅野: そうですね。

司会: そして加瀬さんの方は、2月にアミューズCQNで「好きだ」。

加瀬: はい。

司会: どんな役なんですか?

加瀬: えっと、これちょっと言うとマズイですね。

司会: ひどい奴だと?

加瀬: ハイ。

司会: で3月は「ナイスの森」、それから5月に「ストロベリーショートケイクス」

加瀬: はい。

司会: それから6月「花よりもなお」、それから「ハチクロ」が

加瀬: ハイ。

司会: 「はちみつとクローバー」、夏に公開されますし、WOWOWのドラマもあるんですね?伊坂幸太郎さんの原作で。

加瀬: あ、はい、丁度今撮ってます。

司会: それが放送で。 3月には「ナイスの森」でHMVの店頭で公開前に、番外編のショートフィルム

浅野: そうですね、この間撮りました。

加瀬: あぁ、撮りましたね。

司会: それも石井監督が演出して?

浅野: それでも絡みますね。

司会: あ!絡んでる? なぜか石井作品だけでは絡んでるという。 皆さん、これからもたくさん出演作がありますので、楽しみにしてください。 これからもお二人、一杯映画にお出になるんだろうと思いますけど、映画見て欲しいですよね?何か楽しみに。

浅野: そうですね。

浅野: 淀川さんみたいになってますけどね。

浅野: ハイ。 あ!僕等がですか?

司会: いや、僕がです。 イヤ、そう思わないかなと思って。

加瀬: 強要するのはやめてください。

司会: どうもありがとうございました、浅野忠信さんと加瀬亮さんでした。


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更新:2006.01.19(木)
Kaori